日本株

アジアパイルHDの分析:配当利回り5.93%企業の3つのリスク

「年利0.02%の預金だけでは、将来が不安…」
「インフレ対策として、高配当株を探しているけれど…」
「安定性と収益性を両立できる銘柄はないか…」

こんな悩みを持つ投資家に、ある興味深い投資先をご紹介します。

それが、配当利回り5.93%(2025年3月期予想)のアジアパイルホールディングス。ビルや橋を支える基礎工事のリーディングカンパニーです。

なぜ今、この会社に注目すべきなのか?

  • 高配当を実現しながら、社会インフラを支える堅実な事業基盤
  • 時価総額の74%に相当する潤沢な手元資金
  • アジア展開による将来の成長機会

しかし、昨今の業績低下や事業環境の変化を考えると、このような高配当は維持できるのでしょうか?

本レポートでは、あなたの資産形成における「次の一手」として、この企業が相応しいかどうかを、徹底的に分析していきます。

0.事業概要:基礎工事のリーディングカンパニーが魅せる「次の一手」

(個別株観測所の会議室。きらくはワインをデカンタに注ぎながら、窓外の建設現場を眺めている)

【解説】アジアパイルホールディングスは、建物を支える杭(くい)の製造・施工を行う企業です。ビルや橋など、私たちの生活を支えるインフラに欠かせない存在です。
この企業のように、目立たない基礎工事分野でも、実は私たちの生活に欠かせない企業が多く存在します。
投資を考える際は、華やかさだけでなく、社会的な重要性も考慮することが大切です。

きらく「今日はアジアパイルホールディングスの分析を行うわ。まずは事業の全体像を理解しましょう」

あおい「大規模なレストランチェーンを想像すると分かりやすいかもしれません」

銭太郎「レストラン?」

あおい「はい。基礎工事という建物を支える重要な事業は、まさにレストランの厨房のような存在です。表からは見えにくいけれど、全体の価値を支える要ですから」

基本情報

  • 上場市場:東京証券取引所プライム市場
  • 代表者:代表取締役社長最高執行役員 黒瀬 修介

【解説】プライム市場は、時価総額や流動性などの基準が最も厳しい市場区分です。上場企業の中でも特に高い企業統治が求められます。
「最高執行役員」は英語のCEO(Chief Executive Officer)にあたる役職です。経営における最高責任者として、企業の戦略立案と実行を担います。

きらく(ワインを傾けながら)「面白いわね、その例えで続けましょう」

主要事業構造

【解説】企業分析では「セグメント」という言葉をよく使います。これは企業の事業を種類や地域で分類したものです。アジアパイルの場合、「国内事業」と「海外事業」という2つのセグメントで構成されています。

国内事業の特徴
銭太郎「国内事業は、大手レストランチェーンの本店のようなものゼニね!」

  • 高級店(大径・大規模工事)への転換推進
  • 伝統的な料理(従来工法)と新メニュー(新工法)の両立
  • 全国各地への出店(充実した供給体制)

【解説】国内事業は売上高の約8割を占める主力事業です。建設コストの上昇に対応するため、より付加価値の高い大規模工事にシフトしています。売上構成比が高いセグメントは、企業業績への影響が大きいため、特に注目する必要があります。

海外事業の特徴
あおい「海外展開は、新しい市場で腕を振るう出店戦略のようなものですね」

  • ベトナム:経済回復の兆しはあるが不動産・建設市場は本格回復待ちの状況(Phan Vu Investment Corporation)
  • ミャンマー:政情不安により事業活動がほぼ停止(VJP Co., Ltd.)
  • 各国の味覚(市場ニーズ)に合わせたローカライズ

【解説】海外事業は成長戦略の柱です。特にベトナムは経済発展に伴うインフラ需要の拡大が期待されます。ただし、為替リスク(現地通貨の価値変動)や政治リスク(政権交代による政策変更など)には注意が必要です。投資家はこれらのリスクも考慮して企業を評価します。

企業の強み
きらく「強みを理解するには、一流レストランの要素に例えると分かりやすいわ」

【解説】投資分析では「競争優位性」という言葉をよく使います。これは他社に対して優れている点のことで、持続的な収益を上げるために重要な要素です。競争優位性が強ければ強いほど、景気変動の影響を受けにくい傾向があります。

アジアパイルの技術力を料理人の技術に例えると、

  • 匠の技(大径・高支持力製品の高い開発力)
  • 新しい調理法の開発(施工技術の高度化)
  • 健康に配慮したメニュー(環境配慮型工法)

【解説】技術力は競争優位の源泉です。特に大径杭は高い技術力が必要で、参入障壁となっています。参入障壁が高いということは、新規競合が現れにくく、利益率を維持しやすいというメリットがあります。また、環境配慮型工法は、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮した投資)の観点からも注目されています。

アジアパイルの事業基盤をレストランの店舗運営力に例えると、

  • 大規模なセントラルキッチン(高い生産能力)
  • 全国チェーン展開(充実した供給体制)
  • アジア展開(海外事業の展開)

【解説】全国規模の供給体制は、大規模プロジェクトの受注に不可欠です。地域密着型の中小企業が多い業界で、これは大きな強みとなっています。広域での事業展開は、地域ごとの景気変動リスクを分散する効果もあります。

アジアパイルの顧客基盤をレストランの常連客に例えると、

  • 有名ホテルとの取引(大手ゼネコンとの関係)
  • 個人客から団体予約まで(公共・民間両分野)
  • 海外でも知られる店名(一定のブランド力と信頼)

【解説】建設業界での信頼関係は長年の実績が物を言います。大手ゼネコンとの安定的な取引は、業績の下支えになっています。また、公共・民間両分野に顧客を持つことで、景気変動リスクの分散も図れています。

銭太郎「なるほど!一流レストランのように、目に見えない部分での努力が重要なんゼニね」

きらく(ワインをグラスに注ぎながら)「その通りよ。このワインのように、表面的な華やかさだけでなく、深い味わいを追求する企業なの」

あおい(メガネを光らせながら)「最近は特に、オーガニックメニュー(環境配慮型工法)や新しい調理技術(施工効率化)にも力を入れているんですよね」

【解説】建設業界全体で課題となっている人手不足や環境負荷低減に対して、積極的な技術開発で対応しています。このような将来を見据えた投資は、中長期的な企業価値の向上につながる可能性があります。

きらく「そう、伝統と革新のバランスが重要ね。(建設現場を指さしながら)あの現場も、まさに新しいレシピに挑戦しているところなのよ」

【解説】投資判断をする際は、企業の現状だけでなく、将来に向けた取り組みも重要な判断材料となります。特に、社会課題の解決に貢献する事業展開は、長期的な成長機会として注目されています。

1.2025年3月期中間期の業績分析:大手建設会社が進める「3つの構造改革」

【解説】「中間期」とは、会計年度の半分(6ヶ月)が経過した時点での業績報告です。投資家は、年度の途中経過を確認し、投資判断の参考にします。
「2025年3月期」は2024年4月から2025年3月までの会計年度を指します。日本企業の多くは3月決算を採用しています。

きらく(ワインをデカンタに注ぎながら)「今期の業績は、ワインを注ぐように(一時的な流れの変化)なのよ」

あおい「どういうことでしょうか?」

きらく「ワインをデカンタに注ぐと、一瞬香りが弱まるように見えるでしょう?でも、それは空気と触れることで、より豊かな味わいを引き出すプロセス(一時的な業績低下)なの」

全体業績の状況と背景

【解説】業績分析では「定量分析」(数字の分析)と「定性分析」(背景や要因の分析)の両方が重要です。数字の変化の理由を理解することで、より深い企業理解につながります。

銭太郎「なるほど!今期の減収減益も、より良い未来のための過程というわけゼニか」

主要数値(前年同中間期比)

【解説】

  • 売上高:企業の総売上金額。企業の規模を示す基本指標
  • 営業利益:売上高から売上原価と販管費を引いた本業での儲け
  • 経常利益:営業利益に金融収支(利息収入や支払利息など)を加えた利益
  • 親会社株主に帰属する中間純利益:税金や特別損益を考慮した最終的な利益

【解説】利益は上から順に見ていくことで、どの段階で収益性が変化したのかが分かります。これを「段階利益」と呼びます。

売上高:457億23百万円(7.4%減)
営業利益:17億11百万円(48.0%減)
経常利益:14億88百万円(48.8%減)
親会社株主に帰属する中間純利益:12億49百万円(41.2%減)

【解説】今回の決算では、売上高の減少(7.4%減)に比べて利益の減少(40-48%減)が大きくなっています。これは収益性(もうけ具合)が低下していることを示します。

きらく「この状況は、マラソンランナーのフォーム改善(業界の構造改革)のようなものよ。一時的にペースは落ちるけど、それは将来のための改善なの」

あおい「具体的にはどんな改善を行っているんですか?」

きらく「3つの重要な変化があるわ」

建設業界の構造改革

【解説】「構造改革」とは、企業や業界の基本的な仕組みを変えることです。短期的には負担になりますが、長期的な成長のために必要な投資とみなすことができます。

「古い家の建て替え(業界全体の新基準適応)のように進んでいるの」

  • 時間外労働規制の本格適用
  • 人手不足対策
  • 工期の適正化

コスト構造の変化

【解説】「コスト構造」は企業の費用の内訳を指します。これが変化すると、同じ売上高でも利益が大きく変わる可能性があります。

「料理人の食材調達(原価構造への適応)のように、新しい環境への対応が必要なの」

  • 建設資材価格の高騰
  • 人件費の上昇
  • 運送コストの増加

市場環境の変化

【解説】「市場環境」は、企業を取り巻く外部要因を指します。これは企業単独ではコントロールできない要素ですが、適切な対応が必要です。

「農作業の計画立て(工期設定)のように、より慎重な判断が必要になっているわ」

  • ゼネコンの工期設定慎重化
  • 受注競争の変化
  • 大規模工事の調整

セグメント別の詳細分析

【解説】セグメント情報は、企業の「収益構造」を理解する上で重要です。どの事業がどれくらい利益に貢献しているか、成長性はどうかなどを分析できます。

国内事業

きらく「国内事業は、料理人の転身(事業構造の転換)のようなものよ」

銭太郎「どういうことゼニか?」

きらく「小規模な料理店から高級ホテルへの転身(小規模工事から大規模工事へのシフト)のように、より高度な技術を要する案件へと転換しているの。一時的な売上減少は、その過程の表れよ」

【解説】収益性を見る際は、「売上高営業利益率」(営業利益÷売上高)という指標もよく使用されます。この会社の場合、国内事業の利益率は前年より低下しています。

売上高:378億39百万円(12.4%減)
営業利益:17億23百万円(45.9%減)
業界全体の出荷量:6.4%減少

海外事業

【解説】海外事業では「営業損失」(マイナスの営業利益)が発生しています。新規事業や成長市場では一時的な損失が発生することもありますが、その回復見通しを確認することが重要です。

きらく「海外事業は、新しい畑(新規市場)のようなものね」

あおい「新しい畑とは?」

きらく「そう。ベトナムは肥沃な土地(潜在的な市場)だけど、耕し方(事業展開)を間違えると思うような収穫が得られないの。今はちょうど、土壌改良(市場適応)の時期ね」

売上高:79億12百万円(26.9%増)
営業損失:40百万円(前年同中間期は1億81百万円の利益)

ベトナム市場

【解説】新興国市場では、高い経済成長が期待される一方で、為替リスクや政治リスク、法制度の違いなど、様々なリスク要因があります。これらは「カントリーリスク」と呼ばれます。

「春を待つ農地(回復期の市場)のような状態よ」

  • 景気刺激策という肥料(政府施策)は撒かれた
  • 不動産市場という土壌(事業環境)はまだ固い
  • 他の農家との競争(市場競争)も激しい

ミャンマー事業
「突然の嵐(政情不安)に見舞われた畑(事業)のようなものね」

  • 政情不安という悪天候(事業環境の悪化)
  • 最小限の手入れ(固定費)は継続
  • 天候回復(政情安定)を待つ状態

2. 財務状態の分析:総資産931億円企業の「財務改革」を解説

【解説】財務状態とは企業の経済状態を示す指標です。主に「貸借対照表」という財務諸表で確認できます。これは企業の資産(持っているもの)、負債(借金)、純資産(自己資金)を表したものです。
財務分析では「前期末比」という言葉がよく出てきます。これは「前の決算期末と比べて」という意味です。増減を見ることで、企業の状態がどう変化しているかが分かります。

きらく(ワインを光にかざしながら)「財務改善は、家の耐震補強工事のようなものよ」

銭太郎「どういうことゼニか?」

きらく「一時的な不便は伴うけど、将来の安定性のために必要な投資なの」

財務基盤の強化

総資産:931億10百万円(前期末比21億20百万円減)
【解説】総資産は企業が保有する全ての資産の合計額。現金や設備など、企業の持っているものすべての価値を表します。総資産の増減は企業の規模の変化を示す重要な指標です。

負債:435億72百万円(同25億35百万円減)
【解説】負債は借入金など、将来返済が必要なお金の総額。多すぎると企業の体力を弱めるため、適切な管理が重要です。負債の減少は、一般的に財務健全性の改善を意味します。

純資産:495億37百万円(同4億15百万円増)
【解説】純資産は企業の自己資金に相当。株主が出資した資金や、事業で稼いで蓄積した利益などで構成されます。純資産の増加は企業価値の向上を示す良い指標となります。

自己資本比率:49.0%(同1.8ポイント増)
【解説】自己資本比率は企業の財務健全性を示す重要な指標。総資産に占める自己資本(純資産から非支配株主持分を除いたもの)の割合で、高いほど財務基盤が安定していると評価されます。一般的に40%以上あれば健全とされます。

【解説】「ポイント増」という表現は、パーセンテージの増減を表します。例えば1.8ポイント増とは、47.2%から49.0%に増加したことを示します。

あおい「財務の中身にも大きな変化が見られますね」

きらく「そう。まるで家の中の模様替えをするように、資産と負債の構成を最適化しているのよ」

資産の効率化

受取手形・売掛金の34億43百万円減少
【解説】売掛金は、商品・サービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない金額。この減少は資金回収が進んでいることを示します。企業にとって、売掛金は早く現金化したほうが望ましいため、この減少は好ましい傾向と言えます。

棚卸資産の14億8百万円増加
【解説】棚卸資産は、販売用の商品や原材料などの在庫。需要予測に基づいて適切な水準を維持することが重要です。多すぎると資金が滞留し、少なすぎると機会損失につながるため、バランスが重要です。

負債の最適化

【解説】負債の中にも様々な種類があります。大きく分けると、支払手形・買掛金などの「営業負債」(事業活動に伴って発生する負債)と、借入金などの「金融負債」(資金調達によって発生する負債)があります。

支払手形・買掛金の6億2百万円減少
【解説】買掛金は、仕入れた商品・サービスの未払い代金。支払いの期日管理が重要です。これは企業間の信用取引の一つで、即時支払いによる資金負担を軽減する役割があります。

ファクタリング未払金の16億94百万円減少
【解説】ファクタリングは、売掛金を金融機関に早期に現金化する仕組み。資金繰りの改善に活用されますが、コスト(手数料)も発生するため、バランスが重要です。近年、多くの企業が資金効率改善の手段として活用しています。

【解説】財務分析では、単なる数字の増減だけでなく、その背景にある経営戦略を理解することが重要です。この企業の場合、資金効率の改善と財務基盤の強化を着実に進めていることが分かります。投資家の視点からは、このような財務改善の取り組みは、将来の成長投資や株主還元の原資となるため、重要な評価ポイントとなります。

3. 配当の推移などの分析:配当利回り5%超の企業で見る「15年間の配当戦略」と配当余力

【解説】配当とは、企業が株主に対して利益の一部を現金で還元することです。配当金額を株価で割った「配当利回り」は、投資収益率を考える上で重要な指標です。

【解説】投資収益には2つの要素があります:

  1. キャピタルゲイン(株価上昇による利益)
  2. インカムゲイン(配当による利益)
    配当は、株価が下がっても得られる収入となるため、安定的な投資収益を求める投資家に重視されます。

きらく(ワインをグラスに注ぎながら)「配当政策は、このワインの注ぎ方に似ているわ」

あおい「どういう意味でしょうか?」

きらく「急に注ぎすぎても、少なすぎても良くないの。適度な量を維持しながら、少しずつ増やしていく。それが理想的な配当政策なの」

配当政策の4つの転換期

【解説】配当金の推移を見る際は、以下の3つのポイントに注目すると良いでしょう:

  1. 配当金額の安定性:急な増減がないか
  2. 増配の頻度:定期的に増やせているか
  3. 配当性向:純利益に対して適切な配当水準か

きらく「配当の歴史は、木の成長のように4つの段階があるわ」

立ち上がり期(2010-2014年):若木の時期
「根を張る時期。時には配当という葉が少なくなることも」

  • 2010-2012年:不安定期(配当利回り3.79%→2.2%)
  • 2013年:年間10円で安定配当開始(1.65%)
  • 2014年:12円に増配(1.43%)

【解説】配当利回りとは、1株当たり年間配当金を株価で割った値です。例えば、株価1,000円で年間配当20円の場合、配当利回りは2%(20÷1,000)となります。

【解説】配当利回りが高いことは必ずしも良いとは限りません。例えば:

  • 株価が大きく下落して見かけ上の利回りが上がっている
  • 無理な配当で財務が悪化するリスク
    といったケースもあるため、企業の財務状況と合わせて判断することが重要です。

成長期(2015-2019年):幹が太くなる時期
「少しずつ葉を増やしながら、幹を太くしていく時期ね」

  • 2015-2016年:12円維持(1.75%→2.94%)
  • 2017年:15円(2.46%)
  • 2019年:20円(3.3%)

株主還元強化期(2020-2023年):実りの時期
「木が大きく育ち、より多くの実をつける時期」

  • 2020-2022年:20円維持(4.98%→4.68%)
  • 2023年:30円(4.08%)

新たな挑戦期(2024年-):更なる成長期
「より大きな実をつけるための準備期間」

  • 2024年:40円(4.6%)
  • 2025年:45円予想(5.93%)

銭太郎「まるで水道の蛇口のように、安定した配当の流れを作っているゼニね!」

総還元性向の分析

【解説】総還元性向とは、企業の純利益に対する配当金と自社株買いの合計額の比率です。企業がどの程度株主に利益を還元しているかを示す指標です。

【解説】「自社株買い」とは:

  • 企業が市場で自社の株式を購入すること
  • 株価の下支えや株主還元の手段として使われる
  • 配当と異なり、臨機応変に実施できる特徴がある

きらく「総還元性向は、お料理の味加減のようなものよ」

変動期(2008-2012年):レシピ探索期
「味の濃さを試行錯誤している時期」

  • 2008年:17.7%
  • 2009年:93.1%
  • 2010-2011年:赤字期
  • 2012年:9.7%

安定期(2013-2019年):レシピの確立
「ちょうど良い味加減を見つけた時期」

  • 徐々に30%前後へ

積極的還元期(2020-現在):味の深み追求
「より豊かな味わいを追求する時期」

  • 2022年:51.0%
  • 2024年:39.9%

【補足】配当投資のチェックポイント

  1. 配当金額の安定性と成長性
  2. 配当性向は適切か(高すぎても低すぎても注意)
  3. 企業の財務状況(配当を継続できる体力があるか)
  4. 業績の安定性(将来も配当を維持できるか)
  5. 経営方針(株主還元に積極的か)

4.ネットキャッシュ分析:「ただで会社がもらえる」ほど割安なのかをチェック

(個別株観測所の会議室。きらくはワインを片手に財務データを見つめている)

【解説】ネットキャッシュとは、企業が持つ「実質的な手元資金」のことです。お財布の中身と同じように、企業がすぐに使える資金がどのくらいあるかを示す指標です。

きらく「今日は特別に、伝説のサラリーマン投資家、清原達郎氏が考案した分析手法で見てみましょう」

【解説】投資家は様々な分析手法を使って企業の価値を判断します。特に実績のある投資家が考案した手法は、多くの投資家に参考にされています。

あおい「ネットキャッシュ比率の分析ですね」

銭太郎「どういう指標なんゼニか?」

きらく(黒板に向かいながら)「企業の実質的な資金力を測る物差しよ。計算式を書いてみましょう」

ネットキャッシュ比率の基本

【解説】企業分析では「比率」をよく使います。これは2つの数値を比べることで、企業の状態を分かりやすく示す方法です。例えば、年収1,000万円の人の100万円の支出と、年収300万円の人の100万円の支出では、その重みが全く違うように、企業でも単純な金額だけでなく「比率」で見ることが重要です。

【解説】企業の財務状態を理解するには、単純な現金残高だけでなく、すぐに現金化できる資産と、支払わなければならない負債を総合的に見る必要があります。

あおい(メガネを光らせながら)「清原氏の定義によると:」

計算式
ネットキャッシュ = 流動資産 + 投資有価証券×70% - 負債

ネットキャッシュ比率 = ネットキャッシュ ÷ 時価総額

【解説】

  • 流動資産:1年以内に現金化できる資産(現金、売掛金、在庫など)
  • 投資有価証券:株式などの金融資産(70%は換金時の目減りを考慮)
  • 負債:借入金などの返済が必要なお金
  • 時価総額:株価×発行済株式数で計算される企業の市場価値

きらく「この比率が1を超えると、『ただで会社をもらった上で現金まで貰える』ほど割安という評価になるのよ」

アジアパイルのネットキャッシュ分析

銭太郎「早速、計算してみるゼニ!」

具体的な数値

  • 流動資産:61,133百万円
  • 投資その他の資産の70%:4,213百万円
    投資有価証券は、投資その他の資産に含まれていると考えられますが、具体的な数値の開示がないため、投資その他の資産合計の6,019百万円の70%として計算
  • 負債:43,572百万円
  • ネットキャッシュ:21,774百万円
  • 時価総額:29,329百万円(11/14時点)

【解説】百万円単位の数字は大きすぎてピンとこないかもしれません。1億円=100百万円として考えると、ネットキャッシュは約218億円ということになります。

あおい「ネットキャッシュ比率は0.74、つまり74%ということになります」

きらく(ワインをスワリングしながら)「1には届かないものの、かなり高い水準ね」

【解説】投資判断では、企業の「現在の状態」と「将来の可能性」の両方を考える必要があります。ネットキャッシュが高いことは、現在の財務基盤が強いことを示すと同時に、将来の成長投資や株主還元の原資となる可能性を示しています。

バリュエーション的な意味

  • 時価総額の74%相当の実質的な現金を保有
  • 企業価値に対して、手元資金が潤沢
  • 株価の下値サポート要因

【解説】例えば3,000万円の家を持っている人が、2,220万円の預貯金を持っているようなイメージです。

  1. 財務的な意味合い
    銭太郎「家計に例えると、1,000万円の家に住んでいて、740万円の預貯金がある状態ゼニ!」
  2. 戦略的な含意
    あおい「この潤沢な資金を、どう活用していくかが重要になりますね」

今後の展望

【解説】投資においては、企業の「守り」と「攻め」のバランスを見ることが重要です:

  • 守りの要素:財務基盤、リスク管理、安定性
  • 攻めの要素:成長投資、新規事業、市場開拓

きらく(グラスを掲げながら)「0.74というネットキャッシュ比率は、まさに『守りの堅さ』を示しているわ。でも、これからは『攻めの経営』にどう活用していくか。その手腕が問われるでしょうね」

あおい「確かに。清原氏の基準では1倍には届きませんが、この資金力は大きな強みになりそうです」

銭太郎「大規模工事へのシフトも、この資金力があってこそゼニ!」

5. 今後の展望と課題:材料費高騰と人手不足に直面するアジアパイル

なぜ今、アジアパイルの今後を理解する必要があるのか

個別株投資において、一時的な業績低迷と将来の成長機会を見極めることは、投資リターンを大きく左右します。

アジアパイルは、まさにそんな投資判断の分かれ道に立っています:

  • 売上高は前年同期比7.4%減
  • 営業利益は48.0%減
  • しかし、自己資本比率は49.0%と安定
  • 配当予想も年間45円を維持

この分析が必要な投資家とは

  • 一時的な業績低迷で割安になった銘柄を探している方
  • インフラ関連銘柄で中長期投資を検討している方
  • アジア展開による成長ストーリーに関心がある方
  • 財務基盤が安定した中小型株を探している方

この分析で分かること

  • 業績下振れの「本当の理由」
  • 経営陣の具体的な対応策
  • 中長期での成長シナリオ
  • 投資判断に必要な定量・定性分析

いま、アジアパイルは建設資材高騰と人手不足という逆風に直面しています。しかし、その向こうにある成長機会をどう評価すべきか。それを理解することが、投資判断の分かれ目となるでしょう。

【続きの内容】

  • 5. 今後の展望と課題:材料費高騰と人手不足に直面するアジアパイル
  • 6. 総合評価:配当利回り5.93%企業が抱える「3つの警告サイン」

https://note.com/observatory393/n/n216c58cd0612

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