今期最終利益53%上方修正、4年連続世界1位
トヨタ自動車は、2023年11月に決算を発表し、通期の最終利益を従来予想の2兆5800億円から3兆9500億円(前期は2兆4513億円)に53.1%上方修正を行いました。
また、世界の新車販売台数について、2024年1月9日、競合のフォルクスワーゲンが2023年の販売台数を発表したことに伴い、1022万台超の新車を販売したトヨタ自動車が4年連続1位となることが確実となりました。
今回は、そんなトヨタ自動車の最新の決算内容や財務諸表を解説します。
この記事を読めば、トヨタ自動車の株を買うにあたって、最低限知っておくべきトヨタ自動車の現在の業績や財務状況を把握することができます。
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トヨタ自動車とは?
トヨタ自動車は、日本の大手自動車メーカーです。1937年に設立され、世界中で幅広い車種を提供しています。
革新的なハイブリッド車の先駆者であり、環境に優しい技術と耐久性の高い車で知られています。
また、トヨタ生産方式と呼ばれる効率的な生産手法も有名です。

最新の決算
トヨタ自動車は、11月1日に2024年第2四半期決算を発表しています。
2024年3月期の第2四半期累計(4月から9月)では、連結最終利益が前年同期比で2.2倍の2兆5894億円に急増しました。
また、通期の最終利益予想は、前期の2兆4513億円から大幅に上方修正され、3兆9500億円(前年比53.1%増)となり、2期ぶりの過去最高益更新が見込まれています。
さらに、7月から9月期(第2四半期)の連結最終利益は、前年同期比2.9倍の1兆2780億円に拡大。この期間の売上営業利益率は、前年同期の6.1%から12.6%に大幅に改善しました。
年間配当と配当利回りの推移

2020年から2023年にかけて、トヨタ自動車の年間配当は44円から60円に増加し、配当利回りは一時的に低下した後、2023年に3.19%へ回復しました。
トヨタ自動車は安定した配当成長を見せており、特に2023年の配当利回りの回復は、投資家にとって好ましい兆候と言えます。
なお、1月10日時点の配当利回りは、2.19%となっています。
総還元性向とは?
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があることに留意する必要があります。
総還元性向

2019年の63%から2021年には29.8%に低下したトヨタ自動車の総還元性向が、2023年に51%まで回復しています。
この変動は、株主還元と再投資のバランスを見極める柔軟な経営戦略を反映しています。
経常利益とは?

経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移

トヨタ自動車の経常利益は、2022年第4四半期に前年同期比29.1%減少しましたが、2023年第4四半期には6.2%増加に転じました。
2024年には更に成長が加速し、第1四半期は前年同期比68.4%、第2四半期は121.7%増加しました。
経常利益率とは?
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
経常利益率

トヨタ自動車の経常利益率は、2023年度には前年同期比で低下し、2023年第4四半期には8.25%になりました。
しかし、2024年に入ると、前年同期比で大幅に改善し、2024年第1四半期に16.31%、第2四半期に15.75%を記録しました。
これは、トヨタが前年の同じ期間と比較して利益率を大きく上昇させたことを示しています。
営業キャッシュフローマージンとは?
営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。
営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。
営業キャッシュフローマージン

トヨタ自動車の営業キャッシュフローマージンは、2019年に12.46%で始まり、2020年には8.03%に減少しました。2021年に10.02%へ回復し、2022年に11.86%に上昇した後、2023年には7.95%に減少し、5年間で最低を記録しました。
アクルアールとは?
アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。
具体的には、アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。
アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー
純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。
他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。
逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。
アクルアール

トヨタ自動車のアクルアールは2019年から2023年にかけて一貫してマイナスで、2019年は約-1.88兆円、2023年は約-0.50兆円です。
このマイナスの値は、トヨタが営業活動から多額の現金を生み出し、会計上の利益を上回っていることを示し、質の高い利益を生み出していることを意味します。
自己株式調整済み負債比率とは?
自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える純資産(自己株式を除く)に対して、負債がどれだけの割合を占めているのかを表す指標です。
自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)
純資産は自社株買いによって比較的容易に増やすことが可能であるため、その影響を排除するために純資産から自己株式を除いています。
この比率が低ければ低いほど、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。
自己株式調整済み負債比率

トヨタ自動車の自己株式調整済み負債比率は、2023年第2四半期の1.79から2024年第2四半期に1.75と1.7台で推移しています。
これはウォーレン・バフェットが推奨する0.80以下の基準を超え、純資産に対する負債が比較的高い状況を示しています。