純利益9500億円に上方修正、三菱商事、 稼ぐ力に自信
三菱商事は、2023年11月2日に2024年第2四半期決算を発表しています。
24年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結最終利益は前年同期比35.3%減の4660億円に落ち込みました。
他方、通期の純利益を従来予想の9200億円から9500億円(前期は1兆1806億円)に3.3%上方修正し、減益率が22.1%減から19.5%減に縮小する見通しとなりました。
同社は、円安基調が円換算の利益を押し上げるほか、天然ガスの取引などで想定以上に利益が出る見込みと説明しています。
中西勝也社長は、銅鉱山の開発などの長期的な投資のほか、低収益の事業の売却を通じた事業構造の改善などで「稼ぐ力が伸びてきている」と述べました。
また、2024年1月1日の1から3の株式分割に伴い、今期の年間配当を従来計画の200円から140円(前期は180円)に修正しました。年間配当は実質5.0%の増額となります。
直近3ヵ月の実績である7-9月期(2Q)の連結最終利益は前年同期比20.3%減の1483億円に減少しました。
今回は、そんな三菱商事の最新の財務諸表を解説します。
この記事を読めば、三菱商事の株を買うにあたって、最低限知っておくべき三菱商事の業績や財務状況を把握することができます。
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三菱商事とは?
三菱商事は、日本の大手総合商社の一つです。様々な事業分野に幅広く展開しており、エネルギー、機械、化学品、食品などの分野で活動しています。グローバルに事業を展開し、多様な商品やサービスを提供していることで知られています。また、投資や開発事業にも積極的で、国際的なビジネス展開を行っている大企業です。
年間配当と配当利回りの推移
三菱商事の2024年1月の株式分割を考慮した年間配当は2020年の44円から2024年には66.67円へと増加していますが、同期間中の配当利回りは5.76%から減少傾向にあります。
三菱商事の年間配当の額は年々増え続けていることが確認できます。
なお、1月12日時点の配当利回りは、2.76%となっています。
総還元性向とは?
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があることに留意する必要があります。
総還元性向
三菱商事の総還元性向は、2019年の33.6%から2021年には126.2%へと大幅に上昇しましたが、2022年には23.6%に減少し、2023年には40.6%に回復しました。
この変化は、一時期株主還元に大きく注力した後、その後の年には成長への投資と株主還元のバランスを取った株主還元政策に戻っていることを示しています。
経常利益とは?
経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移
三菱商事の経常利益成長率は、2022年第3四半期に171.8%と大幅に増加し、2022年第4四半期には1071.5%まで上昇しました。
その後、2023年に入って成長率は低下し、第3四半期には-17.0%、第4四半期には-13.0%となり、2024年第2四半期には、-14.1%になりました。
経常利益は、一時期の顕著な成長後に、減少傾向にあることが分かります。
経常利益率とは?
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
経常利益率
2023年第3四半期以降の経常利益率は、全て前年同期の経常利益率を下回る結果となっています。
特に2024年第2四半期の経常利益率は前年同期比で0.3ポイント低下しており、減益と共に利益率の低迷も業績悪化の要因となっていることがわかります。
営業キャッシュフローマージンとは?
営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。
営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。
営業キャッシュフローマージン
三菱商事の営業キャッシュフローマージンを見ると、2019年から2021年まで上昇傾向にありました。
2022年は6.12%と前年比で低下していますが、2023年は8.95%と再び上昇しています。
全体として、三菱商事の営業キャッシュフローマージンは拡大傾向にあり、現金を稼ぐ能力が高まっていることが分かります。
アクルアールとは?
アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。
具体的には、アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。
アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー
純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。
他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。
逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。
アクルアール
三菱商事のアクルアールを見ると、2019年から2023年の全ての年でマイナスの値となっています。
これは、三菱商事の営業キャッシュフローが純利益を上回っていることを意味しています。営業活動から得られる現金収入が、会計上の利益を上回る好調な状況が続いていると判断できます。
自己株式調整済み負債比率とは?
自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える純資産(自己株式を除く)に対して、負債がどれだけの割合を占めているのかを表す指標です。
自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)
純資産は自社株買いによって比較的容易に増やすことが可能であるため、その影響を排除するために純資産から自己株式を除いています。
この比率が低ければ低いほど、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。
「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。
自己株式調整済み負債比率
三菱商事の自己株式調整済み負債比率は、2023年第2四半期から2024年第2四半期にかけて減少傾向にあります。
2023年第2四半期は1.62と比較的高く、負債が多い状況でした。しかし2024年第2四半期には1.35まで低下しています。
これは純資産に対する負債の割合が減少し、財務体質が改善されていることを示しています。特に2024年第2四半期の1.35は、バフェットが望ましいとする0.80以下には及ばないものの、1.4以下程度まで低下したことは評価できます。