運用残高200兆円へ
三菱UFJは、2029年度までに運用資産残高を現在の2倍、すなわち200兆円に増加させる方針を明らかにしました。
この計画は、資産運用を同グループの新たな収益柱として強化するためのもので、顧客の資産を倍増させることを目標として運用力の向上を図ることを目的としています。
この動きの背景には、岸田政権が資産運用立国を目指しており、金融機関の運用力向上や新NISAを通じて個人資金を証券市場に呼び込むことを促進していることや、家計の金融資産が過去最高を更新していることがあります。
今回は、そんな三菱UFJの最新の決算内容や財務諸表を解説します。
この記事を読めば、三菱UFJの株を買うにあたって、最低限知っておくべき三菱UFJの現在の業績や財務状況を把握することができます。
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三菱UFJとは?
三菱UFJは、日本最大の金融グループの一つで、三菱東京UFJ銀行を中心に投資銀行、資産管理、信用カードなど多様なサービスを提供しています。
同社の強みは、大規模な資本と資産に支えられた財務基盤、幅広い金融サービスによる顧客ニーズへの対応、長い歴史と信頼性のあるブランド、そして世界各国に広がるネットワークです。
最新の決算
三菱UFJは2023年11月14日、2024年第2四半期決算を発表しています。
24年3月期第2四半期累計(4月から9月)の連結経常利益は前年同期比2.2倍の1兆2799億円に急拡大しました。
直近3ヵ月の実績である7月から9月期(2Q)の連結経常利益は前年同期比68.9%増の5543億円に拡大しました。
また、通期見通し1兆3000億円(前期比16.4%増)に対する進捗率は71%に達しましたが、通期計画は据え置きました。
亀澤宏規社長は会見で、通期見通しを据え置いた理由について、上期に比べて下期は、モルガンスタンレーの決算期変更や為替円安など一過性要因が剥落する可能性があることに加え、「円債、外債のポジション含み損があり、ポジション整理をやっていきたい」と述べました。
配当金の推移と配当利回り
2020年の6.20%から始まった配当利回りは、2023年まで徐々に低下し3.77%になりました。
一方、年間配当金額は2020年の25円から2023年に32円へと着実に増加し、2024年には41円と予想されています。
この配当利回りの減少は株価上昇によるもので、配当金額の増加は投資家にとってポジティブな動きです。
なお、2024年1月5日時点の配当利回りは、2.90%となっています。
総還元性向
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があることに留意する必要があります。
2019年に51.3%だった総還元性向は、2020年には70.5%まで上昇し、株主への還元が大幅に増加しました。
その後、2021年に41.3%に減少し、2022年にはわずかに回復して45.7%となりましたが、2023年には75.6%まで再び大きく増加しました。
売上高の推移
三菱UFJの2021年第3四半期から2024年第2四半期までの売上高は、1.35577兆円から2.891564兆円へと着実に増加しました。
この期間中、売上高の成長率は初期の3.6%から最高で76.5%に達し、特に2023年以降の売上の大幅な伸びが顕著です。
これらのデータは、三菱UFJがこの期間中に持続的な成長を遂げたことを示しています。
経常利益とは?
経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移
三菱UFJの2021年第3四半期から2024年第2四半期までの経常利益を見ると、2021年第3四半期の2,503.65億円から、2024年第2四半期には5,543.22億円へと増加しました。
この期間には一時的な経常利益の減少がありましたが、2024年第1四半期には7,255.85億円、前年同期比での成長率175.9%へと大幅に増加し、その後も高い成長率を維持しています。
このデータは、三菱UFJがこの期間中に営業利益の面で顕著な成長を遂げたことを示しています。
経常利益率
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
三菱UFJの経常利益率は、2022年第3四半期に高い29.02%を記録した後、2023年第4四半期まで低下傾向を示し、6.91%まで落ち込みました。
しかし、2024年第1四半期には大幅に回復し26.16%に達し、第2四半期には19.17%を記録しました。
これは、会社の収益力が周期的な変化を経て、特に2024年に入ってから再び強まったことを示しています。
アクルアールとは?
アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。
具体的には、アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。
アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー
純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。
他方、営業キャッシュフローは、企業が営業活動で生み出した現金の額です。
例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。
逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、質の低い利益を生み出している状況を示しています。
アクルアール
三菱UFJの年間アクルアールは、2019年に約-4.97兆円、2020年に約-8.04兆円、2021年には大幅に増加して約-34.29兆円となりました。
2022年には約-9.08兆円に減少し、2023年には約-13.20兆円となっています。
これらの数値は、2021年をピークに減少傾向を示していますが、依然として大規模なマイナスの値を維持しています。
なお、基本的な財務諸表の読み方やアクルアールなどの財務指標については、「たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室」という本で、初心者向けに分かりやすく解説されていますので、より詳しい内容を知りたい方はそちらをご覧ください。