2.2倍増の好業績も株価下落 - 市場が警戒する"成長鈍化"の影:2024年8月29日の日本株・米国株レポート
1. 市場概況
1.1 日本株市場
- 日経平均株価:38,362.53円 (▼9.23円、-0.02%)
- TOPIX:2,693.02 (▲0.90ポイント、+0.03%)
- 東証プライム市場売買代金:3兆8556億円(8営業日連続で4兆円下回る)
- 値上がり銘柄数:637、値下がり:944、横ばい:61
日本株市場は、エヌビディアの決算発表を受けて朝方から売り優勢でしたが、徐々に持ち直す展開となりました。日経平均の下げ幅は一時400円を超えましたが、押し目買いが入り、最終的にはほぼ横ばいで取引を終えました。
1.2 米国株式市場
- DJIA:41,091.42 (▼159.08、-0.39%)
- S&P 500:5,592.18 (▼33.62、-0.60%)
- NASDAQ:17,556.03 (▼198.79、-1.12%)
- RUSSELL 2000:2,188.64 (▼14.36、-0.65%)
- VIX:17.11 (▲1.68、+10.89%)
米国市場では、エヌビディアの決算を受けてテクノロジーセクターを中心に売りが優勢となりました。特にナスダック指数の下落が目立ちました。
2. 注目ニュース
2.1 エヌビディア決算発表
- 売上高:前年同期比2.2倍
- 最終利益:前年同期比2.7倍
- データセンター向け売上高:2.5倍
- 8~10月期の売上高見通しが一部の市場関係者の期待に届かず
エヌビディアの最近の決算は市場予想を上回るものでしたが、株価が下落した背景にはいくつかの要因があります。
売上高見通しと成長鈍化の懸念
エヌビディアは第3四半期の売上高を325億ドルと予想しましたが、一部の市場予想では379億ドルに達するとの見方もありました。このため、最も高い期待には届かず、成長鈍化への懸念が生じました。特に、前年同期比での成長率が125%から80%に減少する見通しが、投資家の不安を引き起こしました。
株価の急騰と調整
エヌビディアの株価は2023年に239%上昇し、2024年も2倍以上の値上がりを見せていました。この急激な上昇は、AIブームによる期待感から来ていましたが、今回の決算発表でその期待に対する調整が行われた可能性があります。
新チップ「ブラックウェル」の生産問題
エヌビディアは新しいAI向けチップ「ブラックウェル」の生産において問題を抱えており、製造の歩留まりを改善するために変更を加えているとしています。この生産遅延が成長を妨げる可能性があるとの懸念も株価下落に影響したと考えられます。
市場全体の影響
米国株式市場全体も下落しており、これはエヌビディアの決算発表に対する不安感だけでなく、最近の米国経済指標が強くインフレへの警戒感が高まっていることも影響しています。
これらの要因が組み合わさり、エヌビディアの株価は一時的に下落しました。しかし、中長期的にはAI市場の成長や新製品への期待から再び上昇する可能性もあります。
2.2 市場関連指標
- 米国債券市場:PCE価格指数発表を控え、10年国債利回りは3.8%台に低下
- 為替市場:円相場は1ドル144円台で推移。月末のリバランスの影響も
- 原油市場:WTI原油価格が4ヶ月ぶりに反発し、74ドル台に上昇
- 仮想通貨市場:ビットコインがエヌビディア決算を受けて下落し、59,000ドル台に
2.3 その他のニュース
- 野村証券の伊藤高志シニア・ストラテジストのコメント:日本株はマイナスで寄り付いた後、エヌビディアの決算などのイベント通過を好感して上昇に転じる場面もあると予測
3. セクター別動向
3.1 日本株市場
- 上昇セクター:海運、保険、医薬品、卸売
- 下落セクター:半導体関連(エヌビディア決算の影響)
3.2 米国株市場
- 上昇セクター:銀行・保険
- 下落セクター:半導体、テクノロジー全般
4. 個別銘柄ハイライト
4.1 日本株
- ドリコム (3793)
- 東証グロース市場
- 約定回数:39,264倍増
- 株価:918円 (-16.6%)
- 要因:「Disney STEP」発表
- ビーマップ (4316)
- 東証グロース市場
- 約定回数:12,459倍増
- 株価:546円 (+5.8%)
- 要因:製造業向けFAソリューション検討会設置
- KHC (1451)
- 東証スタンダード市場
- 約定回数:536倍増
- 株価:1,125円 (+12.5%)
- アドバンテスト
- エヌビディア決算の影響で一時下落後、持ち直し
- ウエストホールディングス
- 8月29日に1株あたり65円の配当金支払い予定
- 配当基準日:8月31日、権利落ち日:8月29日
- ソニーグループ
- 2024年度第1四半期の営業利益が前年同期比で大幅増加
- ゲーム部門の成長が顕著
- AI技術導入も進展中
4.2 米国株
- Super Micro Computer (SMCI): $539.28 ▼ -20%
- 年次財務報告書提出延期を発表
- 空売り業者による問題指摘レポートの影響
- Affirm (AFRM): $36.50 ▲ +15%
- 決算が予想上回る
- ガイダンス上方修正
- 経営陣が事業の黒字化に言及
- Salesforce (CRM): $269.25 ▲ +4%
- 売上とEPSが予想上回る
- 通期ガイダンス好調
- CFO退任発表
- CrowdStrike Holdings (CRWD): $255.23 ▼ -3%
- Q2業績は予想上回るも、通年ガイダンスが予想下回る
- NVIDIA (NVDA): $517.22 ▼ -6%
- 決算は好調だが、成長鈍化懸念で株価下落
- Blackwell製造工程も影響か
- バークシャー・ハザウェイ
- 時価総額1兆ドル突破
- 非ハイテク企業で初の1兆ドル到達
- アルカ・バイオファーマ
- 1株あたり1.613USDの特別配当金支払い予定
- 配当基準日:8月26日、権利落ち日:8月29日
5. 今後の展望
5.1 注目イベント
- 日本
- 東京都区部消費者物価指数発表
- 米国
- 個人消費支出(PCE)価格指数発表
- GDP発表
- 失業保険申請件数発表
- ボスティックFRB理事発言
- 消費者心理指標発表
5.2 注目銘柄(日本株)
- フィットイージー
- アミューズメント型フィットネスクラブ運営
- 全国158店舗、会員数12万人超
- 成長ペースに対し売られ過ぎの可能性
- タイミー
- スキマバイトマッチングサービス提供
- 登録ワーカー数770万人、登録事業所数25万拠点
- 時価総額1300億円超のIPO
- 住友林業
- 米国戸建て住宅事業好調
- 2024年12月期通期業績予想上方修正
- 米国住宅供給不足解消政策による恩恵期待
5.3 注目銘柄(米国株)
- NVIDIA (NVDA)
- AI向け次世代半導体「ブラックウェル」出荷拡大見通し
- 生成AI普及による関連セクター(電力、ヘルスケアなど)への波及効果
- Microsoft (MSFT)
- 生成AI普及によるクラウドサービス需要増加期待
- Amazon (AMZN)
- 電子商取引・クラウドコンピューティング分野での強み
- 生成AI技術導入による成長期待