■事業概要
半導体テスト装置の世界最大手。半導体の性能や品質を検査する装置を開発・製造。
スマートフォン、PC、データセンター、自動車など、あらゆる電子機器に使われる半導体の検査を支える。
[用語解説]
・SoCテスタ:演算処理を行う半導体の検査装置
・HPC:高性能コンピューティング
・HBM:高帯域幅メモリ。AIに不可欠な高速メモリ
・OSAT:半導体の後工程受託企業
・ファウンドリ:半導体製造受託企業。TSMCなど世界の半導体生産の重要な担い手
業績ハイライト(2Q累計):
・売上高: 3,292億円(+51.4%)
・営業利益: 949億円(2.7倍)
・純利益: 693億円(2.7倍)
・営業利益率: 28.8%(2Q累計、+11.9pp)
・海外売上高比率: 97.0%
通期見通し(上方修正):
・売上高: 6,400億円(+400億円)
・営業利益: 1,650億円(+270億円、営業利益率25.8%)
・純利益: 1,220億円(+170億円)
・研究開発費: 720億円(+20億円)
為替影響:
・USD: 1円の円安で営業利益 +11億円
・EUR: 1円の円安で営業利益 -3億円
・下期想定レート: USD=140円、EUR=155円
好調の構造的要因:
1. AI需要の本格化
・データセンター向けHPCデバイス需要が急拡大
・AI搭載PC、車載プロセッサなど用途が多様化
・半導体の高性能化に伴いテスト工程も高度化
[解説]
テスト工程の高度化:半導体の集積度が上がり、より多くの回路が搭載されることで、
より複雑で精密なテストが必要に。これが高性能テスタへの需要増につながっている。
2. 製品ミックスの改善
・高付加価値製品(SoCテスタ/メモリテスタ)の販売比率上昇
・先端プロセス品向けの売上が大幅増
→収益性の改善に大きく貢献(売上総利益率57.8%、+7.9pp)
事業セグメント分析:
1. 半導体テストシステム: 2,466億円(+62.5%)
→HPC/AI関連が牽引、一方で成熟プロセス品は低調
[解説]
成熟プロセス品:やや古い製造技術で作られる半導体。
コストが安く、産業機器などに広く使用される。
2. メカトロニクス: 315億円(+50.2%)
→テスタ需要増に連動し、デバイスインターフェース好調
[解説]
デバイスインターフェース:テスタと被検査半導体を
つなぐ接続機器。テスタの売上増に比例して需要が伸びる。
3. サービス他: 511億円(+14.1%)
→設置台数増加によるストック型収益が着実に成長
[解説]
ストック型収益:保守サービスなど継続的に得られる収益。
景気変動の影響を受けにくい安定収入源。
地域別動向:
・台湾: ファウンドリ/OSAT向け需要が顕著に増加
・韓国: DRAMテスタに加え、HPC/AI向けSoCテスタも伸長
→グローバルなAI需要の高まりを反映
財務状態:
・総資産: 7,621億円(前年度末比+909億円)
・親会社所有者帰属持分比率: 62.4%
・営業キャッシュフロー: 929億円
株主還元の強化:
・中間配当: 19円
・自社株買い: 上限500億円または900万株(11/1-2/26)
→業績好調を受け、積極的な株主還元を実施
課題と対応:
・部材調達/供給能力の制約
→特にハイエンドSoC向けで製品リードタイムが長期化
→顧客要求納期への対応としてサプライチェーン管理を強化
・需要回復の二極化
→AI関連は活況も、成熟プロセス品は低調継続
→産業機器・自動車向けなど従来用途の回復は遅れ
・生産体制
→HBM向けは下期にかけて段階的に生産体制を整備
→製品供給力の向上を推進
トピックス:
・統合報告書2024を発行(10月18日)
・SoCテスト・システムV93000が発売25周年
・2024年度ポーター賞を受賞
・IR技術説明会を11月28日に開催予定
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【総合評価: ★★★★★】
収益性 ★★★★★
・営業利益率28.8%は過去最高水準
・製品ミックス改善で高収益体質が強化
・AI関連需要で高付加価値製品の比率上昇
成長性 ★★★★★
・AI需要を確実に取り込み大幅増収
・システムレベルテストなど新規分野も開拓
・構造的な需要拡大で中長期成長も期待
財務健全性 ★★★★
・親会社所有者帰属持分比率62.4%で安定
・営業CF929億円と資金創出力も堅調
・積極的な研究開発投資と株主還元の両立
市場環境 ★★★★★
・AI関連半導体の高度化でテスト需要が構造的に拡大
・半導体の品質要求の高まりが追い風
・地政学リスクはあるものの、影響は限定的
経営戦略 ★★★★
・需要急増への供給体制整備を着実に推進
・研究開発投資の強化で技術優位性を維持
・株主還元も積極的に実施
投資のポイント:
1. AI半導体テスト市場でのグローバルリーダー
2. 構造的な需要拡大で中長期的な成長が期待
3. 高い収益性と積極的な株主還元
リスク要因:
1. 半導体市況の変動
2. 地政学リスク
3. 部材調達の制約
💭考察:
半導体テスト市場は、従来の「品質保証」という役割から、「AI時代の性能保証」という新たな役割へと進化しつつあります。
特に高性能AI半導体では、従来の10倍以上のテスト時間が必要とされるケースも出てきており、テスト工程の重要性は一層高まっています。
みなさんは、半導体業界におけるテスト工程の重要性は今後どのように変化すると思われますか?
最高益更新のアドバンテスト 最新決算を読み解く:「なぜ営業利益率28.8%」という非製造業並みの収益性を実現できたのか