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第一三共、2024年度第2四半期決算:「エンハーツに続く"最強の一手"」を米メルク社と仕掛ける理由

■ 企業概要と投資テーマ

【事業概要】

グローバル製薬企業として3つの特徴

1. ADC技術での世界的優位性

2. 日米欧での自社販売網

3. がん領域での強いプレゼンス

【用語解説】

・ADC(抗体薬物複合体)

がん細胞を選択的に攻撃する次世代抗体医薬品。

通常の抗がん剤と比べて副作用が少ないのが特徴

【投資における重要論点】

○プラス要因

1. ADC技術の優位性

→技術的参入障壁が高く、競合との差別化が可能

2. グローバル市場での成長性

→世界の主要市場で自社販売網を保有

3. 固形がん領域での展開

→乳がん、肺がん、胃がんなど、固まりとなるがん

での治療実績

●リスク要因

1. エンハーツへの依存

→単一製品への売上依存リスク

2. 競合参入の可能性

→類似薬の開発進展

3. 製造能力の制約

→需要増への対応能力

■ 財務パフォーマンス(前年同期比)

【売上収益】

実績:8,827億円(+21.5%)

○増収要因

1. エンハーツの適応拡大:+879億円

→治療対象となる疾患範囲の拡大

2. リクシアナの市場浸透:+365億円

→リクシアナは、血栓症の予防・治療薬

3. 為替影響:+396億円

USD:+220億円

EUR:+144億円

●減収要因

1. 第一三共エスファ連結除外

→ジェネリック事業子会社の売却影響

2. 一部地域での競争激化

→後発品との競合など

【営業利益】

実績:1,869億円(+96.6%)

○利益改善要因

1. 製品構成の改善

→高付加価値製品の売上比率上昇

2. 特別利益の計上

→第一三共エスファ譲渡益163億円

●利益圧迫要因

1. 研究開発費:1,933億円(+16.4%)

2. プロフィットシェア費用

→提携先との利益分配費用の増加

3. 為替差損の発生

■ 財務状態の分析

【資産・資本の状況】

・総資産:3兆2,971億円

・親会社所有者帰属持分比率:49.2%

→自己資本比率に相当

→前期末比+0.4ポイント

・手元流動性:8,470億円

→現金および換金可能な短期資産

→前期末比-3,767億円の減少

【財務指標の解説】

・自己資本比率

→企業の財務健全性を示す指標

→50%前後が一般的な目安

・手元流動性

→事業継続に必要な運転資金

→研究開発投資や設備投資の原資

■ 主力製品分析

【エンハーツ】

売上高:2,613億円(+50.7%)

製品特性:HER2陽性がんを標的とするADC医薬品

地域別状況:

○米国(1,401億円、+32.4%)

・新規患者シェア1位維持

・NCCNガイドライン収載拡大

→米国における標準治療指針

・早期ライン(2L)での処方拡大

→2L:2番目の治療選択肢として使用

○欧州(705億円、+79.7%)

・主要国での浸透加速

・市場アクセスの改善

→各国での保険償還価格の確保

・新規適応症の承認進展

→使用可能な疾患の範囲拡大

■ 開発パイプライン状況

【重点開発品】

1. Dato-DXd

製品特性:TROP2を標的とするADC

開発状況:

・TROPION-Lung01試験

→非小細胞肺がんでの第III相試験

・バイオマーカー戦略

→治療効果を予測する指標の開発

2. HER3-DXd

製品特性:HER3を標的とするADC

開発進捗:

・HERTHENA-Lung02試験

→EGFR変異肺がんでの第III相試験

・主要評価項目達成

→PFS(無増悪生存期間)で目標達成

→がんの進行が抑制された期間の延長

■ 戦略的提携

【米メルクとのMK-6070提携】

契約規模:320M USD

→M:Million(百万)

提携の意義:

1. DXd ADC 3製品との併用可能性

→複数薬剤の組み合わせによる治療効果向上

2. 小細胞肺がんでの展開強化

3. Quid関連権利の活用

→既存契約の権利を新規契約に充当

■ 株主還元策

【配当方針】

・年間配当:60円

→前期比+10円の増配

・配当性向:約40%

→純利益に対する配当金の比率

【自己株式取得】

・総額枠:2,000億円

・現時点進捗

→2,153万株(1,200億円)取得完了

・期間:2024/4/26~2025/1/15

【投資判断のポイント】

1. 開発品の競争優位性

→他社製品との差別化要因

2. 製造能力の拡充状況

→需要増への対応力

3. 利益率の維持可能性

→原価率と費用構造の推移

4. 為替感応度

→為替変動による業績影響

総合評価:★★★★(5段階評価)

【評価理由の詳細分析】

1. 収益性:★★★★★

○評価のポイント

・営業利益率の大幅改善

→前年同期比で96.6%増

・製品構成の改善

→高収益品比率の上昇

・原価率の低下

→製造効率の向上

2. 成長性:★★★★★

○評価のポイント

・エンハーツの持続的成長

→全地域で二桁成長達成

・適応拡大の進展

→新規市場機会の創出

・パイプラインの充実

→次世代製品の開発進捗

3. 財務健全性:★★★★

○評価のポイント

・高い自己資本比率

→49.2%と高い自己資本比率

・潤沢な手元資金

→8,470億円の流動性確保

・安定的なキャッシュフロー

△課題

・製造設備投資の負担増

4. 技術力:★★★★★

○評価のポイント

・ADC技術での優位性

・バイオマーカー戦略の進展

・製造技術の確立

△課題

・競合他社の参入可能性

5. 事業リスク:★★★

△懸念事項

・エンハーツへの依存度

・為替変動の影響

・製造能力の制約

【総合評価★★★★とした根拠】

○強みとなる要素

1. ADC技術での圧倒的優位性

→競合との技術的差別化

2. グローバル展開の進展

→自社販売網の活用

3. 収益構造の改善

→高収益品比率の上昇

4. 研究開発の順調な進捗

→パイプラインの充実

●課題となる要素

1. 単一製品依存リスク

→エンハーツへの高依存

2. 製造能力の制約

→需要増への対応必要性

3. 為替感応度の高さ

→海外売上比率の上昇に伴うリスク

【投資判断にあたっての留意点】

1. 中長期的な視点が必要

→研究開発の進捗を注視

2. リスク許容度の確認

→バイオ医薬品特有の

不確実性を理解

3. 競合環境の変化に注目

→類似薬の開発動向を確認

4. 製造能力の拡充進捗

→設備投資の効果を確認

第一三共、2024年度第2四半期決算:「ジェネリック事業を手放した」その真意とは

https://note.com/observatory393/n/nde247edc93f6

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