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人気半導体株、東京エレクトロン 最新の決算&財務諸表を分析 2024年1月

人気半導体株、東京エレクトロン

半導体の国際団体SEMI(セミ)が昨年12月に公表した市場予測によると、今年の半導体製造装置市場は2年ぶりに回復し、25年には過去最高の1240億ドル(これまでの最高は22年の1074億ドル)となる見込みです。

国内では巨大半導体工場の建設計画も相次いでいます。

アメリカでは利下げ観測の強まりに伴って米長期金利に低下圧力が掛かり、グロース株優位の地合いが期待されるなか、 生成AIに関連する半導体分野で事業を展開する企業に投資家の関心が集中することが予想されます。

今回は、人気の半導体株である東京エレクトロンの最新の決算と財務諸表を分析します。

東京エレクトロンは、半導体製造装置分野で世界第3位のメーカーです。主にエッチング装置や成膜装置などに強みを持っています。

エッチング装置と成膜装置は、小さなコンピューターチップを作るための特別な機械です。

エッチング装置は、半導体チップの表面から小さな部分をきれいに取り除く機械です。これは、チップにとても小さな道やパターンを作るために使います。

例えるなら、お絵かきで使う消しゴムのようなものです。

成膜(せいまく)装置は、半導体チップの表面にとても薄い層を作る機械です。この薄い層は、チップが正しく動くためにとても大切です。

例えるなら、料理でケーキにクリームを塗るようなものです。

この二つの機械がないと、私たちが使っているスマホやコンピューターはうまく動きません。

こうした装置は、高品質な半導体チップを製造するために、とても重要な役割を果たしています。

今回は、そんな東京エレクトロンの最新の決算と財務諸表を分析します。

この記事を読めば、東京エレクトロンの株を買うにあたって、最低限知っておくべき東京エレクトロンの業績や財務状況を把握することができます。

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最新の決算

東京エレクトロンは、2023年11月10日に2024年第2四半期決算を発表しています。

24年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比48.7%減の1812億円に落ち込みました。

他方、通期の連結経常利益を従来予想の3950億円から4040億円(前期は6251億円)に2.3%上方修正し、減益率が36.8%減から35.4%減に縮小する見通しとなりました。

また、業績好調に伴い、今期の年間配当を従来計画の320円から340円(前期は1から3の株式分割前で1711円)に増額修正しました。

株主還元政策については、連結配当性向50%程度を目指すこととしています。

直近3ヵ月の実績である7-9月期(2Q)の売上営業利益率は前年同期の32.8%から22.5%に大幅低下しました。

年間配当と配当利回りの推移

東京エレクトロンの年間配当は、2020年の196円から2024年1月19日時点には320円へと増加しています。

配当利回りは、2020年の2.89%から2023年には3.56%へ上昇しましたが、2024年1月19日時点で1.13%に減少しています。

このデータは、配当額が増加傾向にある一方で、配当利回りは変動が大きいことを示しています。

総還元性向とは?

総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。

総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。

ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があることに留意する必要があります。

総還元性向

東京エレクトロンの総還元性向は、2019年の52.1%から2020年には133.4%へ大幅に上昇しましたが、その後2021年と2022年には約50%へと減少し、2023年には57.0%に回復しました。

これは、2020年に株主への還元が非常に高かったことを示し、その後は株主還元と成長のための投資のバランスが取れた水準に落ち着いています。

経常利益とは?

経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。

経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。

経常利益の推移

東京エレクトロンの経常利益成長率は、2022年第4四半期に51.0%の増加を示した後、2023年第3四半期と第4四半期に減少が見られました。2024年にはさらに減少が続き、第2四半期に-58.3%となり、前年同期比での大きな減少が顕著です。

このデータは、東京エレクトロンの経常利益が2024年度に入ってから顕著な減少傾向にあることを示しています。

経常利益率とは?

経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。

この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。

経常利益率

東京エレクトロンの経常利益率は、2023年第3四半期と第4四半期が前年同期比の利益率を下回っています。

さらに2024年第1四半期と第2四半期も前年同期より低い利益率を記録しています。

このデータは、東京エレクトロンの利益率が全体的に減少していることを示しています。

「利益」は意見、「キャッシュ」は現実

損益計算書(PL)に記載される売上高などの「利益」は、本来であれば来期に立つ売上を、今期の売上として計上することや架空の売上を立てることで、意図的に「利益」を過大に見せること、いわゆる粉飾が可能であり、明らかな粉飾でない限り、このような粉飾を見抜くことは難しいと言われています。

他方、キャッシュフロー計算書(CF)に記載される営業キャッシュフローなどの「キャッシュ」は、実際にどれだけの現金が出入りしたのかを表し、意図的な調整をする余地がありません。

そのため、会計の世界では、『「利益」は意見、「キャッシュ」は現実』、または『キャッシュフローは嘘をつかない』とされています。

また、損益計算書では黒字にも関わらず、倒産してしまう「黒字倒産」の原因は、売上が発生しても、その入金、現金収入が大幅に遅れ、企業が現金不足に陥ることで起こるとされています。

そのため、企業の「利益」だけでなく、企業の「キャッシュ」を確認することが重要です。

営業キャッシュフローマージンとは?

営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。

営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。

営業キャッシュフローマージン

東京エレクトロンの営業キャッシュフローマージンは、2019年の14.83%から2020年に22.45%へ上昇しましたが、2021年に10.43%に減少した後、2022年と2023年にはそれぞれ14.14%と19.30%へ回復しました。

これらの数値は、売上に占める営業キャッシュフローの割合が時間とともに変動しており、特に2020年と2023年に高い現金生成能力を示しています。

アクルアールとは?

アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。

アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。

アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー

純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。

他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。

逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。

アクルアール

東京エレクトロンの2019年のアクルアールは約588億円のプラスで、会計上の利益が現金収入を上回っています。

2020年は約-676億円のマイナスで、現金収入が会計上の利益を上回り、質の高い利益を示しています。

しかし、2021年以降はプラスに転じており、現金収入が会計上の利益を下回っています。

自己株式調整済み負債比率とは?

自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える純資産(自己株式を除く)に対して、負債がどれだけの割合を占めているのかを表す指標です。

自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)

純資産は自社株買いによって比較的容易に増やすことが可能であるため、その影響を排除するために純資産から自己株式を除いています。

この比率が低ければ、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。

「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。

自己株式調整済み負債比率

東京エレクトロンの自己株式調整済み負債比率は、2023年第2四半期に0.44で、その後も2024年第2四半期まで0.47以下の範囲で推移しています。

この比率が0.80を下回ることは、ウォーレン・バフェットの基準によれば健全な財務状態を示しており、東京エレクトロンの場合、純資産に対して負債の割合が低く、財務が安定していることを反映しています。

固定長期適合率とは?

固定長期適合率は、企業の固定資産が、純資産と固定負債といった安定した資金で賄えているかどうかを示す指標です。

固定長期適合率は、以下の式で求めることができます。
固定長期適合率=固定資産÷(純資産+固定負債)

一般的に、この比率が100%以下であると、企業の固定資産が安定した資金でまかなえており、会社の財務状況が安定していると判断できます。

固定長期適合率

東京エレクトロンの固定長期適合率を見ると、2023年第2四半期の31.63%から2024年第2四半期の39.58%まで徐々に上昇しています。

この比率が100%以下であることは、企業の固定資産が安定した資金で賄われており、財務状況が安定していることを示しています。

東京エレクトロンの場合、この割合が比較的低く、企業の固定資産が純資産と固定負債によって十分にカバーされていることが分かります。

総合評価

東京エレクトロンの成長性については、2024年通期の連結経常利益を4040億円(前期は6251億円)、減益率35.4%減を見込んでいることや、半導体需要が高まることが期待される中で業界内で高いシェアを有していることから、5点中2点とします。

効率性については、直近4四半期全てで、前年同期の経常利益率を下回ったことや、直近の経常利益率は22.96%と比較的高いことから、5点中3点とします。

現金の生成能力については、直近の営業キャシュフローマージンが過去5年間で2番目に高い値であることや、過去5年間で1回アクルアールがマイナスとなっていることから、5点中3点とします。

財務の安定性については、直近の自己株式調整済み負債比率が0.47であることや、直近の固定長期適合率が39.58%であることから、5点中5点としています。

割安性については、予想PERの推移が、下記の表のとおりであることや、半導体需要が高まることが期待される中で業界内で高いシェアを有していることから、5点中1.5点とします。

従って、2024年1月19日時点の総合評価としては、25点中14.5点、Bランクとしました。

東京エレクトロンの成長性は低めで2点、効率性と現金の生成能力は平均的でそれぞれ3点をつけています。

財務の安定性は高く評価しており、5点をつけています。

一方で、割安性に関しては1.5点と低い評価をつけています。

この評価は、企業の財務が非常に安定しているものの、成長の機会や株価の割安感に関しては改善の余地があることを示しています。

なお、この評価は、あくまでも簡易的に評価したものであり、実際の投資判断にあたっては、より総合的な評価を行うことをお勧めします。

また、配当利回りなどの要素は考慮していないことにご留意ください。

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