人気高配当株、積水ハウス
今回は、人気の高配当株である積水ハウスの最新の決算と財務諸表を分析します。
積水ハウスは、日本の大手住宅・建築会社です。同社は、日本国内外で住宅、マンション、商業施設、オフィスビルなどの建設・販売を手掛けています。特に、住宅建設においては、高品質な設計と施工で知られており、独自の技術やデザインを持つ住宅を多数提供しています。
積水ハウスは、日本国内だけでなく、海外市場にも積極的に進出しており、アジア、オーストラリア、アメリカ合衆国など多くの国で事業を展開しています。
基本情報は、こちらの表のとおりです。
この記事を読めば、積水ハウスの株を買うにあたって、最低限知っておくべき積水ハウスの業績や財務状況を把握することができます。
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株価のパフォーマンス
積水ハウスの株価のパフォーマンスは、こちらの表のとおりです。
積水ハウスの株価パフォーマンスは、短期から長期にかけて一貫した成長を示しています。
最近1か月と年初来の増加率は4.04%で、過去6か月では15.94%、1年で35.9%の成長が見られました。
5年間では108.48%、全期間にわたる成長率は266.04%に達しています。これは、積水ハウスの株価が長期的に強い成長を遂げていることを示しています。
過去5年間の株価のチャートは、こちらのとおりです。
株価は右肩上がりであり、高値圏にあることが確認できます。
年間配当と配当利回りの推移
積水ハウスの年間配当は2020年の81円から2024年1月30日には118円へと増加していますが、その間の配当利回りは年によって変動しています。2020年の3.43%から2023年には4.49%へ上昇しましたが、2024年1月30日時点では3.55%に減少しています。
総還元性向とは?
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があります。
総還元性向
積水ハウスの総還元性向は、2019年の45.0%から2023年にかけて全体的に増加し、2023年には56.1%に達しています。この傾向は、企業が株主に対する配当や自社株買いを通じて還元を強化していることを示しています。
なお、積水ハウスの株主還元については、中期的な平均配当性向40%以上を目標とし、機動的な自己株式取得を実施することとしています。
最新の決算
積水ハウスは、2023年12月7日に2024年第3四半期決算を発表しています。
24年1月期第3四半期累計(2-10月)の連結経常利益は前年同期比7.9%減の1866億円に減少し、通期計画の2590億円に対する進捗率は72.1%となり、5年平均の71.9%とほぼ同水準でした。
直近3ヵ月の実績である8-10月期(3Q)の売上営業利益率は前年同期の7.9%から8.5%に改善しました。
積水ハウスは、戸建住宅事業、賃貸住宅管理事業、仲介・不動産事業、国際事業など11の事業部門を持っています。
2023年第3四半期の部門別の売上高はこちらの表のとおりです。
積水ハウスの部門別売上高を見ると、賃貸住宅管理事業が最も高い売上を記録しており、約4826億円に達しています。これは、売上高の約22%を占めています。
その後、売上高の大きさについては、賃貸・事業用建物事業、国際事業、戸建住宅事業が続きます。
一方で、マンション事業やその他の事業は比較的低い売上です。マンション事業の売上高は、売上高全体の約3%を占めています
このデータは、積水ハウスが多様な事業分野に展開していることと、各部門での収益の大きなばらつきを示しています。
第3四半期の部門別の売上高と前年同期比の成長率はこちらの表のとおりです。
賃貸・事業用建物事業、賃貸住宅管理事業、リフォーム事業はそれぞれ成長を示しており、特に仲介・不動産事業は23.1%の大幅な成長率を記録しています。
これは、販売用不動産の売却が順調に進捗したことや、優良な住宅用地の積極的に仕入れ、土地取得から検討中の顧客への拡販に注力した結果、受注が好調に推移したことが要因です。
一方で、戸建住宅事業、建築・土木事業、マンション事業、国際事業は前年同期比で減少しており、特にマンション事業の減少率が-5.7%と最も大きいです。
全体として、積水ハウスの合計売上は2.8%の成長を達成しており、これは一部の強力な成長セグメントに支えられていることを示しています。
2023年第3四半期の部門別の営業利益はこちらの表のとおりです。
積水ハウスの部門別営業利益を見ると、賃貸・事業用建物事業が最も高い営業利益を上げており、これは営業利益の約26%を占めています。また、国際事業や賃貸住宅管理事業も高い割合を占めています。
一方、マンション事業や都市再開発事業の営業利益は、それぞれ営業利益全体の約4%、約7%と比較的低いことが分かります。
このデータから、積水ハウスの収益は特定の事業部門に依存していることがわかります。
第3四半期の部門別の営業利益と前年同期比の成長率はこちらの表のとおりです。
積水ハウスの各事業部門の営業利益の成長率を詳しく見ると、特に都市再開発事業が128.4%と非常に高い成長を遂げています。
これは、物件売却が順調に進捗したこと、保有物件の入居率が堅調に推移したことや、ホテル物件の運営状況が改善したことが要因です。
一方で、国際事業は45.5%の大きな減少を経験しています。
これは、アメリカ市場での戸建住宅事業及びコミュニティ開発事業において、住宅ローン金利の急激な上昇に伴い受注残高が減少したことが要因です。
これらのデータから、積水ハウスの事業ポートフォリオにおいて、いくつかの事業部門は顕著な成長を遂げている一方で、他の部門では挑戦的な局面に直面していることがわかります。
特に都市再開発事業の成長が目立ち、全体の業績への寄与が大きいことが伺えます。
第3四半期の部門別の営業利益率はこちらの表のとおりです。
積水ハウスの部門別営業利益率を見ると、都市再開発事業が17.3%で高い利益率を示しています。また、マンション事業は15.1%、賃貸・事業用建物事業は14.9%の利益率となっています。
一方、建築・土木事業は4.5%と最も低く、戸建住宅事業と賃貸住宅管理事業はそれぞれ7.7%と7.9%となっています。
全体の営業利益率は8.5%です。
これらの数字は、積水ハウスの異なる事業部門間で収益性に大きな違いがあることを示しています。
最新の損益計算書(PL)
損益計算書を見ると、企業がどれくらい売上を上げたのか、どれくらい費用をかけたのか、その結果どれだけ利益が残ったのかが把握できます。
まず、売上高が約2.2兆円と非常に高いことから、積水ハウスが大規模な事業活動を行っていることがわかります。
また、売上原価は約1.7兆円で、これは売上高の約80%を占めています。
営業利益は、約1867億円で、これは売上高の約8.5%を占めています。
営業外収益合計は約125億円で、これは主要な事業活動以外で得られた収益を示しています。一方で、営業外費用合計は約125億円で、ほぼ営業外収益と同じ額です。
結果として、経常利益は1867億円となり、これは営業利益と営業外収益・費用を合わせたものです。
経常利益は、売上高の約8.5%を占めています。
最新の貸借対照表(BS)
貸借対照表を見ると、企業がどのような資産、負債、および純資産を
どれくらい持っているかなど、企業の財務状態が分かります。
まず、流動資産合計が2.6兆円と非常に高く、総資産の約75%を占めていることが目立ちます。
この高い比率は、積水ハウスが非常に健全な流動性を保有しており、短期的な負債や投資機会に迅速に対応できる能力を持っていることを示しています。
なお、流動資産の構成を見ると「分譲建物」(8103億円、流動資産の約32%)と「分譲土地」(8742億円、流動資産の約34%)が大きな割合を占めていることが分かります。
また、流動負債合計は1.3兆円で、これは負債の約75%を占めています。
これは、大部分が短期間内に支払う必要がある負債が総負債の大部分を占めており、短期的な財務圧力が比較的大きいことを意味します。
他方、純資産合計は1.8兆円で、負債合計1.7兆円に対して財務的な安定性を示しています。特に利益剰余金が1.1兆円と金額が大きく、内部留保が豊富であることがわかります。
なお、総資産に占める純資産の割合は約52%です。
この比率は、同社が負債に対して十分な自己資本を持っていることを示しており、長期的な安定性と成長のための資本が確保されていることを示唆しています。
経常利益とは?
経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移
積水ハウスの経常利益成長率を前年同期比で見ると、2023年には初めに大幅な増加が見られた後、減少に転じています。2024年には初めに減少した後、再び増加傾向にあり、特に2024年第4四半期のガイダンスでは32.4%の成長が予測されています。
経常利益率とは?
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
経常利益率
積水ハウスの経常利益率を前年同期比で見ると、2023年には減少傾向にあり、2023年第4四半期には8.25%から6.84%まで下降しました。
しかし、2024年には回復し、特に2024年第2四半期には前期の9.05%から9.57%へと上昇しています。
2024年第4四半期の会社側ガイダンスでは前期の6.84%から8.12%となっており、これは前年同期に比べて若干の増加を示しています。
2024年度全体の経常利益率は前年より若干改善していることが分かります。
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「利益」は意見、「キャッシュ」は現実
損益計算書(PL)に記載される売上高などの「利益」は、本来であれば来期に立つ売上を、今期の売上として計上することや架空の売上を立てることで、意図的に「利益」を過大に見せること、いわゆる粉飾が可能であり、明らかな粉飾でない限り、このような粉飾を見抜くことは難しいと言われています。
他方、キャッシュフロー計算書(CF)に記載される営業キャッシュフローなどの「キャッシュ」は、実際にどれだけの現金が出入りしたのかを表し、意図的な調整をする余地がありません。
そのため、会計の世界では、『「利益」は意見、「キャッシュ」は現実』、または『キャッシュフローは嘘をつかない』とされています。
また、損益計算書では黒字にも関わらず、倒産してしまう「黒字倒産」の原因は、売上が発生しても、その入金、現金収入が大幅に遅れ、企業が現金不足に陥ることで起こるとされています。
そのため、企業の「利益」だけでなく、企業の「キャッシュ」を確認することが重要です。
営業キャッシュフローマージンとは?
営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。
営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。
営業キャッシュフローマージン
積水ハウスの営業キャッシュフローマージンは、2019年の5.79%から2020年に大幅に増加し15.06%に達しましたが、その後2021年以降は減少傾向にあり、2023年には4.28%まで低下しています。
この傾向は、積水ハウスの営業活動による現金生成能力が減少していることを示しています。
アクルアールとは?
アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。
アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。
アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー
純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。
他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。
逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。
アクルアール
積水ハウスのアクルアールは、2019年にプラスだったものの、2020年に大幅なマイナスに転じた後、2021年にマイナス幅が縮小しました。
2022年と2023年には再びプラスに回復し、特に2023年には大幅な増加を見せています。
これは、積水ハウスの営業活動による現金生成能力が年によって大きく変わっていることを示しています。
自己株式調整済み負債比率とは?
自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える純資産(自己株式を除く)に対して、負債がどれだけの割合を占めているのかを表す指標です。
自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)
純資産は自社株買いによって比較的容易に増やすことが可能であるため、その影響を排除するために純資産から自己株式を除いています。
この比率が低ければ、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。
自己株式調整済み負債比率
積水ハウスの自己株式調整済み負債比率は、ウォーレン・バフェットの望ましい基準である0.80を上回っており、2024年第3四半期には0.96に達しています。
この比率の上昇は、純資産に対する負債割合が増加していることを示し、財務リスクが高まっている可能性を指摘しています。
固定長期適合率とは?
固定長期適合率は、企業の固定資産が、純資産と固定負債といった安定した資金で賄えているかどうかを示す指標です。
固定長期適合率は、以下の式で求めることができます。
固定長期適合率=固定資産÷(純資産+固定負債)
一般的に、この比率が100%以下であると、企業の固定資産が安定した資金でまかなえており、会社の財務状況が安定していると判断できます。
固定長期適合率
積水ハウスの固定長期適合率は2023年第3四半期から2024年第3四半期にかけて一貫して100%を下回っており、2024年第3四半期には39.95%にまで低下しています。
この低い比率は、同社の固定資産が安定した資金源で賄われており、財務状態が健全であることを示しています。
総合評価
積水ハウスの成長性については、2024年通期の営業利益を2650億円、前年比1.3%増を見込んでいることや、直近8四半期(FY24Q4の会社側ガイダンスを含む)の経常利益成長率の平均は約9%が見込まれていることから、5点中3点とします。
効率性については、直近4四半期(FY24Q4の会社側ガイダンスを含む)のうち、3四半期の経常利益率が前年同期の利益率を上回る見込みであることから、5点中4点とします。
現金の生成能力については、直近5期間のうち、最も低いマージンであることや、過去5期間のうち、2期間のアクルアールがマイナスとなっていることから、5点中1.5点とします。
財務の安定性については、直近の自己株式調整済み負債比率が0.96であることや、直近の固定長期適合率が39.95%であることから、5点中4点としています。
割安性については、予想PERの推移が、こちらの表のとおりであり、最新の予想PERが全ての期間の平均値を上回っていることや、直近の予想PERが11.3倍であり、比較的低いことから、5点中3点とします。
従って、2024年2月1日時点の総合評価としては、25点中15.5点、Aランクとしました。
積水ハウスの成長性は3点で、これは企業が一定の成長を達成しているが、顕著な成長は見られないことを示しています。
効率性に関しては4点と評価されており、運営の効率が良好であることを反映しています。
しかし、現金の生成能力は1.5点と低く、これは営業活動による現金収入が限られていることを意味します。
財務の安定性は高い評価の4点で、企業の財務基盤が安定していることを示しています。
最後に、割安性は3点となっており、株価がその実質価値に対して適切に評価されているか、やや割高な可能性があることを示しています。
なお、この評価は、あくまでも簡易的に評価したものであり、実際の投資判断にあたっては、より総合的な評価を行うことをお勧めします。
また、配当利回りなどの要素は考慮していないことにご留意ください。