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ひとのときを、想う。JT 決算&財務諸表を解説

ひとのときを、想う。JT

今回は人気の高配当株で、2024年2月13日に決算を発表したJTの決算と財務諸表を解説します。

JTは、たばこ製品の製造・販売を核としつつ、医薬品や加工食品事業も手がけています。

国内外で多様なブランドを展開し、医薬品では疾患治療薬の開発に、食品事業では生活に密着した製品の提供に力を入れています。

グローバル市場を視野に入れた事業展開を行っており、多角的な事業を通じて成長を続けています。

基本情報は、こちらの表のとおりです。

今回は、JTを、成長性、効率性、現金の生成能力、財務の安定性、割安性の5つの観点から総合的に分析・評価します。

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株価のチャート

株価のチャートは、こちらのとおりです。

株価は、右肩上がりであり、高値圏にあることが確認できます。

過去5年間の株価のパフォーマンスは、プラス50.29%となっています。

最新の決算

JTは2月13日に2023年第4四半期決算を発表しています。

23年12月期の連結最終利益は前の期比8.9%増の4822億円に伸びましたが、24年12月期は前期比5.7%減の4550億円に減る見通しとなりました。

同時に、前期の年間配当を188円から194円(前期は188円)に増額し、今期も194円を継続する方針としました。

直近3ヵ月の実績である10-12月期(4Q)の連結最終利益は前年同期比3.5%増の402億円に伸びましたが、売上営業利益率は前年同期の11.4%から5.9%に大幅に低下しました。

たばこ事業での価格設定の効果が、サプライチェーンでのコストの増加や加熱式たばこ(HTS)への投資による影響を上回り、売上収益から当期利益まで過去最高の実績となりました。

また、医薬事業・加工食品事業も増益となりました。

事業別の営業利益

JTの通期営業利益のうち、たばこ事業が全体の約96.4%を占め、約6771億円です。医薬品事業は全体の約2.5%で約174億円、加工食品事業は全体の約1.1%で約77億円です。

これらのデータから、JTの事業の大部分がたばこ事業に依存していることがわかります。

事業別の営業利益の成長率

JTの事業別の通期営業利益の成長率を見ると、たばこ事業は前年同期比-0.3%で微減、医薬品事業は前年同期比56.2%増、加工食品事業は前年同期比86.8%増です。

JTのたばこ事業はわずかに減少したが、医薬品と加工食品事業はそれぞれ大幅に成長しており、これはJTの多角化戦略の成果を示しています。

地域別のたばこ事業の調整後営業利益

JTの地域別の調整後営業利益は、アジアが約2458億円で全体の約32.8%、西欧地域が約2314億円で約30.9%、アフリカ、中近東、ロシアが約2725億円で約36.3%を占めています。

JTの地域別調整後営業利益の分布を見ると、アジア、西欧、そしてアフリカ・中近東・ロシア地域ともに、バランス良く収益を上げていることがわかります。

予想PERの推移

PERは、Price Earnings Ratioの略称で、時価総額を純利益で割るか、株価を一株当たりの利益で割ることで求めることができます。

これは、株価と企業の収益力を比較することによって株式の投資価値を判断する指標として用いられます。

この倍率が高いほど、株価は割高と判断されます。

JTの予想PERは、2024年3月29日時点で15.8倍、プライム市場全体の平均PERは17.6倍、加重平均は19.5倍です。

JTのPERは市場全体と比べて低めですが、近年の平均よりはやや高くなっています。

PBRの推移

PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、株価を1株当たりの純資産で割ったものです。

これは、現在の株価が企業の資産価値に対して割高か割安かを判断する指標として用いられます。

この倍率が高いほど、株価は割高と判断されます。

JTのPBRは、2024年3月29日時点で1.88倍となっています。

これは、過去1年間の平均値1.61倍、過去2年間の平均値1.46倍、そして全期間のPBR平均値1.49倍を上回る数値です。

プライム市場全体の平均PBRは1.4倍、加重平均は1.5倍で、JTのPBRは市場全体よりも高めの評価を受けていることがわかります。

年間配当と配当利回りの推移

JTの配当は2020年から2024年予想まで増加していますが、配当利回りは変動しており、株価の上昇が影響していると考えられます。

これは株価が上がることで実質的な利回りが下がることを意味します。

総還元性向とは?

総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。

総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。

ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があります。

総還元性向

JTの総還元性向は2019年の93.0%から2023年にかけて減少しており、これはJTが利益の大部分を配当や自社株買いに使用していることを示していますが、その割合は時間とともに減少しています。

これは会社が成長投資や他の事業活動に資本を再分配していることを示唆しています。

EPS

EPSとは、「Earnings Per Share」の略で、1株当たり純利益ともいわれます。

EPSからわかることは、企業の「収益力」と「成長性」の2つです。

数値が高いほど企業の収益力は高いと見ることができます。

また、同じ企業の当期EPSと前期以前のEPSを比較することで、企業が順調に成長しているか判断することもできます。

JTのEPSは2022年第2四半期の成長率17.3%から2023年第4四半期の8.9%まで、期間を通じて安定した成長を維持しています。

2022年第4四半期には30.8%という最高成長率を達成しました。

売上高の推移

JTの売上高は2022年第2四半期から2023年第4四半期まで継続的に成長していますが、その成長率は徐々に低下している傾向にあります。

2022年第2四半期は前年同期比14.8%の増加から始まり、2023年第4四半期には5.4%まで成長率が減少しています。

経常利益とは?

経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ資産の運用利益や銀行からの利息など、事業を行って得た利益です。

経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。

経常利益の推移

JTの経常利益は2022年第2四半期から2023年第4四半期までの期間において、18.1%の成長から始まり、最高で575.2%に達した後、-38.8%へと減少しました。

経常利益率とは?

経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。

この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。

経常利益率

JTの2023年第1四半期から第4四半期の経常利益率については、2024年第3四半期を除いた3つの四半期が前期の利益率を下回っており、利益率は下降傾向にあります。

「利益」は意見、「キャッシュ」は現実

損益計算書(PL)に記載される売上高などの「利益」は、本来であれば来期に立つ売上を、今期の売上として計上することや架空の売上を立てることで、意図的に「利益」を過大に見せること、いわゆる粉飾が可能であり、明らかな粉飾でない限り、このような粉飾を見抜くことは難しいと言われています。

他方、キャッシュフロー計算書(CF)に記載される営業キャッシュフローなどの「キャッシュ」は、実際にどれだけの現金が出入りしたのかを表し、意図的な調整をする余地がありません。

そのため、会計の世界では、『「利益」は意見、「キャッシュ」は現実』、または『キャッシュフローは嘘をつかない』とされています。

また、損益計算書では黒字にも関わらず、倒産してしまう「黒字倒産」の原因は、売上が発生しても、その入金、現金収入が大幅に遅れ、企業が現金不足に陥ることで起こるとされています。

そのため、企業の「利益」だけでなく、企業の「キャッシュ」を確認することが重要です。

フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローとは、会社が事業活動で稼いだお金のうち、自由に使える現金です。

フリーキャッシュフローが多い企業ほど、経営状態が良好であり、将来的に、株主への配当や、自社株買いなどが行われることが期待されます。

JTのフリーキャッシュフローは、2020年に大幅に増加した後、2年間減少しましたが、2023年に再び増加しています。

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

JTの営業キャッシュフローは、2020年に減少した後、2021年に増加し、その後2022年と2023年には安定した成長を示しています。

営業キャッシュフローマージンとは?

営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。

この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。

なお、「MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法」によると、営業キャッシュフローマージンは、理想として15%から35%程度あると素晴らしいとされています。

営業キャッシュフローマージン

JTの営業キャッシュフローマージンは、2021年に最高値の25.76%を記録した後、2022年と2023年に減少しましたが、依然として健全な水準を維持しています。

アクルアールとは?

アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。

アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。

アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー

純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。

他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。

逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。

アクルアール

2021年にJTのアクルアールがマイナスであり、現金収入を伴った質の高い利益を生み出しています。

しかし、2022年と2023年はアクルアールがプラスになり、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出しています。

自己株式調整済み負債比率とは?

自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える負債が、純資産に対して何倍あるのかを示しています。

自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)

この比率が低ければ、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。

「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。

自己株式調整済み負債比率

JTの自己株式調整済み負債比率は、ウォーレン・バフェットが推奨する0.80を一貫して下回り、財務の健全さを示しています。

固定長期適合率とは?

固定長期適合率は、企業の固定資産が、純資産と固定負債といった安定した資金で賄えているかどうかを示す指標です。

固定長期適合率は、以下の式で求めることができます。
固定長期適合率=固定資産÷(純資産+固定負債)

一般的に、この比率が100%以下であると、企業の固定資産が安定した資金でまかなえており、会社の財務状況が安定していると判断できます。

固定長期適合率

JTの固定長期適合率は、一貫して100%を下回る数値を示しています。これは、同社の固定資産が純資産と固定負債によって安定的に賄われており、財務状況が安定していることを示しています。

理論株価(1年後の株価)

理論株価は、企業の利益予想などをもとにした計算上の株価です。

今回は、企業の利益予想と1年後の予想PERをもとに、1年後(2025/03/29)のJTの株価を求めたいと思います。

理論株価に対して、低い株価で取引されている銘柄については、将来的に株価の上昇が期待されます。

それでは、JTの理論株価を求め、現在の株価とどれくらい乖離しているのかを確認したいと思いますが、続きの内容については、有料記事となります。

記事を購入していただくか(300円)、メンバーシップに加入して、メンバーになっていただくことで、読むことができます。

メンバーシップは、初月無料ですので、月末までに退会すればご負担0円で、お試しすることができます。

続きの記事では、JTの理論株価のほか、JTを、成長性、効率性、現金の生成能力、財務の安定性、割安性の5つの観点から総合的に分析・評価しています。

https://note.com/observatory393/membership?from=self

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