ユニクロ大幅増収増益、海外事業好調
ファーストリテイリングは、2024年1月11日に2024年第1四半期決算を発表しました。
第1四半期(9月から11月)連結決算の営業利益が、1466億8600万円(同25.3%増)と大幅増収増益となったことが好感されています。
国内ユニクロ事業は9、10月は例年よりも気温が高く推移したことで秋冬商品の販売が苦戦したものの、11月は冬物防寒衣料などの販売が好調だったほか、感謝祭も盛況でした。
また、海外ユニクロ事業は中国大陸・香港・台湾で構成する「グレーターチャイナ」、北米、欧州が大幅な増収増益となり、ジーユー事業も販売が好調に推移しました。
なお、24年8月期通期業績予想は、営業利益4500億円(同18.1%増)、純利益3100億円(同4.6%増)の従来見通しを据え置いています。
今回は、そんなファーストリテの最新の財務諸表を解説します。
この記事を読めば、ファーストリテの株を買うにあたって、最低限知っておくべきファーストリテの業績や財務状況を把握することができます。
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ファーストリテとは?
ファーストリテイリングは、日本の大手アパレル企業で、特に「ユニクロ」ブランドで有名です。
カジュアルウェアを中心に展開し、高品質で手頃な価格の製品を提供しています。
また、国際的にも展開しており、世界中の多くの国と地域に店舗を持っています。
年間配当と配当利回りの推移
2020年から2023年にかけて配当利回りが0.76%から0.87%に上昇し、年間配当も160円から290円に増加しています。2024年の配当は予想で330円です。
ファーストリテは年々配当を増やしており、特に2022年からの増加が顕著です。
なお、1月10日時点の配当利回りは、0.92%となっています。
総還元性向とは?
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があることに留意する必要があります。
総還元性向
ファーストリテの総還元性向は、2019年の63%から2021年には29.8%まで減少しましたが、その後回復し、2023年には51%になりました。
経常利益とは?
経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移
ファーストリテの経常利益成長率は、2021年第4四半期に218.2%と大幅に成長した後、2022年第1四半期に-5.5%へと減少しました。
その後、2022年第2四半期には回復し32.3%となるも、第3四半期には再び-5.8%に低下しました。
また、2024年第1四半期のファーストリテの経常利益成長率は28.1%でした。
経常利益率とは?
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
経常利益率
2022年第2四半期から2023年第2四半期では13.25%から13.81%へとわずかに増加し、2022年第3四半期から2023年第3四半期では25.03%から19.03%へと減少しました。
2024年第1四半期のファーストリテの経常利益率は20.04%であり、前年同期比で見ると17.70%からの上昇を示しています。
営業キャッシュフローマージンとは?
営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。
営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。
営業キャッシュフローマージン
ファーストリテの営業キャッシュフローマージンは、2019年から2021年にかけて上昇し、ピーク時の20.11%から2023年には16.74%に減少しました。
この傾向は、一時期の現金収入能力の向上後に減少が見られることを示しています。
アクルアールとは?
アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。
具体的には、アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。
アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー
純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。
他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。
逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。
アクルアール
ファーストリテのアクルアールは2019年から2023年にかけて一貫してマイナスであり、これは会社が営業活動から多くの現金を生み出しており、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。
この状況は、ファーストリテが質の高い利益を持続していることを示しており、企業の健全な財務状態を反映しています。
自己株式調整済み負債比率とは?
自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える純資産(自己株式を除く)に対して、負債がどれだけの割合を占めているのかを表す指標です。
自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)
純資産は自社株買いによって比較的容易に増やすことが可能であるため、その影響を排除するために純資産から自己株式を除いています。
この比率が低ければ低いほど、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。
自己株式調整済み負債比率
ファーストリテの自己株式調整済み負債比率は、2023年第1四半期の0.99から減少し、2023年第4四半期には0.77になりました。
2024年第1四半期にはわずかに上がって0.78です。
この比率は、ウォーレン・バフェットが健全な財務と見なす0.80を下回っており、ファーストリテの財務が安定していることを示しています。