世界最強の半導体株
今回は、人気の半導体株で、2024年1月26日に決算を発表した信越化学工業の最新の決算と財務諸表を分析します。
信越化学工業株式会社は、日本の化学業界を代表する大手化学工業です。
同社の製品ラインナップは多岐にわたりますが、特に塩化ビニル樹脂(PVC)と半導体用シリコンウェハの分野で世界首位の地位を確立しています。
塩化ビニル樹脂は、幅広い用途に使われる合成樹脂で、建築資材、パイプ、家庭用品など様々な製品に使用されています。
半導体用シリコンウェハは、コンピューターやスマートフォンの中のとても小さな部品を作るために使用される、薄い円盤です。
この薄い円盤の上に、小さな電子回路を作ります。電子回路とは、コンピューターやスマートフォンが動くために必要な道みたいなものです。この道を作ることで、コンピューターやスマートフォンが色々なことをできるようになります。
基本情報は、こちらの表のとおりです。
この記事を読めば、信越化学の株を買うにあたって、最低限知っておくべき信越化学の業績や財務状況を把握することができます。
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株価のパフォーマンス
信越化学の株価のパフォーマンスは、こちらの表のとおりです。
信越化学工業の株価は中長期的には非常に良好なパフォーマンスを示しており、特に過去5年間と全期間での成長が顕著です。
しかし、最近1か月ではわずかな下落を経験しています。
過去5年間の株価のチャートは、こちらの図のとおりです。株価が右肩上がりであり、株価が高値圏にあることが確認できます。
年間配当と配当利回りの推移
信越化学の年間配当は、44円から100円に増加しましたが、配当利回りは年によって変動し、1.34%から2.34%の間で推移しました。
総還元性向とは?
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があります。
総還元性向
信越化学の総還元性向は、2019年の56.4%から始まり、2020年に32.5%に低下し、その後は若干の変動を経て、2023年には57.9%まで上昇しました。
このデータから、総還元性向は年によって大きく変動する傾向があることがわかります。
なお、信越化学の株主還元については、35%前後の配当性向を中長期的な目安に安定的な配当に努めるとしています。
最新の決算
信越化学は、2024年1月26日に2024年第3四半期決算を発表しています。
24年3月期第3四半期累計(4-12月)の連結経常利益は前年同期比25.3%減の6157億円に減少しましたが、通期計画の7600億円に対する進捗率は81.0%に達し、5年平均の76.4%を上回りました。
直近3ヵ月の実績である10-12月期(3Q)の連結経常利益は前年同期比29.0%減の1882億円に減少し、売上営業利益率は前年同期の36.1%から28.3%に低下しました。
信越化学工業は、生活環境基盤材料部門、電子材料部門、機能材料部門、加工・商事・技術サービス部門という4つの事業部門を持っています。
部門別の売上高はこちらの表のとおりです。
生活環境部門が最も高い売上を記録しており、次いで電子部門が続いています。機能部門もかなりの売上を上げていますが、加工部門の売上は他の部門に比べて低いことがわかります。
部門別の売上高と前年同期比の成長率はこちらの表のとおりです。
信越化学工業の全ての主要部門が前年同期比で売上が減少していることがわかります。特に生活環境部門の減少が顕著です。
部門別の営業利益はこちらの表のとおりです。
このデータから、生活環境部門が最も大きな割合を占めており、次いで電子部門がかなり大きな割合を占めていることが分かります。これら二つの部門が全体の営業利益の約84%を占めており、会社の主要な利益源であることがわかります。
部門別の営業利益と前年同期比の成長率はこちらの表のとおりです。
生活環境部門の大幅な減少は、全体の営業利益に大きな影響を与えています。この部門は全体の営業利益の最大の部分を占めていたため、その減少は特に重要です。
主力市場の米国で住宅ローン金利が上昇したため新築着工件数が一服、上下水道管などに使う塩化ビニール樹脂の市況が悪化したことが一因と言われています。
一方で、電子部門の減少率は他の部門と比較して最も低く、この部門が相対的に安定していることを示しています。
最新の損益計算書(PL)
損益計算書を見ると、企業がどれくらい売上を上げたのか、経費をどれだけ使ったのか、その結果どれだけ利益が残ったのかが把握できます。
まず、売上高が約1.8兆円であり、これは信越化学が大規模な事業を展開していることを示しています。
販売費及び一般管理費は約1551億円で、これらは売上を発生させるためのコストです。
営業利益が約5595億円となっており、これは売上総利益からこれらのコストを差し引いたものです。営業利益は、売上高の約31%を占めています。
営業外収益は約611億円です。これらの収益は、通常の事業活動以外で得られたもので、会社の多角的な収益源を反映しています。対照的に、営業外費用は比較的少なく、約49億円です。
経常利益は約6157億円で、これは営業利益に、営業外収益と支出営業外費用を合わせて計算したものです。経常利益は、売上高の約34%を占めています。
全体的に見ると、信越化学の損益計算書は同社が大規模な売上を上げており、効率的な経営によって高い利益を確保していることを示しています。
最新の貸借対照表(BS)
貸借対照表を見ると、企業がどのような資産、負債、および純資産を、どれくらい持っているかなど、企業の財務状態が分かります。
まず流動資産が約3兆円となっており、これは資産5.1兆円の約60%を占めています。これは、同社が高い流動性を保有しており、短期的な負債や急な支出に対応する能力があることを示しています。
また、固定資産の構成に注目すると、有形固定資産合計が約1.8兆円であり、固定資産合計が2.1兆円です。
これは信越化学が有形の長期資産(機械装置や運搬具など、約9100億円、固定資産の約43%を占める)に大きく投資していることを示しています。これらの資産は、製造業において生産能力や効率性を支える重要な要素です。
また、流動負債が約4825億円、固定負債が約2147億円となっており、流動負債の方が固定負債よりも大きいことが分かります。このことは、短期的な負債の返済義務が比較的大きいことを示しています。
しかし、純資産合計が約4.4兆円となっており、信越化学の総資産の約86%を占めていることを考慮すると、これは大きな懸念事項ではないことが分かります。
経常利益とは?
経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移
2022年第4四半期から2023年第3四半期にかけて経常利益が大幅に増加したことが観察されます。
しかし、2023年第4四半期からは減少傾向に転じており、この減少は2024年第1四半期以降、特に顕著になっています。
また、2024年第4四半期の会社側ガイダンスによれば、前年同期比-29.0%のさらなる減少が見込まれています
経常利益率とは?
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
経常利益率
信越化学の四半期ごとの経常利益率を前年同期比で見ると、一貫して低下傾向にあります。
2023年第4四半期から2024年第3四半期にかけての利益率は、それぞれ前年同期の利益率に比べて減少しています。
会社の予測による2024年第4四半期も低下が見込まれています。
「利益」は意見、「キャッシュ」は現実
損益計算書(PL)に記載される売上高などの「利益」は、本来であれば来期に立つ売上を、今期の売上として計上することや架空の売上を立てることで、意図的に「利益」を過大に見せること、いわゆる粉飾が可能であり、明らかな粉飾でない限り、このような粉飾を見抜くことは難しいと言われています。
他方、キャッシュフロー計算書(CF)に記載される営業キャッシュフローなどの「キャッシュ」は、実際にどれだけの現金が出入りしたのかを表し、意図的な調整をする余地がありません。
そのため、会計の世界では、『「利益」は意見、「キャッシュ」は現実』、または『キャッシュフローは嘘をつかない』とされています。
また、損益計算書では黒字にも関わらず、倒産してしまう「黒字倒産」の原因は、売上が発生しても、その入金、現金収入が大幅に遅れ、企業が現金不足に陥ることで起こるとされています。
そのため、企業の「利益」だけでなく、企業の「キャッシュ」を確認することが重要です。
営業キャッシュフローマージンとは?
営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。
営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。
営業キャッシュフローマージン
それでは、信越化学の営業キャッシュフローマージンを見て行きたいと思いますが、続きの内容については、有料記事となります。
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続きの記事では、信越化学を、成長性、効率性、現金の生成能力、財務の安定性、割安性の5つの観点から総合的に評価しています。
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3Q決算発表、最強の半導体株、信越化学工業 最新の決算&財務諸表を解説 2024年1月
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