日本株

NTTグループ第1四半期を振り返る、過去最高の営業収益を達成:「人件費増加は悪いことではない」その真意とは

銭太郎「所長、そういえば8月に発表されたNTTの2024年度第1四半期の決算、今度(11月7日)の第2四半期決算の前に振り返っておきたいゼニ!」

きらく(エスプレッソを入れながら)「良いタイミングね。今日は第1四半期の詳細な分析に相応しい深煎りのコーヒーを用意したわ」

あおい「私も決算資料を準備してきました」

<第1部:NTTグループの事業概要>

きらく「まず、NTTグループの全体像から確認しておきましょう。1985年の設立以来、通信インフラ企業から総合情報通信企業グループへと進化を遂げているの」

銭太郎「4つの事業があるって聞いたゼニ」

きらく「ええ、順番に見ていきましょう」

【事業セグメント詳細】

①総合ICT事業(ドコモグループが中心)

・主な事業内容:

- モバイル通信サービス

- スマートフォン関連サービス

- 法人向けシステム開発

- デジタルトランスフォーメーション支援

銭太郎「ICTて何ゼニ?」

きらく「Information and Communication Technologyの略よ。情報通信技術全般を指す言葉ね。スマートフォンやインターネット、企業システムなど、私たちの生活や仕事を支える技術全般を含むわ」

②地域通信事業(NTT東日本・西日本が中心)

・主な事業内容:

- 光ファイバーサービス(フレッツ光)

- 地域に密着したICTサービス

- 自治体向けデジタル化支援

銭太郎「光ファイバーってすごく速いゼニよね?」

あおい「そうなんです。従来の銅線と比べて、データ転送速度が格段に速くなります。2時間の映画を数秒でダウンロードできるほどの速さがあります」

③グローバル・ソリューション事業(NTTデータが中心)

・主な事業内容:

- グローバル規模でのITシステム開発・運用

- 金融機関向けシステム

- 公共機関向けシステム

- クラウドサービス

④その他の事業

・主な事業内容:

- 不動産開発・運営

- 再生可能エネルギー事業

- 新規事業開発

<第2部:2024年度第1四半期の業績概要>

【主要財務指標】

①営業収益:3兆2,400億円(前年同期比+4.1%)

きらく「第1四半期として過去最高を記録したわ。特にグローバル・ソリューション事業の伸長が大きく貢献したのよ」

②営業利益:4,358億円(前年同期比-8.2%)

あおい「利益面では減少傾向にありますね」

きらく「その通り。第1四半期の営業利益は前年同期比8.2%減の4,358億円だったの。この減少は主に人件費の増加によるものよ。前年同期比で約747億円の人件費増加があったわ」

銭太郎「それって悪いことゼニ?」

きらく「必ずしもそうとは限らないわ。これは将来の成長に向けた戦略的な人材投資という側面が強いの。特にデジタル人材の確保・育成は、今後の競争力を左右する重要な投資なのよ」

③EBITDA:8,153億円(前年同期比-2.8%)

きらく「EBITDAは『利払い前・税引き前・償却前利益』の略で、企業の実質的な収益力を示す指標よ」

あおい「借入金の多さや設備投資の方法に左右されない、純粋な事業の収益力を見ることができるんですね」

<第3部:セグメント別の状況>

【セグメント別実績(対前年同期比)】

①総合ICT事業

・営業収益:1兆4,769億円(+1.3%)

・営業利益:2,754億円(-5.9%)

主な状況:

- モバイル関連収入が堅調

- 法人向けDXプロジェクトが増加

- 新規サービス開発投資を積極化

②地域通信事業

・営業収益:7,389億円(-2.1%)

・営業利益:917億円(-17.8%)

主な状況:

- 光回線契約数は着実に増加

- 競争激化による収益性への影響

- コスト効率化を推進

③グローバル・ソリューション事業

・営業収益:1兆1,121億円(+9.6%)

・営業利益:586億円(+0.5%)

主な状況:

- 海外での大型デジタル案件が増加

- 為替影響もプラスに寄与

- 新規顧客開拓が進展

④その他事業

・営業収益:3,731億円(+4.6%)

・営業利益:158億円(+20.0%)

主な状況:

- 再生可能エネルギー事業を強化

- 2030年度目標:約80億kWh/年

(内訳:太陽光等約30億、風力約50億)

<第4部:成長戦略と投資状況>

きらく「第1四半期で特に注目すべきは、将来の成長に向けた積極的な投資ね」

【主要な戦略投資】

①AI関連投資

1. NTT AI-CIXの設立

きらく「8月に設立を発表したAI-CIXは、単なるAI事業会社ではないのよ」

銭太郎「どういうことゼニ?」

きらく「業務・業界の垣根を越えて、AIを活用するという特徴があるわ。例えば...」

あおい「小売、メーカー、物流などの異なる業界をAIでつなぎ、サプライチェーン全体を最適化する。そういった取り組みですよね」

きらく「その通り。特に人手不足など、社会課題の解決も目指しているのよ」

2. tsuzumiの展開

・導入提案:400件以上

・主な特徴:

- 日本企業特有のニーズに対応

- Azure AI Studio上での開発環境提供

- パートナー企業との連携強化

あおい「tsuzumiについても、すでに400件を超える導入提案が進んでいるようです。」

②再生可能エネルギー戦略

きらく「2030年度の目標達成に向けて、着実に進展しているわ」

あおい「具体的な数値目標が示されていますね」

きらく「そうね。再エネ発電量として約80億kWh/年を目指しているの。内訳は太陽光等で約30億kWh/年、風力で約50億kWh/年よ」

銭太郎「風力発電が多いゼニね!」

あおい「グリーンパワーインベストメント社の子会社化が、この戦略の重要な一手だったわけですね」

<第5部:株主還元・財務状態>

【株主還元策】

①自己株式取得

・取得総額:2,000億円(上限)

・取得期間:2024年8月8日~2025年3月31日

きらく「この決定には、現在の株価水準が割安という経営陣の判断も反映されているわ」

②配当政策

・年間配当予想:1株当たり5.2円

・前期比:+0.1円の増配

③株主基盤の拡大

・株主数:226万人(過去最高)

・株式分割効果:2.5倍増

【財務状態】

・総資産:29兆9,894億円

・株主資本比率:33.2%

・自己資本の状況:安定的に推移

あおい「株主資本比率は33.2%と、安定した水準を維持していますね」

きらく「その通りよ。営業キャッシュフローは1,951億円を確保しており、財務の健全性は十分に保たれているわ。これは戦略投資と株主還元の両立を支える重要な基盤ね」

<第6部:総合評価>

きらく「それでは、第1四半期の総合評価をしましょう」

【5つの評価軸による分析】

①収益力:★★★★

・根拠:

- 営業収益が過去最高を更新

- EBITDAが引き続き高水準

- グローバル事業の成長が顕著

②収益性:★★★

・根拠:

- 営業利益は減少

- 人件費増加の影響

- 戦略的投資フェーズと認識

③成長戦略:★★★★★

・根拠:

- AI-CIXによる新たな価値創造

- tsuzumiの事業化進展

- 再生可能エネルギーの強化

- デジタル人材への投資

④財務健全性:★★★★

・根拠:

- 安定した自己資本比率

- 戦略投資余力の確保

- 効率的な資本活用

⑤株主還元:★★★★

・根拠:

- 積極的な自己株式取得

- 増配の継続

- 株主基盤の大幅拡大

【総合評価:★★★★】

きらく「第1四半期は、短期的な収益性では課題が見られるものの、将来の成長に向けた投資を積極的に行いながら、足元の業績も一定水準を確保できていたと評価できるわ」

あおい「特に、新規事業への投資と、安定した通信インフラ事業のバランスが取れている点も評価できますね」

きらく「その通りよ。通信インフラという安定した収益基盤があることが、新規事業への挑戦を支える強みとなっているわね」

【第2四半期の注目ポイント】

1. 戦略投資の進捗

- AI-CIXの立ち上がり状況

- tsuzumiの導入実績

- 人材投資の効果

2. グローバル展開

- 大型デジタル案件の状況

- 収益性の改善

3. 株主還元の進展

- 自己株式取得の進捗

- 株主数の推移

きらく(コーヒーカップを置きながら)「第1四半期は種まきの時期。第2四半期では、これらの施策がどう実を結んでいくか、しっかり見ていく必要があるわね」

銭太郎「よーし!第2四半期も頑張って分析するゼニ!」

あおい「私も財務指標の理解をより深めていきたいと思います」

NTT 2024年度第1四半期決算分析:NTTのAI新会社「AI-CIX」が描く未来図

https://editor.note.com/notes/n1c6f285ab5db/edit

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