<企業概要>
住友商事(8053)
・創業:1919年(大正8年)
・事業内容:総合商社。世界66カ国・地域に拠点を持ち、9つの事業グループで事業を展開
- 鉄鋼 - 自動車 - 輸送機・建機 - 都市総合開発
- メディア・デジタル - ライフスタイル - 資源
- 化学品・エレクトロニクス・農業
- エネルギートランスフォーメーション
・従業員数:連結約80,000人
・特徴:バランスの取れた事業ポートフォリオと安定した財務基盤が強み
<主要用語解説>
・一過性損益:特別な要因で一時的に発生する損益
・DER:負債資本倍率。財務健全性を測る指標
・フリーキャッシュ・フロー:企業が自由に使える現金の額
・総還元性向:純利益に対する配当と自社株買いの合計額の比率
きらく:(高級紅茶「ダージリン」を入れながら)「今日は住友商事の第2四半期決算を見ていきましょう。上期利益は2,540億円。前年同期比で309億円の減益ね」
銭太郎:「減益って結局、業績が悪化してるってことじゃないんですかゼニ?」
あおい:「単純にそうとは言えないと思います。一過性要因を除いた実質業績は2,470億円で、前年との差は100億円程度です。また、総資産の減少は円高の影響等によるもので、事業自体の競争力低下を示すものではありません」
きらく:「その通りよ。例えば、輸送機・建機部門を見てみましょう。リース事業と船舶事業を中心に堅調に推移していて、前年同期比で55億円の増益を記録しているわ」
銭太郎:「でも、世の中では『総合商社の業績は資源価格に依存しすぎ』って言う人もいますよねゼニ?」
きらく:「鋭い指摘ね。確かにエネルギートランスフォーメーショングループは164億円の増益だけど、これは単なる市況要因ではないの。海外発電事業における既存事業の収益力強化が主因なのよ」
あおい:「ただし、課題もありますね。例えば、メディア・デジタル分野では、エチオピア通信事業で立ち上げコストの増加に加え、現地通貨切り下げに伴う為替評価損が発生しています」
銭太郎:「そういえば、円高で2,700億円も総資産が減ったって聞きましたけど...」
きらく:「ええ、為替の影響は確かに大きいわ。ただし、経営陣はこれを見据えて、下期に200億円のバッファーを設定しているの」
きらく:「また、通期の見通しでは、期初予想の5,300億円は据え置きで、非資源ビジネスだけを見ても通期で4,000億円強を見込んでいるの。」
銭太郎:「でも、世間では『総合商社は資源頼みで、新規投資も焦っているだけ』って意見もあるって聞きますけどゼニ...」
きらく:「その指摘に答えるには、投資の中身を見る必要があるわね。(紅茶を注ぎ直しながら)例えば...」
あおい:「はい、主な投資実績を整理させていただきますと:
・BIA Groupへの出資:アフリカ17ヶ国・欧州2ヶ国での建機事業展開
・ノルウェー洋上風力支援船保有・運行事業への参入
・インド都市ガス事業への出資
・チリのバイオ農薬事業への参入
これらは、いずれも将来の成長市場を見据えた戦略的投資といえます」
銭太郎:「それって、本当に成功するんですかゼニ?」
きらく:「いい質問ね。セグメント別の実績を見てみましょう。例えば、海外発電事業は前年同期比164億円の増益。これは既存事業の収益力強化が奏功しているの。国内でも、不動産事業は堅調で、エミテラス所沢のグランドオープンなど、着実に成果が出ているわ」
銭太郎:「でも、それだけ投資して借金は大丈夫なんですかゼニ?」
きらく:「フリーキャッシュ・フローを見てみましょう。営業活動で1,877億円のプラス、投資活動でマイナス747億円。差し引き1,130億円のプラスよ。つまり、投資をしても余剰資金が出ているということ」
あおい:「財務健全性の指標であるネットDERも0.6倍を維持。年収1,000万円の人が600万円の住宅ローンを組むような、健全な水準です」
銭太郎:「株主還元はどうなんですかゼニ?」
きらく:「中間配当は65円と2.5円の増配よ。『減益なのに増配して大丈夫なの?』という声もあるでしょうね」
あおい:「ですが、総還元性向40%以上という方針は、財務健全性を確認した上での判断です。自己株式取得も含め、500億円の還元も実施済みです」
きらく:「この決算で特に評価できるのは、『守りながら攻める』という経営姿勢ね。エネルギートランスフォーメーションなど成長分野への投資という攻めと、財務健全性という守りの両立を図っているわ」
(評価部分)
きらく:「総合評価は『★★★★』が妥当ね。財務基盤の強さと、成長投資・株主還元のバランスが取れている点を評価したわ。ただし、新興国でのリスク管理強化は課題として残るわね」
あおい:「はい。通期見通し5,300億円の達成に向けて、特に下期に不動産案件の引き渡しが集中することなども、しっかりモニタリングしていく必要がありますね」
銭太郎:「なるほど! 数字の裏側まで見ないと、本当の分析にならないんですねゼニ!」
きらく:(ダージリンの最後の一滴を味わいながら)「ええ、その通りよ。決算書は会社の健康診断書のようなもの。表面的な数字だけでなく、その背景にある戦略や施策まで、しっかり読み解く必要があるわ。では、今日の観測はここまでにしましょうか」