日本株

住友商事、2024年度上期利益2,540億円で減益も通期見通し据え置き:「守りながら攻める」その舵取りの中身

<企業概要>

住友商事(8053)

・創業:1919年(大正8年)

・事業内容:総合商社。世界66カ国・地域に拠点を持ち、9つの事業グループで事業を展開

- 鉄鋼 - 自動車 - 輸送機・建機 - 都市総合開発

- メディア・デジタル - ライフスタイル - 資源

- 化学品・エレクトロニクス・農業

- エネルギートランスフォーメーション

・従業員数:連結約80,000人

・特徴:バランスの取れた事業ポートフォリオと安定した財務基盤が強み

<主要用語解説>

・一過性損益:特別な要因で一時的に発生する損益

・DER:負債資本倍率。財務健全性を測る指標

・フリーキャッシュ・フロー:企業が自由に使える現金の額

・総還元性向:純利益に対する配当と自社株買いの合計額の比率

きらく:(高級紅茶「ダージリン」を入れながら)「今日は住友商事の第2四半期決算を見ていきましょう。上期利益は2,540億円。前年同期比で309億円の減益ね」

銭太郎:「減益って結局、業績が悪化してるってことじゃないんですかゼニ?」

あおい:「単純にそうとは言えないと思います。一過性要因を除いた実質業績は2,470億円で、前年との差は100億円程度です。また、総資産の減少は円高の影響等によるもので、事業自体の競争力低下を示すものではありません」

きらく:「その通りよ。例えば、輸送機・建機部門を見てみましょう。リース事業と船舶事業を中心に堅調に推移していて、前年同期比で55億円の増益を記録しているわ」

銭太郎:「でも、世の中では『総合商社の業績は資源価格に依存しすぎ』って言う人もいますよねゼニ?」

きらく:「鋭い指摘ね。確かにエネルギートランスフォーメーショングループは164億円の増益だけど、これは単なる市況要因ではないの。海外発電事業における既存事業の収益力強化が主因なのよ」

あおい:「ただし、課題もありますね。例えば、メディア・デジタル分野では、エチオピア通信事業で立ち上げコストの増加に加え、現地通貨切り下げに伴う為替評価損が発生しています」

銭太郎:「そういえば、円高で2,700億円も総資産が減ったって聞きましたけど...」

きらく:「ええ、為替の影響は確かに大きいわ。ただし、経営陣はこれを見据えて、下期に200億円のバッファーを設定しているの」

きらく:「また、通期の見通しでは、期初予想の5,300億円は据え置きで、非資源ビジネスだけを見ても通期で4,000億円強を見込んでいるの。」

銭太郎:「でも、世間では『総合商社は資源頼みで、新規投資も焦っているだけ』って意見もあるって聞きますけどゼニ...」

きらく:「その指摘に答えるには、投資の中身を見る必要があるわね。(紅茶を注ぎ直しながら)例えば...」

あおい:「はい、主な投資実績を整理させていただきますと:

・BIA Groupへの出資:アフリカ17ヶ国・欧州2ヶ国での建機事業展開

・ノルウェー洋上風力支援船保有・運行事業への参入

・インド都市ガス事業への出資

・チリのバイオ農薬事業への参入

これらは、いずれも将来の成長市場を見据えた戦略的投資といえます」

銭太郎:「それって、本当に成功するんですかゼニ?」

きらく:「いい質問ね。セグメント別の実績を見てみましょう。例えば、海外発電事業は前年同期比164億円の増益。これは既存事業の収益力強化が奏功しているの。国内でも、不動産事業は堅調で、エミテラス所沢のグランドオープンなど、着実に成果が出ているわ」

銭太郎:「でも、それだけ投資して借金は大丈夫なんですかゼニ?」

きらく:「フリーキャッシュ・フローを見てみましょう。営業活動で1,877億円のプラス、投資活動でマイナス747億円。差し引き1,130億円のプラスよ。つまり、投資をしても余剰資金が出ているということ」

あおい:「財務健全性の指標であるネットDERも0.6倍を維持。年収1,000万円の人が600万円の住宅ローンを組むような、健全な水準です」

銭太郎:「株主還元はどうなんですかゼニ?」

きらく:「中間配当は65円と2.5円の増配よ。『減益なのに増配して大丈夫なの?』という声もあるでしょうね」

あおい:「ですが、総還元性向40%以上という方針は、財務健全性を確認した上での判断です。自己株式取得も含め、500億円の還元も実施済みです」

きらく:「この決算で特に評価できるのは、『守りながら攻める』という経営姿勢ね。エネルギートランスフォーメーションなど成長分野への投資という攻めと、財務健全性という守りの両立を図っているわ」

(評価部分)

きらく:「総合評価は『★★★★』が妥当ね。財務基盤の強さと、成長投資・株主還元のバランスが取れている点を評価したわ。ただし、新興国でのリスク管理強化は課題として残るわね」

あおい:「はい。通期見通し5,300億円の達成に向けて、特に下期に不動産案件の引き渡しが集中することなども、しっかりモニタリングしていく必要がありますね」

銭太郎:「なるほど! 数字の裏側まで見ないと、本当の分析にならないんですねゼニ!」

きらく:(ダージリンの最後の一滴を味わいながら)「ええ、その通りよ。決算書は会社の健康診断書のようなもの。表面的な数字だけでなく、その背景にある戦略や施策まで、しっかり読み解く必要があるわ。では、今日の観測はここまでにしましょうか」

住友商事、上期純利益2,540億円で実質減益も通期見通し5,300億円を維持:「200億円のバッファー」が示す経営陣の読み筋

https://note.com/observatory393/n/nde9fb6af12be

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