【割安成長株候補】テナリス(TS)
テナリス(TS)は、ルクセンブルグに本社を構え、エネルギー分野を中心に様々な産業向けに継ぎ目のない鋼管製品や溶接鋼管製品、関連サービスを提供しています。
主力製品は、石油・ガス掘削に使われるケーシングパイプ、機械構造物用の鋼管、パイプラインに用いるラインパイプ、冷間加工した精密鋼管、高性能な継手・つなぎ手、コイル状の細管製品などです。
さらに、油田で使う吸盤ロッド、建設用の管やチューブ、水圧破砕関連サービスも手掛けています。
そして、事業展開地域は北米、南米、欧州、中東・アフリカ、アジア太平洋地域に及んでいます。
基本情報はこちらの表のとおりです。
ネットキャッシュ比率
ネットキャッシュ比率とは、資産総額に対する資金の豊富さを計る尺度です。
ネットキャッシュとネットキャッシュ比率の定義は長者番付1位となった伝説のサラリーマン投資家、清原達郎氏の定義を採用しています。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
ネットキャッシュ比率=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)÷時価総額
ネットキャッシュ比率が1の企業については、「会社がただで買えるほど割安」であり、数字が大きいほど割安と判断できます。
また、清原氏曰く、ネットキャッシュ比率が1を超えている企業については、「ただで会社をもらった上で現金まで貰える」ほど割安だと説明しています。
より詳しい内容については、清原達郎氏の「わが投資術 市場は誰に微笑むか」をご覧ください。
テナリスのネットキャッシュ比率は0.52であり、この企業が「会社がただで買えるほど割安」ではありませんが、一定の割安さはあります。
清原達郎氏の定義によると、ネットキャッシュ比率が1以上であれば、企業が非常に割安であるとみなされ、「会社をただで手に入れる上で現金までもらえる」状態となります。
0.52の比率は、その基準には至らないものの、企業の負債が流動資産と投資有価証券の70%の価値を大幅に上回っていないことを示しており、それなりに健全な財務状態を反映しています。
株価のチャート
株価のチャートは、こちらのとおりです。
過去1年間の株価は、プラス31.4%となっています。
最新の決算
テナリスは、2024年4月25日に決算を発表しています。
EPSについては、アナリスト予想1.03ドルに対して、結果1.27ドルで、アナリスト予想を上回りました。
四半期の売上高については、アナリスト予想33.9億ドルに対して、結果34.4億ドル、前年同期比約-16.9%減で、アナリスト予想を上回りました。
2024年第1四半期において、純利益は前年同期比35%減の7億3,700万ドルでした。
事業別にみると、北米事業部門は28%減の16億2,000万ドル、南米事業部門は34%減の6億9,690万ドルでした。
この当期純利益の減少は、その他の純金融収支が12万ドルの収入から6,810万ドルの費用に転じたことと、人件費が20%増の1億8,110万ドルとなったことを反映しています。
今後の見通し
新興国のエネルギー需要増大に応えるため、石油・ガスの需要は増大しています。
しかし、原油価格は上昇したものの、米国の採掘活動は活発にならず、北米は前年を下回る水準にとどまっています。
また、油井管の入荷増加により、価格安定化が遅れています。
一方で、海洋プロジェクトは順調に進み、中東の需要も高水準を維持しています。
ただし、中南米では、政情不安が同社の事業活動に影響を与えています。さらに、第2四半期は、米州における油井管価格の持続的な低下を受けて、売上高とマージンが前期を下回ると見込まれています。
加えて、第3四半期には、アルゼンチンのシデルカ工場を含む一時的な生産停止により、売上高とマージンがさらに減少すると予想されています。
まとめ
テナリス(TS)は、ルクセンブルグに本社を置く大手の鋼管メーカーです。
石油・ガス掘削向けのケーシングパイプや構造物用鋼管、パイプライン向けのラインパイプなど、エネルギー分野を中心に幅広い製品ラインナップを擁しています。世界中の主要市場で事業を展開しており、新興国のインフラ需要の取り込みが期待できます。
同社の最大の魅力は、割安な株価水準と中長期的な事業の成長性にあります。ネットキャッシュ比率が0.52と一定の割安感があり、現金を多く保有する健全な財務体質が評価されます。
また、2024年第1四半期決算では売上高と利益ともに市場予想を上回る業績を残しており、収益力の高さがうかがえます。
中長期的には、新興国におけるエネルギー需要の高まりを背景に、石油・ガス関連製品の需要拡大が見込まれます。
中東地域では海洋プロジェクトが順調に推移しており、高い需要水準が続いています。また、再生可能エネルギーの拡大に伴う新規需要の取り込みも成長のドライバーとなるでしょう。さらに新製品の投入やM&Aによる事業拡大の可能性も残されています。
一方で短期的には、原油価格の動向や地政学的リスクの影響、一時的な生産調整により、一部の製品で価格下落が避けられない見通しです。しかし、中長期的な視点に立てば、同社の幅広い事業ポートフォリオと世界展開による成長が期待できます。