日本株

NTT、KDDI、ソフトバンク 結局どれを買えばいいの?【株価指標&財務指標編】

1. 最新データが明かす通信大手3社の真の姿 

投資で生活を豊かに。こんにちは、きらくです。

前回の記事では、通信株の魅力とNTT、KDDI、ソフトバンクの事業戦略を解説し、投資戦略別に最適な銘柄をご提案しました。

https://note.com/observatory393/n/na6cd6149dcd6?sub_rt=share_h

本記事では、最新のデータを基に、NTT、KDDI、ソフトバンクの割安性、株主還元、効率性、安定性、キャッシュ生成能力、成長性を分析・評価し、各社の投資価値を客観的に評価します。

これは、まるで通信業界の巨人たちを健康診断にかけるようなものです。各社の財務状態は、それぞれの巨人の心拍数、血圧、コレステロール値のようなものです。

具体的な分析方法としては、PERなどの株価指標や営業利益率などの財務指標を比較します。

「難しそう」と感じる方もいるでしょう。しかし、心配はいりません。これらの指標を、投資初心者でも理解できるよう分かりやすく解説します。

このような分析により、通信大手3社の詳細な株価評価と財務評価を理解できます。

結果として、他の投資家達と差をつける深い洞察と客観的な評価に基づいた投資判断を行うことができるようになります。

他の投資家が見落としがちな重要な指標や情報を発見し、それを投資判断に活かすことで、群衆とは一線を画す投資家になれるでしょう。

「それって本当にできるのか」と疑問に思われるかもしれません。しかし、適切な分析方法を用いれば、十分に可能なのです。

それではよろしくお願いいたします。

2. 割安性指標 通信大手3社の割安度

(1) 予想PER

予想PERは、現在の株価を1株当たりの予想利益で割った値です。この指標は、企業の将来の成長性や現在の株価の割高・割安を判断するのに役立ちます。

では、具体的にどのように計算し、どう解釈すればいいのでしょうか?予想PERは、現在の株価を1株当たりの予想利益で割って求めます。「予想利益って何?」と思われるかもしれません。これは、企業が予測する来年度の利益のことです。

予想PERは、いわば企業の「未来価値メーター」のようなものです。高すぎれば「バブルの風船」のように膨らみすぎているかもしれませんし、低すぎれば「セール品の値札」のように見逃せない機会かもしれません。

それでは、NTT、KDDI、ソフトバンクの3社の過去3年間の予想PERの推移を分析してみましょう。

ア NTTの予想PER

2024年7月17日時点のNTTの予想PERは12.2倍となっています。

また、過去3年間の最大値は13倍でした。現在の数値はこれをやや下回っています。「じゃあ、今は買い時?」と思われるかもしれません。確かに、過去3年間の最高値と比べると若干割安です。

しかし、過去3年間の平均値は11.4倍です。現在の予想PERはこの平均をやや上回っています。「え?じゃあ高いの?」と混乱するかもしれません。そうなんです。平均と比べるとやや割高なのです。

さらに、過去3年間の最小値は9.4倍でした。現在はこれを大きく上回っています。「やっぱり高いじゃないか」と思われるでしょう。その通りです。最も安かった時期と比べるとかなり割高です。

総合的に見ると、NTTの現在の予想PERは過去3年間の範囲内にあります。極端な割高感や割安感はありませんが、平均よりやや高めです。

つまり、今すぐ飛びつくほどの大バーゲンではありませんが、かといって手が届かないほど高騰しているわけでもありません。

ィ KDDIの予想PER

2024年7月17日時点のKDDIの予想PERは13.7倍となっています。

まず、過去3年間の最大値は16.0倍でした。現在はこれを下回っています。「じゃあ、今が買いチャンス?」と思われるかもしれません。確かに、過去最高値と比べると割安です。

しかし、過去3年間の平均値は13.5倍で、現在の予想PERはこれとほぼ同じです。つまり、今の株価は「平均的」なのです。これは、KDDIの株価が今、ちょうど適正な水準にある可能性を示唆しています。

では、過去の最安値と比べるとどうでしょう。過去3年間の最小値は11.3倍でした。現在はこれを上回っています。「やっぱり今は高いの?」と思われるかもしれません。確かに、過去最安値と比べるとやや割高です。

でも、ここで重要なのは全体像です。KDDIの現在の予想PERは過去3年間の範囲内にあり、特に平均値とほぼ同じです。つまり、極端な割高感も割安感もありません。

これはKDDIの株価が現在、比較的安定した、適正な水準にある可能性を示しています。

ウ ソフトバンクの予想PER

ソフトバンクの予想PERについて詳しく見ていきましょう。
2024年7月17日時点でのソフトバンクの予想PERは19.3倍です。

現在の予想PER(19.3倍)は、過去3年間の最大値である22.4倍を下回っているものの、かなり高い水準にあることがわかります。このことから、現在の株価は過去3年間の最高値に近い、比較的割高な水準にあると言えるでしょう。

次に、過去3年間の平均値15.8倍と比べてみると、現在の予想PERはこれを大きく上回っています。実に約22%も高い水準なのです。

さらに、過去3年間の最小値12.6倍と比較すると、現在の予想PERはこれを大幅に上回っています。なんと、現在の予想PERは最小値の約1.5倍にも達しているのです。

総合的に見ると、ソフトバンクの現在の予想PERは過去3年間の範囲内にはありますが、その上限に近い高い水準にあります。「これって危険なのか」と心配になるかもしれません。

まるで、高性能のスポーツカーがサーキットを周回しているような状態です。スピードは出ていますが、コーナリングを誤れば一気に順位を落とす可能性もあるのです。

エ 3社の比較分析

3社の予想PERを比較分析すると、興味深い傾向が浮かび上がります。

まず注目すべきは、3社とも現在の予想PERが過去3年間の平均値を上回っているという点です。「なぜ3社とも現在の予想PERが過去3年間の平均値を上回っているのか」と疑問に思われるかもしれません。これは、通信業界全体に対する投資家の期待が高まっていることを示唆しています。

具体的には5Gの本格的な展開やデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速など、業界全体の成長要因が投資家の評価に反映されていると考えられます。

次に、各社の予想PERの水準と変動幅の違いにも注目する必要があります。ソフトバンクの予想PERが最も高く(19.3倍)、かつ変動幅も最大であることは、投資家がこの企業に対して最も高い成長期待を持つ一方で、不確実性も高いと判断していることを示唆しています。

例えるなら、ソフトバンクはハバネロチョコレートアイスのようです。甘さと辛さが絶妙に混ざり合い、一口食べるごとに味の変化を楽しめます。しかし、その強烈な刺激は誰もが好むわけではなく、ハードコアな味覚冒険家(リスク選好的な投資家)向けです。

つまり、ソフトバンクのより積極的な事業展開や新規分野への投資などが評価されつつも、その戦略に伴うリスクも認識されていると考えられます。

対照的に、NTTの予想PERが最も低く(12.2倍)、変動幅も最小であることは、この企業が安定した業績と堅実な成長を期待されていることを表しています。

「なぜNTTはこのような評価なのか」と思われるかもしれません。これは、NTTの規模や市場での地位、多角化された事業ポートフォリオなどが、この安定した評価につながっていると考えられます。

まるで、NTTはバニラアイスのようです。

安定した甘さと馴染みのある風味で、幅広い層に愛される定番中の定番です。味の変化は少ないものの、その一貫した品質と信頼性で多くのファンを獲得しています。

一方、KDDIは予想PER(13.7倍)と変動幅の両面で中間に位置しており、安定性と成長性のバランスが取れた企業として市場に評価されていることがうかがえます。

まるで、ストロベリーアイスクリームのように、甘さと酸味のバランスが絶妙で、多くの人に好まれるフレーバー(銘柄)です。投資家はそのバランスの良さに魅力を感じているのです。

すなわち、KDDIの堅実な財務体質と積極的な5G投資などが、この評価に反映されていると考えられます。

さらに、現在の予想PERと過去3年間の平均値との乖離を比較すると、ソフトバンクが最も大きく(現在値が平均値より22%高い)、次いでNTT(7%高い)、KDDIはほぼ平均値と同等です。

このような違いは、各社の最近の業績動向や将来の成長戦略に対する市場の評価の違いを反映していると考えられます。

これらの分析から、NTTが安定性重視の投資家に、ソフトバンクが成長性重視の投資家に、そしてKDDIがバランス重視の投資家にそれぞれ好まれている可能性が高いことが示唆されます。

(2) PBR

PBRは、企業の純資産に対して株価が何倍なのかを示す指標です。この指標は、企業の資産価値に対する市場評価を表し、企業の収益性や成長性を反映します。

これはSNSの投稿と「いいね」の数の関係に例えることができます。

企業の純資産は、あなたが投稿した写真の本来の質や内容を表し、株価は、その投稿に対してフォロワーたちがどれだけ「いいね」を押してくれるかを示します。

例えば、PBRが2倍の企業は、投稿の本質的な価値(純資産)に対して、2倍の「いいね!」が押される人気アカウントといえるでしょう。これは、その企業が秘密のフィルター効果(高い収益性)を持っているか、近い将来インフルエンサーになりそう(高い成長性)だと期待されているからかもしれません。

一方、PBRが1倍未満の企業は、素晴らしい写真を投稿しているのに「いいね」が伸び悩んでいる隠れた才能の原石のようなものです。フォロワーたちはまだその投稿の真価を理解していないか、あるいはハッシュタグの選び方や投稿のタイミングに問題があるのかもしれません。

このように、PBRは企業というSNSアカウントの「隠れた魅力」と「フォロワーの評価」のバランスを示す指標なのです。投資家は、この「いいね」の数を参考に、まだバズっていない隠れた逸材を探したり、人気アカウントの今後の成長を予測したりしているわけです。

それでは、NTT、KDDI、ソフトバンクの3社の過去3年間のPBRの推移を順に分析してみましょう。

ア NTTのPBR

2024年7月17日時点のNTTのPBRは1.36倍となっています。

まず、現在のPBR(1.36倍)は、過去3年間の最大値である1.75倍を大きく下回っています。

これは、現在の株価は過去3年間の最高値と比較すると、かなり割安な水準にあるということを意味します。まるで、豪華なディナーがセール価格で提供されているようなものです。

次に、過去3年間の平均値は1.56倍であり、現在のPBRはこの平均値をも下回っています。つまり、現在の株価は過去3年間の平均的な水準と比べても、やや割安な状態にあると解釈できます。

一方、過去3年間の最小値は1.24倍でした。現在のPBRはこの最小値をわずかに上回っています。このことから、現在の株価は過去3年間で最も割安だった時期と比べると、やや高い水準にはありますが、それほど大きな差はないと言えます。

しかし、総合的に見ると、NTTの現在のPBRは過去3年間の範囲内にあり、特に平均値を下回っていることから、やや割安な傾向にあると判断できます。

ィ KDDIのPBR

2024年7月17日時点のKDDIのPBRは1.8倍となっています。

まず、現在のPBR(1.8倍)は、過去3年間の最大値である2.05倍をやや下回っています。このことから、現在の株価は過去3年間の最高値と比較すると、若干割安な水準にあると言えるでしょう。

次に注目すべき点は、現在のPBRが過去3年間の平均値1.79倍とほぼ同等の水準にあることです。この事実は、KDDIの現在の株価が過去3年間の平均的な評価とほぼ一致していることを示しています。

一方で、過去3年間の最小値は1.5倍でした。現在のPBRはこの最小値を大きく上回っています。このことから、現在の株価は過去3年間で最も割安だった時期と比べると、かなり割高な水準にあると言えます。

総合的に見ると、KDDIの現在のPBRは過去3年間の範囲内にあり、特に平均値とほぼ同等であることから、極端な割高感や割安感は見られません。

ウ ソフトバンクのPBR

24年7月17日時点のソフトバンクのPBRは4.27倍となっています。

まず、現在のPBR(4.27倍)は、過去3年間の最大値である5.2倍をやや下回っています。このことから、現在の株価は過去3年間の最高値と比較すると、若干割安な水準にあると言えます。

次に注目すべき点は、現在のPBRが過去3年間の平均値4倍をわずかに上回っていることです。この事実は、ソフトバンクの現在の株価が過去3年間の平均的な評価をやや上回っていることを示しています。

また、過去3年間の最小値が3.16倍であるのに対し、現在のPBRはこの値を大きく上回っています。現在のPBRは最小値の約135%の水準にあります。このことから、現在の株価は過去3年間で最も割安だった時期と比べると、かなり割高な水準にあると言えます。

総合的に見ると、ソフトバンクの現在のPBRは過去3年間の範囲内にありますが、平均値をやや上回り、最小値からは大きく離れています。このことは、現在のソフトバンクの株価が比較的割高な水準にあることを示唆しています。

ただし、ここで重要なのは、PBRが他の2社(NTTとKDDI)と比較して著しく高いことです。

「なぜこんなに高いのか」と疑問に思う方もいるでしょう。

これは、投資家がソフトバンクの将来の成長性に高い期待を寄せていることを反映している可能性があります。

例えば、5G展開やデジタルトランスフォーメーション(DX)関連事業の成長、新規事業への参入など、将来の収益拡大への期待が現在の株価に織り込まれている可能性があります。

エ 3社の比較分析

NTT、KDDI、ソフトバンクの3社のPBR(株価純資産倍率)を比較分析すると、興味深い違いが見えてきます。

まず最も顕著な点として、ソフトバンクのPBRが他の2社を大きく上回っていることが挙げられます。

具体的には、ソフトバンクの現在のPBRが4.27倍であるのに対し、KDDIは1.8倍、NTTは1.36倍となっています。

これは、まるでNTTが実用的なファミリーカー、KDDIが高級セダン、ソフトバンクがハイエンドのスポーツカーのような差があるようです。

次に注目すべき点は、KDDIがNTTよりもやや高いPBRで推移していることです。KDDIのPBRが1.8倍であるのに対し、NTTは1.36倍となっており、この差は市場がKDDIの資産価値をより高く評価していることを示しています。

一方、NTTは3社の中で最も低いPBRとなっているため、純資産に対して比較的割安な評価を受けていると言えます。

NTTのPBRが1.36倍という水準は、同社の純資産価値に対して株価が比較的低く抑えられていることを示しています。

このことは、NTTの安定性や規模が評価される一方で、成長性に対する期待がやや低いことを反映している可能性があります。

さらに、各社のPBRの推移を見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。

ソフトバンクのPBRは過去3年間で大きく変動しており、それゆえ投資家の期待値の変動が大きいことがわかります。

例えるなら、最新のVRテクノロジーを使った斬新なアトラクションのようなものです。時には長蛇の列ができる大人気となり、時には期待はずれで閑古鳥が鳴くこともあります。乗客(投資家)は、スリル満点の体験を期待して並びますが、同時に酔う可能性も高いのです。

それに対して、KDDIとNTTのPBRの変動幅は比較的小さく、より安定した評価を受けていることが示唆されています。

まるで、KDDIのPBRはジェットコースターの人気のようです。スリルはありますが、安全性も確保されており、常に一定の人気を保っています。乗客は適度な興奮を楽しみつつ、安心して乗ることができます。

一方、NTTは、大観覧車のようなものです。ゆっくりと安定して回り、急な動きはありませんが、確実に全体を見渡せる景色を提供します。天候に左右されにくく、幅広い年齢層に支持されている、そんな存在です。

つまり、ソフトバンクは高成長・高リスク、KDDIは中程度の成長・中程度のリスク、NTTは安定成長・低リスクと、市場がそれぞれの企業を異なる特性を持つものとして評価している可能性があります。

(3) ネットキャッシュ比率

ネットキャッシュ比率とは、資産総額に対する資金の豊富さを計る尺度です。

これは、まるで企業の「財布の中身」を覗き見るようなものです。

ネットキャッシュとネットキャッシュ比率の定義については、長者番付1位となった伝説のサラリーマン投資家、清原達郎氏のネットキャッシュ比率の定義を採用しています。

ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
ネットキャッシュ比率=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)÷時価総額

ネットキャッシュ比率が1の企業については、「会社がただで買えるほど割安」であり、数字が大きいほど割安と判断できます。

また、清原氏曰く、ネットキャッシュ比率が1を超えている企業については、「ただで会社をもらった上で現金まで貰える」ほど割安だとされています。

より詳しい内容については、清原達郎氏の「わが投資術 市場は誰に微笑むか」をご覧ください。

通信3社のネットキャッシュ比率は下記のとおりです。

まず、3社全てのネットキャッシュ比率がマイナスであることが注目されます。

具体的には、NTTがマイナス0.71、KDDIがマイナス0.38、ソフトバンクがマイナス0.64となっています。つまり、3社とも負債が流動資産と投資有価証券の70%の合計を上回っていることを意味します。

この中で、KDDIが最も高い(マイナス幅が小さい)ネットキャッシュ比率を示しています。

これは何を意味するのでしょうか。

これは、KDDIが3社の中で最も財務的に健全であり、負債と資産のバランスが比較的良好であることを示しています。

一方、NTTとソフトバンクはより低い(マイナス幅が大きい)ネットキャッシュ比率を示しています。特にNTTは3社の中で最も低い値となっており、これは同社の負債が相対的に大きいことを示唆しています。

何故、NTTのネットキャッシュ比率は低いのかと疑問に思った方もいるかもしれません。

実は、通信業界は設備投資が大きく、負債比率が高くなる傾向があります。つまり、NTTの将来の成長のための投資が現在の数値に影響を与えている可能性があるのです。

ソフトバンクについては、NTTとKDDIの中間的な位置にありますが、それでも依然としてマイナスの値が大きいことから、財務面での課題があることが示唆されます。

しかしながら、これらの数値を解釈する際には慎重になる必要があります。なぜなら、先ほど申し上げたように通信業界は設備投資が大きく、負債比率が高くなる傾向がありますが、それが必ずしも企業の価値や将来性を損なうものではないからです。むしろ、積極的な投資が将来の成長につながる可能性もあります。

総合的に見ると、KDDIが最も財務的に健全であり、NTTとソフトバンクには改善の余地があると言えるでしょう。

(4) 総合的な割安性の評価

NTT、KDDI、ソフトバンクの3社について、予想PER、PBR、ネットキャッシュ比率に基づいて総合的な割安性を評価し、〇、△、✖の三段階で表します。

NTTの割安性の評価

NTTは、予想PERとPBRが3社の中で最低で、割安感を示唆しています。

なぜNTTの株価は割安なのでしょうか?

その理由の一つとして、ネットキャッシュ比率が3社の中で最低であることが挙げられます。これは、NTTの財務リスクが比較的高い可能性を示しています。

NTTは、古い型の高級セダンのようなものです。購入価格(予想PERとPBR)は3台の中で最も安く、一見お得に見えます。しかし、燃費(ネットキャッシュ比率)が最も悪いため、長期的には維持費がかかる可能性があります。つまり、初期投資は低いものの、将来的なコストに注意が必要な車と言えるでしょう。

従って、予想PER・PBRの観点からは、NTTが最も割安と判断できるものの、ネットキャッシュ比率が3社の中で最も低いため、NTTは△としました。

KDDIの割安性の評価

一方、KDDIは、3つの指標すべてにおいて中間的な位置にあります。

これは、KDDIが極端な強みや弱みを持たない、バランスの取れた企業であることを示唆しています。

特に、ネットキャッシュ比率が最も0に近いことは、財務面での安定性を示しています。そのため、全体として、バランスの取れた評価を受けていると言えます。

KDDIは、バランスの取れた中級車のようです。価格(予想PERとPBR)は中程度で、燃費(ネットキャッシュ比率)も最も効率的です。この車は、初期投資と維持費のバランスが取れており、多くのドライバーにとって最も実用的な選択肢かもしれません。

従って、財務安定性を重視する場合、KDDIが最も魅力的に見えるため、KDDIは〇としました。

ソフトバンクの割安性の評価

ソフトバンクの財務指標を見ると、興味深い特徴が浮かび上がってきます。「予想PERとPBRが最も高いのは悪いことなのでは?と思われた方もいるでしょう。

実は、これは市場がソフトバンクに高い成長性を期待していることを示しています。つまり、投資家たちはソフトバンクの将来に大きな可能性を見出しているのです。

しかし、高い成長期待は良いことばかりではありません。

なぜなら、この高い数値は同時に割高感も示唆しているからです。つまり、現在の株価が実際の企業価値よりも高く評価されている可能性があるのです。

なお、ネットキャッシュ比率は3社の中では、中間的な位置にあります。

ソフトバンクは、最新型のスポーツカーに例えられます。価格(予想PERとPBR)は3台の中で最も高く、高性能で将来性があることを示唆しています。しかし、その高い価格は、現時点では割高感があることも意味します。燃費(ネットキャッシュ比率)は中程度ですが、高い初期投資が必要なため、慎重な検討が必要でしょう。

従って、成長性への期待が高いのはソフトバンクですが、同時に割高感も強いため、✖としました。

3. 株主還元指標  通信株の株主還元力

(1) 株主還元政策

NTT、KDDI、ソフトバンクは、それぞれ特徴的な株主還元政策を展開しています。

まず、NTTは株主還元を最重要課題の一つと位置付け、継続的な増配と機動的な自己株式取得を基本方針としています。

同社は14期連続の増配を実現しており、2024年度の年間配当予想は1株当たり5.2円と、前年度から0.1円の増加を見込んでいます。

特筆すべきは、2003年度の配当額0.5円から2023年度の配当額5.1円へ10倍以上に配当額が増加している点です。

さらに、NTTは長期保有の株主の資産形成を重視しており、企業価値の向上と株主還元の充実を通じて、魅力ある投資先であり続けることを目指しています。

例えるなら、NTTは、老舗の高級日本料理店のようです。毎年少しずつメニューを改良し、値段を少しずつ上げながらも(14期連続増配)、長年の常連客(長期保有株主)を大切にしています。

一方、KDDIはNTTよりも長期にわたる増配実績を持っています。具体的には、2002年度から22期連続の増配を達成しており、「配当性向40%超」を目標に掲げています。

同社の特徴は、高い配当性向と利益成長に伴うEPS(1株当たり利益)の成長を両立させることで、持続的な増配を実現しようとしている点です。このような方針は、株主還元に対する積極的な姿勢を示すものといえます。

KDDIは、人気のファミリーレストランのようです。22年間連続で料理の分量を増やし続け(22期連続増配)、「お客様の満足度40%以上」(配当性向40%超)を目標にしています。メニューの種類(EPS)を増やしながらも、各料理の量(配当)も増やすという、強力な戦略を取っています。

そして、ソフトバンクは、年2回(中間・期末)の配当を基本方針としつつ、業績動向、財政状態、キャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案して配当を決定しています。

2025年3月期の年間配当予想は1株当たり86円(中間43円、期末43円)となっています。

ソフトバンクの特徴としては、5Gのさらなる高度化のための設備投資や新規事業への投資と、株主還元のバランスを重視している点が挙げられます。

つまり、同社は通信事業と新規事業での成長を続けながら、企業価値の向上と安定的な利益還元の両立を目指しているのです。

例えるなら、ソフトバンクは、最新のトレンドを取り入れた創作料理レストランのようなものです。年に2回、春と秋にメニューを大幅に変更し(年2回の配当)、客の反応(業績動向)やその時々の食材の状況(財政状態)を見ながら柔軟に対応しています。

「では、どの会社の株主還元政策が一番いいの?」と迷われる方もいるでしょう。実は、これには正解がありません。

そのため、投資家の皆さんは自身の投資スタイルや期待するリターンに合わせて選択する必要があります。

例えば、長期保有を考えている方にはNTT、安定的な高配当を求める方にはKDDI、成長と配当のバランスを重視する方にはソフトバンクが適しているかもしれません。

(2) 配当利回りの推移

まず、NTTの配当利回りは2020年3月期の3.69%から2024年3月期には2.83%まで低下しましたが、2025年3月期には3.23%に回復する見込みです。

NTTはりんごの木のようです。2020年には豊作で3.69%の実(配当利回り)をつけましたが、その後少し不作の時期があり2.83%まで収穫量が減りました。しかし、来年(2025年3月期)には3.23%まで回復する見込みで、再び豊作に向かっています。りんごの木は年によって収穫量が変動しますが、長期的には安定した実りを期待できる樹木です。

一方、KDDIの配当利回りは3.12%から3.61%の範囲で推移しており、比較的安定しています。

KDDIはオレンジの木に例えられます。3.12%から3.61%の範囲で実(配当利回り)をつけ続けており、年間を通じて安定した収穫量を維持しています。オレンジの木は気候の変化にも強く、コンスタントに実をつける特性があります。投資家にとっては、予測しやすく安定した収入源となるでしょう。

これに対し、ソフトバンクは3社中最も高い配当利回りを維持していますが、6.18%から4.30%へと低下傾向にあります。

ソフトバンクは、熱帯のマンゴーの木のようです。3社の中で最も豊作で、6.18%という高い収穫量(配当利回り)を記録しました。しかし、徐々に収穫量が減少し、現在は4.30%となっています。マンゴーの木は非常に豊かな実りをもたらしますが、気候や栽培条件によって収穫量が大きく変動する特性があります。高い収益を期待できる一方で、変動リスクも高いと言えるでしょう。

(3) 年間配当金の推移

次に、年間配当金の推移を見てみましょう。NTTの年間配当金は着実に増加しており、2020年3月期の3.8円から2025年3月期予想では5.2円まで上昇しています。

例えるなら、NTTの年間配当金は、まるで健康的な竹林のように着実に成長しています。

同様に、KDDIも増配を続けており、115円から145円へと上昇しています。

例えるなら、KDDIの配当金は肥沃な土地に植えられた果樹のようです。115円という実りある果実から、145円という更に大きく甘い果実へと成長しています。

しかしながら、ソフトバンクは対照的に、2021年3月期に86円に増配して以降、同水準を維持しています。

ソフトバンクの配当金は対照的に、成熟した常緑樹のような安定性を示しています。2021年3月期に86円という立派な葉を茂らせて以降、その豊かな緑を保ち続けています。突然の成長はありませんが、四季を通じて変わらぬ姿を保つ常緑樹のように、安定した配当を維持しているのです。

(4) 増配率の分析

さらに、増配率を分析すると、NTTは毎年増配を続けており、増配率は4%から11%の範囲で推移しています。

これはまるで、毎年少しずつ成長する盆栽のようです。丁寧に手入れされ、着実に枝を伸ばしていく姿が目に浮かびます。

また、KDDIも安定した増配を行っており、4%から8%の増配率を維持しています。

これは、安定した歩幅でジョギングを続けるランナーのようです。ペースを守りながら、確実に前進を続けています。

一方で、ソフトバンクは2021年3月期に1%の増配を行った後、配当金を据え置いています。

これは、マラソンでいうところの、一度だけスパートをかけた後、ペースを落として持久走に切り替えたランナーのようです。ソフトバンクは、一度のスパートで勢いを増した後、今はエネルギーを蓄え、次のチャンスを狙っているのです。

(5) 株主優待制度

NTT、KDDI、ソフトバンクの株主優待制度を比較・分析します。

ここでは、各社の優待内容や条件に着目し、投資判断の参考となる情報を提供していきます。

ア NTTの株主優待制度

NTTの株主優待制度は、長期保有を奨励する独特の設計となっています。

まず、NTTは株式の保有期間に応じてdポイントを進呈する制度を採用しています。この制度の基準日は2024年3月31日に設定されており、100株以上を保有する株主が対象となります。

優待内容をより詳しく見ていくと、保有期間によって付与されるポイント数が異なることがわかります。例えば、2年以上3年未満保有の株主には1500ポイントが進呈されます。さらに長期の保有者に対しては、より多くのポイントが付与されます。具体的には、5年以上6年未満保有の株主には3000ポイントが進呈されます。

このような構造は、NTTが長期的な株主を重視していることを明確に示しています。なぜなら、保有期間が長くなるほどポイント数が増加するため、株主は長期保有のインセンティブを得ることになるからです。これは、安定的な株主構成を維持したいというNTTの意図を反映していると考えられます。

また、dポイントは、NTTグループのサービスだけでなく、様々な提携店舗でも利用可能な汎用性の高いポイントです。そのため、この優待は株主にとって実質的な価値があり、魅力的な特典と言えるでしょう。

ただし、この優待制度には注意点もあります。最大のポイント獲得には5年以上の長期保有が必要となるため、短期的な投資を考えている投資家にとっては、優待の恩恵を十分に受けられない可能性があります。

総じて、NTTの株主優待制度は長期保有を奨励する特徴的な設計となっており、安定的な株主構成の維持を目指していることがうかがえます。

まさに、時間をかけて丁寧に育てられた高級ワインのように、長期的な視点で価値を高めていく戦略と言えるでしょう。

ィ KDDIの株主優待制度

KDDIの株主優待制度は、多様なサービスから選択できる柔軟な設計となっており、株主に魅力的な特典を提供しています。

まず、この優待制度の対象となる株主は、1年以上かつ100株以上を保有している方々です。この条件は、ある程度の長期保有を促しつつも、NTTと比較するとより早い段階から優待を受けられるという特徴があります。

次に、優待内容をより詳しく見ていくと、保有期間によって特典の価値が異なることがわかります。具体的には、1年以上5年未満保有の株主には2,000円相当の特典が提供されます。さらに、5年以上の長期保有者に対しては、3,000円相当の特典が用意されています。このような構造は、KDDIが長期的な株主を重視していることを示していますが、同時に比較的短期の保有者にも一定の還元を行っているという点で、バランスの取れた設計と言えるでしょう。

また、KDDIの優待制度の大きな特徴として、選択可能な特典の多様性が挙げられます。「でも、本当に使えるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。実は、旅行サービスや宅配サービスの利用券など、日常生活で活用できる特典が多く用意されているのです。

この多様性は、まるで自分の好きな料理を選べるビュッフェのように、株主一人一人のニーズや生活スタイルに合わせた利用を可能にし、優待の実質的な価値を高めていると言えるでしょう。

KDDIの優待制度はNTTと同様に長期保有を促す設計ですが、いくつかの点でNTTとは異なる特徴を持っています。

NTTが高級ワインセラーだとすれば、KDDIは高級ビュッフェレストランと言えるでしょう。

前述のように、NTTと比べてより早い段階(1年以上)から優待が始まります。これにより、比較的短期の投資家にとっても魅力的な制度となっています。さらに、選択肢が多様であることは、KDDIの優待制度の大きな強みです。そのため、株主は自分の生活や興味に合わせて特典を選択でき、優待の実用性と満足度が高まる可能性があります。

ただし、この優待制度にも注意点はあります。最大の特典を得るには5年以上の長期保有が必要となるため、短期的な投資を考えている投資家にとっては、優待の恩恵を十分に受けられない可能性があります。

総じて、KDDIの株主優待制度は、長期保有を奨励しつつも柔軟性のある設計となっており、幅広い株主層に対して魅力的な特典を提供していると言えます。

ウ ソフトバンクの株主優待制度

ソフトバンクの株主優待制度は、KDDIやNTTと比較してシンプルな設計を採用しています。

まず、優待制度の対象となる株主は、1年以上かつ100株以上を保有している方々です。この条件は、KDDIと同様に比較的早い段階から優待を受けられるという特徴があります。

次に、優待内容については、非常にシンプルな設計となっています。具体的には、対象となる株主全員に一律でPayPayポイント1,000ポイントが付与されます。

「え?保有期間で差がないの?」と驚かれるかもしれません。その通りです。長期保有者も短期保有者も同じ特典を受けるのです。

この点が、KDDIやNTTの制度と大きく異なる特徴です。保有期間による優待内容の差別化がないため、長期保有者と短期保有者が同じ特典を受けることになります。

また、この優待制度の初回適用は2025年3月31日から2026年3月31日までとなっています。つまり、この制度はまだ開始されておらず、今後の実施に向けて準備が進められている段階だと言えます。

ソフトバンクの優待制度の特徴として、シンプルさ、PayPayポイントの活用、早期からの適用が挙げられます。まず、シンプルさについては、保有期間に関わらず一律の特典を提供することで、制度の理解と運用が簡単になっています。

シンプルさは、まさに定食屋のメニューのようです。複雑な選択肢はありませんが、誰もが迷わず注文できる分かりやすさがあります。

次に、PayPayポイントの活用は、ソフトバンクグループの重要なサービスであるPayPayのポイントを使用することで、グループ全体の利用促進につながる可能性があります。さらに、早期からの適用については、1年以上の保有で対象となるため、比較的短期の投資家にも魅力的な制度となっています。

しかしながら、この制度にも注意点があります。まず、優待内容が固定されているため、長期保有のインセンティブが他の2社と比べて弱い可能性があります。また、1,000ポイントという金額は、KDDIやNTTの優待と比較すると若干少ない印象を受けます。

これは、シンプルなサラダが時には物足りなく感じることに似ています。

総じて、ソフトバンクの株主優待制度は、シンプルさと分かりやすさを重視した設計となっています。

この制度は、幅広い株主層に対して平等に特典を提供する一方で、長期保有へのインセンティブは比較的弱いと言えるでしょう。

エ 3社の比較分析

これら3社の優待制度を比較すると、以下のような特徴が浮かび上がります。

優待開始時期

まず、優待開始時期について比較すると、KDDIとソフトバンクは1年以上の株式保有で優待が開始されるのに対し、NTTは2年以上の保有を条件としています。

まるで3つの異なる料理店のポイントカードのようです。KDDIとソフトバンクは「10回来店でデザート無料」というサービスを提供しているのに対し、NTTは「20回来店でメイン料理無料」というより長期的な特典を用意しているようなものです。

このことから、KDDIとソフトバンクの方が、比較的短期の投資家にも優待の恩恵を提供しているといえます。一方、NTTはより長期的な株主を重視する姿勢が見られます。

長期保有へのインセンティブ

次に、長期保有へのインセンティブについて見てみると、NTTとKDDIは保有期間に応じて優待内容が充実する設計となっています。これは、株主により長く株式を保有してもらうための工夫と言えるでしょう。

対照的に、ソフトバンクは保有期間に関わらず一律の優待内容を提供しています。このアプローチは、シンプルさを重視する一方で、長期保有を特に促進する仕組みにはなっていません。

優待の多様性

さらに、優待の多様性という観点では、KDDIが最も選択肢が豊富です。株主は自分の好みやニーズに合わせて優待内容を選ぶことができます。これは、より多くの株主の満足度を高める可能性がある一方で、制度の運営コストは高くなる可能性があります。

他方、NTTとソフトバンクは特定のポイントサービスに限定しています。これはシンプルで運営しやすい反面、株主の選択肢は限られています。

経済的価値

また、経済的価値を比較すると、KDDIが最大3,000円相当(5年以上保有の場合)、NTTが最大3,000ポイント(5年以上6年未満保有の場合)と、長期保有者に対して比較的高い価値を提供しています。

一方、ソフトバンクは1,000ポイントで固定されており、経済的価値としては3社の中で最も低くなっています。

これらの比較から、各社が異なる戦略で株主優待制度を設計していることがわかります。KDDIは柔軟性と長期保有へのインセンティブのバランスを取っており、NTTは長期保有を強く促進する設計となっています。

それに対し、ソフトバンクはシンプルさを重視しつつ、比較的早い段階から優待を提供するアプローチを取っています。

まるで3つの異なる恋愛スタイルのようです。KDDIは「デートを重ねるごとに関係が深まる」タイプ、NTTは「長い付き合いを経て結婚を考える」タイプ、そしてソフトバンクは「最初からオープンでカジュアルな関係」を求めるタイプと言えるでしょう。

オ 投資判断のポイント

これらの分析を踏まえると、投資判断に関して以下のような示唆が得られます。

  • 短期的視点からは、KDDIとソフトバンクは1年から優待が始まるため、比較的早く優待を享受することが可能です。
  • 長期的視点からは、NTTとKDDIは長期保有ほど優待が充実するため、長期投資家に有利と判断できます。
  • 利用頻度の観点からは、各社のサービスをよく利用する投資家は、それぞれの優待をより有効に活用できると言えます。

(6) 株主還元の総合評価

NTT、KDDI、ソフトバンクの株主還元策を総合的に評価し、〇、△、✖の三段階で表します。この評価は、配当政策、配当利回り、配当成長性、株主優待制度を考慮に入れて行います。

NTTの評価は〇としました。

NTTは株主還元を最重要課題の一つと位置付け、14期連続の増配を実現しています。

2003年度と比較すると現在の配当額は10倍以上に拡大しており、長期的な株主価値向上に重点を置いています。

配当利回りは業界平均程度ですが、毎年の増配率が4%から11%と高く、安定した配当成長を示しています。

株主優待制度も長期保有を促す設計となっており、2年以上の保有で最大3,000ポイントを付与しています。

総合的に見て、NTTの株主還元策は充実していると評価できます。

KDDIの評価は〇としました。

KDDIは2002年度から22期連続の増配を達成しており、「配当性向40%超」を目標に掲げています。

配当利回りは3.12%から3.61%の範囲で安定しており、増配率も4%から8%を維持しています。

また、株主優待制度は3社の中で最も充実しており、1年以上の保有で最大3000円相当の特典を提供し、選択肢も多様です。

KDDIの特徴は、高い配当性向と利益成長に伴うEPSの成長を両立させることで、持続的な増配を実現しようとしている点です。

このような方針は、株主還元に対する積極的な姿勢を示すものといえ、総合的に高く評価できます。

ソフトバンクは△と評価しました。

ソフトバンクは、年2回(中間・期末)の配当を基本方針としつつ、業績動向や財政状態などを総合的に勘案して配当を決定しています。

配当利回りは3社中最も高く、4.30%から6.18%の範囲で推移していますが、低下傾向にあります。

配当金は2021年3月期に86円に増配して以降、同水準を維持しており、増配による株主還元の強化は見られません。

株主優待制度はシンプルで、1年以上の保有で1000ポイントを固定で付与しています。

ソフトバンクの特徴は、5Gの設備投資や新規事業への投資と株主還元のバランスを重視している点です。

高配当利回りは評価できますが、配当成長性や株主優待の充実度では他の2社に劣ります。

総合的に見ると、現状維持的な株主還元策であり、改善の余地があると言えるでしょう。

4. 効率性指標 通信大手3社の効率性

(1) 通信3社の効率性

NTTの効率性

NTTの効率性指標は3社の中で中庸な位置にあります。まず、営業利益率は直近の2024年3月期で14.38%であり、過去5年間で13から14%台を維持しています。

同様に、経常利益率も13から14%台で安定しています。一方、当期利益率は9.57%と、KDDIには及ばないものの、ソフトバンクを上回っています。

さらに、ROEは13.90%、ROAは4.66%と、安定した水準を保っています。このように、NTTは全体的に安定した経営指標を示しています。

NTTの経営は、例えるなら荒波にも動じない大型客船のようです。急激な変化はありませんが、着実に目的地に向かって進んでいるのです。

KDDIの効率性

KDDIは3社の中で最も高い効率性を示しています。特に、営業利益率は直近で16.71%、過去5年間では18から19%台を維持しており、3社中最高です。

また、経常利益率も17.25%と高水準です。加えて、当期利益率は11.09%で、これも3社中トップです。

ROEに関しては12.30%とソフトバンクには及びませんが、ROAは4.89%と3社中最高です。

したがって、KDDIは総合的に見て、最も効率的な経営を行っていると言えます。

ソフトバンクの効率性

ソフトバンクは特にROEで際立っています。実際、直近のROEは21.25%と、3社中、ダントツでトップとなっています。

しかしながら、営業利益率は14.40%、経常利益率は13.25%とKDDIには及びませんが、NTTと同程度の水準です。

また、当期利益率は8.04%と3社中最も低くなっています。同様に、ROAも3.24%と3社中最低ですが、これは総資産の規模が影響している可能性があります。

(2) 総合的な効率性の評価

NTT、KDDI、ソフトバンクの効率性を総合的に評価し、〇、△、✖の三段階で表します。この評価は、営業利益率、経常利益率、当期利益率、ROE、ROAを考慮に入れて行います。

NTTは△と評価しました。

その理由として、営業利益率、経常利益率、当期利益率、ROE、ROAのすべての指標において、安定した中庸な位置を維持していることが挙げられます。

大きな変動がなく安定した経営を示しており、総合的に見て平均的な効率性を示しています。

例えるなら、NTTは、長年愛されている老舗の定食屋さんのようです。メニューは特別派手ではありませんが、どの料理も安定した味を提供しています。

営業利益率、経常利益率、当期利益率、ROE、ROAという5つの「定食メニュー」すべてにおいて、バランスの取れた味を出しています。

まとめると、NTTは全ての指標で安定した中庸な位置を維持しており、堅実な経営を行っていると言えます。

KDDIは〇と評価しました。

KDDIは営業利益率、経常利益率、当期利益率で3社中トップの数値を示し、ROAも3社中最高となっています。

ROEはやや低めですが、全体的に高い効率性を示しており、総合的に見て最も効率的な経営を行っていると言えます。

例えるなら、KDDIは、ミシュランの星を獲得した高級レストランのようです。営業利益率、経常利益率、当期利益率、ROAという4つの「看板料理」で最高の評価を得ています。ROEという「デザート」はやや控えめですが、全体的な「味」のバランスと質の高さで、他を圧倒しています。

まとめると、KDDIが3社の中で総合的に高い効率性を示しており、〇と評価しました。特に利益率関連の指標で優れた数値を示しています。

ソフトバンクは△と評価しました。

ソフトバンクの特徴は、ROEが突出して高い(21.25%)ことです。しかし、当期利益率とROAは3社中最低となっています。

他方で、営業利益率と経常利益率はNTTと同程度ですが、指標間のばらつきが大きく、効率性に課題がある面も見られます。

例えるなら、ソフトバンクは、実験的な料理を提供するモダンなフュージョンレストランのようです。ROEという「斬新な一品」で驚きと称賛を集めていますが、当期利益率とROAという「サイドディッシュ」はやや物足りない評価です。

まとめると、ソフトバンクはROEで突出した数値を示していますが、他の指標では改善の余地があり、効率性にばらつきが見られます。

5. 安定性指標 通信大手3社の財務安定性

(1) 通信業界の自己資本比率の特徴

自己資本比率は企業の財務健全性を示す重要な指標の一つです。具体的には、この比率は総資産に対する自己資本の割合を表します。

一般的に、高い自己資本比率は企業の財務的な安定性と長期的な支払能力の高さを示唆します。

これは、企業が財務的に強固な城壁を築いているようなものです。自

自己資本比率が高いほど、その城壁は厚く、外部からの攻撃(経済的な困難)に耐えられる能力が高くなります。

しかしながら、通信業界は、大規模な設備投資が必要なため、他業種と比較して自己資本比率が低めになる傾向があります。

しかし、その投資が将来的に多くの顧客を引き付け、長期的な収益をもたらすのです。

(2) 3社の自己資本比率比較

それでは、3社の自己資本比率と財務状況を比較してみましょう。

自己資本比率

NTTは36.8%、KDDIは41.0%、ソフトバンクは25.4%の自己資本比率を示しています。

NTTの財務状況

まず、NTTの財務状況を見てみると、総資産は29兆6042億円、純資産は10兆8931億円、固定資産比率は71.9%となっています。

KDDIの財務状況

次に、KDDIの状況は、総資産が14兆1461億円、純資産が5兆7972億円、固定資産比率が69.9%です。

ソフトバンクの財務状況

最後に、ソフトバンクのデータを見てみると、総資産は15兆5219億円、純資産は3兆9356億円、固定資産比率は66.1%となっています。

これらのデータを分析すると、まず目に付くのはKDDIが最も高い自己資本比率を示していることです。このことから、KDDIは3社の中で財務的な安定性が最も高いと言えるでしょう。

KDDIは、まるで堅固な城壁を持つ要塞のようです。高い自己資本という厚い城壁が、経済の嵐から企業を守っているのです。

一方、NTTは2番目に高い自己資本比率を維持しています。また、総資産規模が3社の中で最も大きいことから、安定した財務基盤を持っていることがわかります。

NTTは、広大な領土を持つ大国のようなものです。豊富な資産という広い国土が、企業の安定性と成長の可能性を支えています。

他方で、ソフトバンクの自己資本比率は3社の中で最も低くなっています。これは、より積極的な財務レバレッジ戦略を採用している可能性を示唆しています。

ソフトバンクは、高性能のレーシングカーのようなものかもしれません。軽量で機動性が高い一方で、急カーブでは慎重な運転が必要です。

さらに、固定資産比率に注目すると、3社とも60%以上と高い水準にあることがわかります。これは通信業界特有の大規模な設備投資の必要性を反映しているといえるでしょう。

3社は、それぞれが巨大な宇宙ステーションを運営しているようなものです。高価な設備(固定資産)なしでは、宇宙空間(通信市場)で事業を展開することはできません。

特筆すべきは、NTTの固定資産比率が最も高いことです。これは、大規模なインフラ投資を行っていることを示唆しています。

NTTは、最も大きな宇宙ステーションを持つ宇宙開発企業のようです。巨大な設備投資は、長期的な競争力につながる可能性があります。

一方で、ソフトバンクは相対的に低い固定資産比率を示していますが、これは異なる事業戦略や資産運用方針を反映している可能性があります。

ソフトバンクは、より小型で機動性の高い宇宙船隊を運用しているのかもしれません。状況に応じて迅速に方向転換できる柔軟性を持っているのです。

総じて、3社はそれぞれ異なる財務戦略を取っているものの、いずれも通信業界の特徴を反映した財務構造を持っていることがわかります。

(3) 固定長期適合率

固定長期適合率は、企業の財務安定性を評価する重要な指標の一つです。この比率は、固定資産を純資産と固定負債の合計で割って算出されます。

具体的には、計算式は以下の通りです:
(固定資産 ÷ (純資産 + 固定負債)) × 100

この指標は、長期的な資金(自己資本と固定負債)で固定資産をどの程度賄っているかを示します。

一般的に、100%以下が望ましいとされています。なぜなら、100%以下の固定長期適合率は固定資産を長期的な資金で全て賄えていることを意味し、財務の安定性を示すためです。

言い換えれば、「家」(固定資産)を「長期ローン」(固定負債)と「貯金」(純資産)でどれだけカバーできているかを表しているのです。

一般的に、この固定長期適合率は100%以下が望ましいとされています。なぜなら、これは固定資産を長期的な資金で全て賄えていることを意味し、財務の安定性を示すためです。これは、家の価値全体を長期ローンと貯金で完全にカバーできている状態に例えることができます。

他方で固定長期適合率が100%を超える場合、それは短期的な資金(短期借入金など)で固定資産の一部を賄っていることを意味し、財務リスクが高まる可能性があります。これは、家のローンの一部を短期のクレジットカード借金で支払っているようなものです。そのため、100%以下を保つことが財務の健全性を示す一つの目安となるのです。

それでは、NTT、KDDI、ソフトバンクの3社の固定長期適合率を比較してみましょう。

NTTは102.5%、KDDIは121%、そしてソフトバンクは121.5%となっています。

まず、NTTの固定長期適合率は102.5%と、3社の中で最も低く、100%に最も近い値となっています。このことから、NTTが他の2社と比較して、より安定的な財務構造を持っていることが示唆されます。

NTTは、まるで堅固な城を建てた領主のようです。城(固定資産)の建設費用のほとんどを、自身の財産(純資産)と長期的な同盟(固定負債)でカバーしており、わずかな部分だけを短期的な借入(流動負債)に頼っています。

一方、KDDIとソフトバンクの固定長期適合率はほぼ同じで、それぞれ121.0%と121.5%です。これらの数値は100%を大きく上回っており、固定資産の一部を短期的な資金で賄っている可能性を示しています。

ただし、3社とも100%を超えていますが、これは通信業界の特性を反映しているかもしれません。なぜなら、通信業界は設備投資が多く、固定資産の割合が高くなる傾向があるからです。

これらの数値は、各社の財務戦略の違いを反映しています。具体的には、NTTはより保守的な財務構造を持つ一方、KDDIとソフトバンクはやや積極的な財務戦略を取っている可能性があります。

(4)  総合的な安定性の評価

NTT、KDDI、ソフトバンクの安定性を総合的に評価し、〇、△、✖の三段階で表します。この評価は、自己資本比率、固定長期適合率を考慮に入れて行います。

NTTは〇と評価しました。


自己資本比率が36.8%と比較的高く、さらに固定長期適合率も102.5%と3社中最も低いことから、財務的安定性が最も高いと判断しました。加えて、総資産規模も最大であり、安定した財務基盤を持っています。

KDDIは△と評価しました。

自己資本比率が41%と3社中最も高いものの、固定長期適合率が121.0%とやや高めです。したがって、財務的には安定していますが、固定資産の一部を短期的な資金で賄っている可能性があります。

ソフトバンクは✖と評価しました。


自己資本比率が25.4%と3社中最も低く、また固定長期適合率も121.5%と高いです。このことから、より積極的な財務レバレッジ戦略を採用している可能性がありますが、同時に相対的に財務リスクが高いと考えられます。

6. キャッシュフロー指標 通信大手3社のキャッシュフロー

NTT、KDDI、ソフトバンクの過去10年間のキャッシュフロー推移を分析します。

(1) 営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、企業が本業から得た現金の流入と流出を示す指標です。

まず、NTTの営業キャッシュフローは2015年度の2兆3918億円から2024年度の2兆3742億円まで、概ね安定して2兆円台後半を維持しています。特に2021年度から2022年度にかけては3兆円を超える高水準を記録しました。

一方、KDDIは2015年度の9622億円から着実に増加し、2024年度では1兆7065億円に達しています。このことから、安定した成長を示していることがわかります。

そして、ソフトバンクは2015年度のデータがありませんが、2017年度の8908億円から2024年度の1兆2397億円まで、緩やかな上昇傾向にあります。

まとめると、3社ともに営業キャッシュフローは安定的に成長しており、特にKDDIの成長が顕著です。

(2) 投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローとは、企業の投資活動によって生じる現金の流れを示す財務指標です。

具体的には、設備投資などが含まれます。この指標は通常マイナスになることが多く、それは企業が将来の成長のために資金を投じていることを意味します。

NTTの投資キャッシュフローは一貫して大規模なマイナスを示しており、2024年度ではマイナス1兆9892億円と最大規模となっています。このことから、積極的な設備投資を継続していることがうかがえます。

NTTの投資キャッシュフローは、巨大な未来都市の建設プロジェクトのようです。常に大規模な工事(マイナスの大きい投資)が行われており、2024年度は史上最大の建設計画(マイナス1兆9892億円)を立てています。

これに対し、KDDIの投資キャッシュフローはマイナス6000億円からマイナス8000億円の範囲で推移しており、2024年度ではマイナス8324億円とやや拡大傾向にあります。

KDDIの投資キャッシュフローは、計画的に進められる中規模都市の開発プロジェクトに似ています。毎年コンスタントに新しい区画(マイナス6000億円からマイナス8000億円)が開発されており、2024年度はやや大きめの再開発(マイナス8324億円)が行われています。

他方、ソフトバンクは年度によって変動が大きく、2023年度のマイナス1548億円から2024年度のマイナス9276億円まで幅広い範囲で推移しています。

ソフトバンクの投資キャッシュフローは、柔軟で機動的な都市開発プロジェクトのようです。時には小規模な改修(2023年度のマイナス1548億円)に留まることもあれば、突如として大規模な再開発(2024年度のマイナス9276億円)を行うこともあります。

まとめると、投資キャッシュフローに関しては、NTTが最も積極的で、KDDIが安定的、ソフトバンクが変動的です。

(3) 財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローは、企業の資金調達や返済に関連する現金の流れを示す財務指標です。

これには、株式や社債の発行による資金調達、借入金の増減、配当金の支払い、自社株買いなどが含まれます。プラスの財務キャッシュフローは資金調達の増加を、マイナスは債務の返済や株主還元の増加を意味します。

NTTの財務キャッシュフローは概してマイナスで推移しており、特に2021年度と2022年度には大規模な資金返済や株主還元が行われたことが見て取れます。

NTTの財務キャッシュフローは、まるで大規模な浄水場のような印象です。巨大なタンクから大量の水(資金)を放出し、水質(財務体質)を改善しつつ、周辺地域(株主)にも潤沢に水を供給しています。時には大規模な排水(大型の負債返済や株主還元)を行い、システム全体の効率を高めているのです。

同様に、KDDIも一貫してマイナスの財務キャッシュフローを示しており、2022年度のマイナス7273億円をピークに、株主還元や負債返済を積極的に行っています。

KDDIの財務キャッシュフローは、計画的な灌漑システムのようです。定期的に一定量の水(資金)を放出し、広大な農地(株主や債権者)に均等に水を行き渡らせています。2022年度のピークは、特に豊作だった年に追加の水を供給するようなものです。

一方で、ソフトバンクは財務キャッシュフローの変動が比較的小さく、マイナス3000億円からマイナス5000億円の範囲で推移しています。

ソフトバンクの財務キャッシュフローは、精密に制御された噴水システムのようです。常に一定の範囲内で水量(資金の流出)を調整し、美しい噴水ショー(安定した財務運営)を維持しています。水量の変動は小さいものの、常に観客(株主や市場)を魅了し続けているのです。

まとめると、財務キャッシュフローは3社とも概してマイナスで推移しており、株主還元や負債返済に注力していることがわかります。

(4) 現金及び現金同等物

現金及び現金同等物は、企業が保有する最も流動性の高い資産を指します。

現金及び現金同等物には、手元の現金、当座預金、普通預金などの現金と、短期的(通常3ヶ月以内)に現金化可能な短期投資が含まれます

NTTの現金及び現金同等物は8000億円から1兆円の範囲で安定的に推移しており、2024年度では9829億円となっています。

NTTの現金及び現金同等物は、安定した大きな貯金箱のようです。この貯金箱は常に8000億円から1兆円のコインで満たされており、中身がほとんど変わりません。この貯金箱の持ち主は、急な出費にも慌てることなく対応できる安定した家計の持ち主といえるでしょう。

対照的に、KDDIは2015年度の2759億円から増加傾向にあり、2024年度では8872億円まで拡大しています。

KDDIの現金及び現金同等物は、徐々に大きくなっていく伸縮性のある貯金箱のようです。2015年度には小さな貯金箱(2759億円)でしたが、年々大きくなり、2024年度には当初の3倍以上の大きさ(8872億円)になっています。この貯金箱の持ち主は、計画的に貯金を増やし、将来の大きな支出に備えているようです。

他方、ソフトバンクは2018年度の901億円から急激に増加し、2023年度には2兆592億円まで拡大しましたが、2024年度では1兆9929億円とやや減少しています。

ソフトバンクの現金及び現金同等物は、宇宙ロケットの軌道のようです。2018年度の地上発射台(901億円)から急速に加速し、2023年度には軌道最高点(2兆592億円)に到達しました。2024年度は軌道調整期(1兆9929億円)に入り、次の大きなミッションに向けて準備を整えている段階です。この宇宙ロケットは、ソフトバンクの大胆な投資戦略と急成長を象徴しています。

(5) フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローは、企業が事業活動から生み出した現金のうち、必要不可欠な投資を行った後に残る自由に使える現金のことを指します。

NTTのフリーキャッシュフローは変動が大きく、2021年度の1兆5845億円をピークに、2024年度では3849億円まで減少しています。

NTTのフリーキャッシュフローは、変動の激しい山岳地帯の川のようです。雨季には豊富な水量(2021年度の1兆5845億円)で溢れんばかりですが、乾季には水量が大幅に減少(2024年度の3849億円)します。この川の流れは予測が難しく、時には洪水のような豊富な現金流入があり、時には干ばつのような厳しい状況に直面します。

一方、KDDIは2015年度の2877億円から増加傾向にあり、2024年度では8741億円と過去最高を更新しています。

KDDIのフリーキャッシュフローは、着実に成長を続ける巨大なバオバブの木のようです。2015年度には若木(2877億円)でしたが、年々幹を太くし枝を広げ、2024年度には壮大な巨木(8741億円)へと成長しました。

この木は今や、砂漠の中のオアシスとなり、多くの生き物(投資家)に安定した恩恵をもたらしています。KDDIの安定した成長戦略が、この巨木を育てたと言えるでしょう。

これに対し、ソフトバンクは年度によって大きく変動しており、2023年度に1兆10億円と過去最高を記録しましたが、2024年度では3121億円まで減少しています。

ソフトバンクのフリーキャッシュフローは、気まぐれな間欠泉のようです。普段は穏やかな流れですが、時折大量の熱水を噴き上げます(2023年度の1兆10億円)。しかし、その後はしばらく静まってしまうこともあります(2024年度の3121億円)。

まとめると、フリーキャッシュフローではKDDIが最も安定的な成長を示しており、財務の健全性が高いと言えます。

一方で、NTTとソフトバンクは変動が大きく、自社の投資戦略の影響を強く受けていることが推察されます。

(6) 営業キャッシュフローマージン

営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。

この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。

なお、「MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法」によると、営業キャッシュフローマージンは、理想として15%から35%程度あると素晴らしいとされています。

それでは、NTT、KDDI、ソフトバンクの3社の営業キャッシュフローマージンを比較分析してみましょう。

ア NTTの営業キャッシュフローマージン

NTTの営業キャッシュフローマージンは、2015年3月期から2024年3月期まで17.21%から25.61%の範囲で推移しています。

特に2020年3月期から2022年3月期にかけて24から25%台の高い水準を維持していました。

しかしながら、直近2年は17から18%台に低下しています。

ィ KDDIの営業キャッシュフローマージン

一方、KDDIの営業キャッシュフローマージンは、同期間で19.02%から31.66%の範囲で変動しています。

2021年3月期に31.66%とピークを記録し、その後やや低下したものの、2024年3月期には29.66%と再び高い水準に回復しています。

ウ ソフトバンクの営業キャッシュフローマージン

そして、ソフトバンクの営業キャッシュフローマージンは、2017年3月期から2024年3月期まで19.55%から25.72%の範囲で推移しています。2020年3月期と2021年3月期に25%を超える高い水準を記録しましたが、その後はやや低下傾向にあります。

エ 比較分析

全体的な傾向として、KDDIが最も高い営業キャッシュフローマージンを維持しています。実際、直近の2024年3月期は29.66%と、3社の中で最も高い数値を示しています。

これに対し、NTTは2019年3月期から2022年3月期にかけて安定して高いマージンを維持していましたが、直近2年で大きく低下しています。

他方、ソフトバンクは3社の中で最も変動が小さく、比較的安定したマージンを維持しています。

興味深いことに、3社とも2020年3月期から2021年3月期にかけて高いマージンを記録しています。これは新型コロナウイルスの影響で設備投資が抑制された可能性があります。

ただし、直近の2024年3月期では、KDDIが大きく上昇しているのに対し、NTTとソフトバンクは横ばいか微増に留まっています。

この分析から、KDDIが最も効率的に売上を現金化できていると言えます。一方で、NTTの直近の低下傾向には注意が必要です。また、ソフトバンクは安定しているものの、他社と比べてマージン改善の余地があるかもしれません。

(7)  総合的なキャッシュ生成能力の評価

NTT、KDDI、ソフトバンクのキャッシュ生成能力を総合的に評価し、〇、△、✖の三段階で表します。この評価は、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー、 現金及び現金同等物、フリーキャッシュフロー、営業キャッシュフローマージンを考慮に入れて行います。

NTTの評価は✖です。


まず、営業キャッシュフローは2兆円台後半を維持していますが、近年は横ばい傾向です。

また、営業キャッシュフローマージンが直近2年で大きく低下しており、17から18%台まで落ち込んでいます。

さらに、投資キャッシュフローが一貫して大規模なマイナスを示しており、積極的な投資を行っていますが、同時にキャッシュの流出が大きいです。

加えて、フリーキャッシュフローの変動が大きく、2021年度のピーク(1兆5845億円)から2024年度(3849億円)では大幅に減少しています。

一方で、現金及び現金同等物は8000億円から1兆円の範囲で安定的に推移していますが、成長は見られません。

まとめると、NTTは営業キャッシュフローの成長が鈍化し、営業キャッシュフローマージンも低下傾向にあります。また、大規模な投資による継続的なキャッシュ流出とフリーキャッシュフローの大幅な減少が懸念材料となっています。

NTTのキャッシュフロー状況は、まるで古い蛇口から水が漏れている状態のようです。営業キャッシュフローという水は一定量流れ出ていますが、投資という大きな穴から急速に流出し、フリーキャッシュフローという受け皿に残る水はどんどん減っています。蛇口を必死に締めても、漏れは止まらず、水量は増えていかないのです。

KDDIは〇と評価しました。

まず、営業キャッシュフローが2015年度の9,622億円から2024年度の1兆7065億円まで着実に増加し、安定した成長を示しています。

次に、営業キャッシュフローマージンが3社中最も高く、直近の2024年3月期では29.66%と優れた数値を示しています。

さらに、フリーキャッシュフローが増加傾向にあり、2024年度では8741億円と過去最高を更新しています。

また、投資キャッシュフローが比較的安定しており、マイナス6000億円からマイナス8000億円の範囲で推移しています。

加えて、現金及び現金同等物が2015年度の2759億円から2024年度の8872億円まで大幅に増加しています。

まとめると、KDDIは3社の中で最も優れたキャッシュ生成能力を示しており、高い評価を受けています。営業キャッシュフローの着実な成長、高い営業キャッシュフローマージン、安定したフリーキャッシュフローの増加が、その評価を裏付けています。

KDDIのキャッシュフロー状況は、まるで効率的な水力発電所のようです。安定した水流(営業キャッシュフロー)が発電機(事業運営)を力強く回し、余剰電力(フリーキャッシュフロー)を着実に蓄えています。さらに、ダム(現金及び現金同等物)の水位も年々上昇し、渇水期にも安心できる状態です。

ソフトバンクは△と評価しました。

まず、営業キャッシュフローは2017年度の8,908億円から2024年度の1兆2397億円まで緩やかな上昇傾向にありますが、KDDIほどの成長は見られません。

次に、営業キャッシュフローマージンは19.55%から25.72%の範囲で推移しており、安定していますが改善の余地があります。

加えて、投資キャッシュフローの変動が大きく、2023年度のマイナス1548億円から2024年度のマイナス9276億円まで幅広い範囲で推移しています。

また、フリーキャッシュフローの変動も大きく、2023年度に1兆10億円と過去最高を記録しましたが、2024年度では3121億円まで減少しています。

一方で、現金及び現金同等物は2018年度の901億円から急激に増加し、2023年度には2兆592億円まで拡大しましたが、2024年度では1兆9929億円とやや減少しています。

まとめると、ソフトバンクは中間的な評価となります。営業キャッシュフローは成長していますが、投資キャッシュフローとフリーキャッシュフローの変動が大きく、安定性に欠ける面があります。ただし、営業キャッシュフローマージンは比較的安定しています。

ソフトバンクのキャッシュフロー状況は、まるで気まぐれな噴水のようです。水の勢い(営業キャッシュフロー)は徐々に強くなっていますが、噴き出すパターン(投資キャッシュフロー)が年によって大きく変わります。結果として、噴水の周りにたまる水(フリーキャッシュフロー)の量は予測が難しく、時には豊富に、時には乏しくなります。観客(投資家)は美しい噴水ショーに魅了されつつも、その不安定さを懸念しています

7. 成長性指標 通信大手3社の成長性

(1) 過去の業績推移

まずNTTについて見ると、売上高は2015年から2024年にかけて緩やかな成長を続け、2024年3月期には13兆3,746億円に達しました。

また、営業利益は2015年から2024年にかけて増加傾向にあり、2024年3月期には1兆9,229億円となりました。

同様に、当期利益も増加傾向で、2024年3月期には1兆2,795億円を記録しました。

NTTの業績推移は、ゆっくりと体重を増やし続ける相撲取りのようです。売上高という体重は毎年少しずつ増え、営業利益と当期利益という筋肉も着実に付いています。急激な変化はありませんが、その安定感は抜群で、土俵際まで押し出されることはありません。

一方、KDDIの売上高は2015年から2024年にかけて着実に成長し、2024年3月期には5兆7,540億円に達しました。

営業利益は2015年から2023年まで一貫して増加し、2023年3月期に1兆757億円でピークを迎えましたが、2024年3月期には若干減少しました。

当期利益についても同様のトレンドで、2023年3月期に6,775億円でピークを迎え、その後2024年3月期にはわずかに減少しました。

KDDIの業績推移は、計画的なダイエットに成功したダイエッターを思わせます。売上高という体型は理想的なラインまで成長し、営業利益と当期利益という筋肉も2023年までしっかりと鍛え上げました。2024年の若干の減少は、さらなる引き締めを目指してのことかもしれません。バランスの取れた健康的な体づくりを続けているようです。

ソフトバンクに関しては、売上高が2017年から2024年にかけて大きく成長し、2024年3月期には6兆840億円に達しました。

一方で、営業利益は2017年から2023年まで増加し、2023年3月期に1兆602億円でピークを迎えましたが、2024年3月期には減少に転じました。

当期利益も同様のトレンドをたどり、2023年3月期に5,314億円でピークを迎えた後、2024年3月期には減少しました。

ソフトバンクの業績推移は、急成長を遂げた若手ボクサーのようです。売上高という体格は急激に大きくなり、周囲を驚かせています。営業利益と当期利益というパンチ力も2023年まで急上昇しましたが、2024年には少し力が抜けたようです。これは次の大勝負に向けての調整期間なのかもしれません。その予測不可能な動きに、観客(投資家)はハラハラドキドキしながらも、次の爆発的な成長を期待しています。

(2) 来期(2025年3月期)の見通し

NTTは、売上高について前期比0.60%増の13兆4,600億円を予想しています。しかしながら、営業利益は前期比5.90%減の1兆8,100億円、当期利益は前期比14.00%減の1兆1,000億円を見込んでいます。その一方で、成長分野の事業拡大により、営業利益の持続的な成長を目指しています。

NTTは、慎重な将棋の名人棋士のような戦略をとっています。売上高という駒を少しずつ前に進めていますが、営業利益と当期利益という金銀は後退させています。これは、成長分野という新たな陣形を組むための一時的な後退のようです。

KDDIは、売上高について前期比0.30%増の5兆7,700億円を予想しています。さらに、営業利益は前期比15.40%増の1兆1,100億円、当期利益は前期比8.20%増の6,900億円を見込んでおり、全体的に増収増益を予想しています。この成長を実現するため、5G構築、生成AI・データドリブンの推進、ARPU収入の持続的成長、DX・金融・エネルギー分野の成長を目指しています。

KDDIは、攻めの姿勢が強い若手棋士のような印象です。売上高、営業利益、当期利益のすべての駒を前進させる積極的な戦略をとっています。5G、AI、DXなどの新しい戦法を次々と繰り出し、相手(競合他社)を圧倒しようとしています。まるで、新手を次々と繰り出して、一気に勝負をかけようとしているかのようです。

ソフトバンクは、売上高について前期比1.90%増の6兆2,000億円を予想しています。加えて、営業利益は前期比2.70%増の9,000億円、当期利益は前期比2.20%増の5,000億円を見込んでおり、KDDIと同様に増収増益を予想しています。この成長を達成するため、コンシューマ事業、メディア・EC事業を中心に全セグメントで増益を目指し、同時に生成AIなどへの成長投資も計画しています。

ソフトバンクは、バランスの取れた中堅棋士のような動きを見せています。すべての駒を着実に前進させつつ、生成AIという新たな手筋も取り入れようとしています。コンシューマ事業やメディア・EC事業という得意の陣形を軸に、全体的な駒の力を高めようとしています。まるで、堅実な攻めと守りのバランスを取りながら、勝機を狙っているかのようです。

まとめると、3社とも来期は増収を見込んでいますが、利益面では異なる見通しを示しています。具体的には、KDDIとソフトバンクが増益を予想する一方、NTTは減益を見込んでいます。ただし、各社とも5GやAIなどの新技術への投資を重視しており、これらが将来の成長ドライバーになると期待されています。

(3)  総合的な成長性の評価

NTT、KDDI、ソフトバンクの成長性を総合的に評価し、〇、△、✖の三段階で表します。この評価は、効率性、安定性、キャッシュフロー生成能力、業績の推移、来期(2025年3月期)の見通しを考慮に入れて行います。

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