NTT(9432)の投資判断
NTT(9432)は固定電話市場を独占し、光回線では高いシェアを誇る国内通信業の最大手です。
NTTは地域電話市場を独占し、また、携帯電話市場でもトップの地位を占めています。
さらに、長距離および国際電話市場でもシェアも拡大しています。
基本情報は、こちらの表のとおりです。
株価のチャート
株価のチャートは、こちらのとおりです。
過去1年間の株価のパフォーマンスは、マイナス7.98%となっています。
最新の決算
NTTは5月10日に決算を発表しています。
24年3月期の連結最終利益は前期比5.5%増の1兆2795億円に伸びましたが、25年3月期は前期比14.0%減の1兆1000億円に減る見通しとなりました。
同時に、前期の年間配当を5円から5.1円に増額し、今期も前期比0.1円増の5.2円に増配する方針としました。
直近3ヵ月の実績である1-3月期(4Q)の連結最終利益は前年同期比48.6%増の2684億円に拡大し、売上営業利益率は前年同期の8.6%から11.9%に大幅に改善しました。
2024年3月期の各事業の動向
①総合ICT事業
総合ICT事業は、携帯電話、国内電気通信、国際通信、ソリューション、システム開発などを含む広範な事業を展開しています。
24年3月期は法人事業の拡大、M&Aを通じたスマートライフ事業の成長、顧客ニーズに対応した料金プランの提供によって顧客基盤を強化しました。
具体的な取り組みとして、建設業界との協業、映像配信メディア「Lemino」の提供、保険商品のオンライン販売、低廉な料金プランの導入などが挙げられます。
これらの結果、営業利益は1兆1,444億円、前期比4.6%増となりました。
②地域通信事業
地域通信事業は、県内通信サービスを中心に展開し、地域の社会課題解決に向けたDX支援や光アクセスサービスの提供を推進しました。
固定電話のIP網への設備切替、ローカル5G機器の相互接続実証プロジェクト、人材不足解決に向けたロボット活用の共同事業などが主な取り組みです。
営業利益は4,377億円、前期比4.1%増ととなりました。
③グローバル・ソリューション事業
グローバル・ソリューション事業では、システムインテグレーション、ネットワークシステム、クラウド、データセンターなどを提供し、デジタル化やITサービスの拡大に注力しました。
デジタル社債向けインフラの構築、交通インフラ市場でのデジタルビジネス創出、データセンターの共同開発などが具体的な取り組みです。
営業利益は3,096億円、前期比16.5%増となりました。
④その他(不動産、エネルギー等)
不動産事業とエネルギー事業を含むこのセグメントでは、オフィスや商業施設の開発、再生可能エネルギーの活用による脱炭素化推進などを行いました。
仙台の再開発プロジェクトやエネルギー流通プラットフォームの構築が主な取り組みです。
営業利益は598億円、前期比11.0%減となりました。
25年3月期の見通し
25年3月期の業績予想では、売上高が134,600億円と前年比で増加する一方、営業利益は18,100億円と減少する見込みです。
地域通信事業の収益が減少するものの、グローバル・ソリューション事業やその他事業の収益増加が予想されています。営業利益の減少は主に地域通信事業の減益によるものです
NTTの事業リスク
情報通信分野は、ブロードバンドといつでも、どこでも、何でもネットに接続できる状態への急速な発展により、固定電話市場で光サービスの拡大と既存固定電話からインターネットを利用した電話、例えばSkypeやZoomなどへのシフトが進んでいます。
また、移動通信市場ではサービスや端末が多様化・高度化し、例えば、楽天モバイルなどの新規参入が続くことで競争が激化しています。
その結果、企業は競争に勝ち残るために広告費などを増やす必要があり、そのためのコストがかさみます。
加えて、価格下落によって利益率が低下するリスクもあります。さらに、NTTは規制対象企業であるため、規制の変動も大きなリスクとなります。
EPS
EPSとは、「Earnings Per Share」の略で、1株当たり純利益ともいわれます。
EPSからわかることは、企業の「収益力」と「成長性」の2つです。
数値が高いほど企業の収益力は高いと見ることができます。
また、同じ企業の当期EPSと前期以前のEPSを比較することで、企業が順調に成長しているか判断することもできます。
NTTのEPSは2023年第2四半期から2024年第4四半期にかけて変動し、成長率はプラスとマイナスを繰り返しました。
2024年第2四半期に2.5%減少しましたが、第4四半期には7%の成長を記録しています。
売上高の推移
2023年は各四半期で売上高が堅調に成長し、特に第4四半期で10.2%の成長を記録しましたが、2024年には成長率が低下し、各四半期で1.1%から2.6%の範囲で推移しています。
「利益」は意見、「キャッシュ」は現実
損益計算書(PL)に記載される売上高などの「利益」は、本来であれば来期に立つ売上を、今期の売上として計上することや架空の売上を立てることで、意図的に「利益」を過大に見せること、いわゆる粉飾が可能であり、明らかな粉飾でない限り、このような粉飾を見抜くことは難しいと言われています。
他方、キャッシュフロー計算書(CF)に記載される営業キャッシュフローなどの「キャッシュ」は、実際にどれだけの現金が出入りしたのかを表し、意図的な調整をする余地がありません。
そのため、会計の世界では、『「利益」は意見、「キャッシュ」は現実』、または『キャッシュフローは嘘をつかない』とされています。
また、損益計算書では黒字にも関わらず、倒産してしまう「黒字倒産」の原因は、売上が発生しても、その入金、現金収入が大幅に遅れ、企業が現金不足に陥ることで起こるとされています。
そのため、企業の「利益」だけでなく、企業の「キャッシュ」を確認することが重要です。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。
NTTの営業キャッシュフローは2023年に-24.9%減少しましたが、2024年には5%増加し回復しました。2021年と2022年はほぼ横ばいでした。
ネットキャッシュ比率とは
ネットキャッシュ比率とは、資産総額に対する資金の豊富さを計る尺度です。
ネットキャッシュとネットキャッシュ比率の定義については、長者番付1位となった伝説のサラリーマン投資家、清原達郎氏のネットキャッシュ比率の定義を採用しています。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
ネットキャッシュ比率=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)÷時価総額
ネットキャッシュ比率が1の企業については、「会社がただで買えるほど割安」であり、数字が大きいほど割安と判断できます。
また、清原氏曰く、ネットキャッシュ比率が1を超えている企業については、「ただで会社をもらった上で現金まで貰える」ほど割安だとされています。
より詳しい内容については、清原達郎氏の「わが投資術 市場は誰に微笑むか」をご覧ください。
ネットキャッシュ比率
ネットキャッシュ比率は資金の豊富さを示す尺度で、1以上なら割安とされます。
NTTのネットキャッシュ比率はマイナス0.69で、割安とは評価されません。
NTTのネットキャッシュ比率がマイナス0.69という数値は、同社の負債が流動資産と投資有価証券の合計を大きく上回っていることを示しています。
投資判断
それでは、NTTの投資判断を行いたいと思いますが、続きの内容については、有料記事となります。
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