人気高配当株、三井住友FG
今回は、人気の高配当株で、2024年2月1日に最新の決算を発表した三井住友FGの最新の決算と財務諸表を分析します。
三井住友フィナンシャルグループ(8316)は、日本を代表する大手金融グループの一つです。
SMBC(三井住友銀行)を核とし、さまざまな金融サービスを提供しています。
個人、企業向けの銀行業務のほか、資産運用、リース、証券、保険など幅広い金融サービスを手掛けています。
国内外に多数の支店・関連会社を持ち、グローバルな事業展開を行っているのが特徴です。
基本情報は、こちらの表のとおりです。
この記事を読めば、三井住友FGの株を買うにあたって、最低限知っておくべき三井住友FGの業績や財務状況を把握することができます。
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株価のパフォーマンス
三井住友FGの株価のパフォーマンスは、こちらの表のとおりです。
三井住友FGの株価パフォーマンスは、短期から長期にかけて一貫した成長を示しています。
最近1か月と年初来の増加率は9.17%で、過去6か月では15.79%、1年で38.09%の成長が見られました。
5年間では97.36%、全期間にわたる成長率は276990.91%に達しています。これは、三井住友FGの株価が長期的に強い成長を遂げていることを示しています。
過去5年間の株価のチャートは、こちらのとおりです。
株価は右肩上がりであり、2023年9月頃の高値に迫ってきていることが確認できます。
予想PERの推移
2024年2月2日時点での三井住友FGの予想PERは11.0倍で、過去1年間の平均は10.5倍、過去2年間は9.3倍、過去3年間は9.5倍、全期間の平均は9.1倍です。
これは、最近の予想PERが長期平均よりも高いことを示し、市場が三井住友FGの将来の利益成長に対してポジティブな見通しを持っていることを反映しています。
実績PBRの推移
2024年2月2日時点での三井住友FGの実績PBRは0.73倍で、過去1年、2年、3年の平均値および全期間の平均値と比較してやや高くなっています。
PBRが1倍未満であることは、一般的に企業の株価が純資産価値よりも低く評価されていることを意味し、理論上は割安と見なされます。
三井住友FGの場合、PBRが0.73倍と低いことは、株価が純資産に比べて低く評価されている状態を示しており、割安な評価を受けている可能性があります。
ただし、PBRだけで投資判断をするには限界があるため、実際の投資判断にあたっては、他の財務指標などを考慮する必要があります。
年間配当と配当利回りの推移
三井住友FGの年間配当は2020年の190円から2024年2月2日時点で250円へと増加していますが、配当利回りは2020年の7.24%から2024年には3.54%へと低下しています。
総還元性向とは?
総還元性向とは、会社が儲けた利益を、配当や自社株買いという形で、株主に対してどれくらい還元しているかを表す指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元に力を入れている企業であることを示します。
ただし、株主への還元が多いことは、設備投資などに使用できる資金が少なくなる可能性があります。
総還元性向
三井住友FGの総還元性向は2019年の44.2%から2023年に57.6%へと変動しており、この期間に株主還元への取り組みの強化が見られます。2022年に40.7%に減少したものの、その後再び上昇しています。
なお、三井住友FGの株主還元については、累進的配当方針および配当性向40%を維持し、純利益の成長を通じて増配を実現することとしています。
最新の決算
三井住友FGは、2024年2月1日に2024年第3四半期決算を発表しています。
24年3月期第3四半期累計(4-12月)の連結経常利益は前年同期比15.9%増の1兆1966億円に伸びました。
通期計画の純利益9200億円、前年比14.2%増に対する進捗率は86%と高いものの、地政学リスクなどのリスク要因を踏まえ、通期予想は据え置いています。
同社は、日銀のマイナス金利政策の解除により政策金利がゼロ%になった場合、短期金利上昇要因で300億円、中長期金利上昇要因で120億円が資金利益にプラスになると試算しています。
直近3ヵ月の実績である10-12月期(3Q)の連結経常利益は前年同期比59.0%増の4874億円に拡大しました。
三井住友FGは、傘下にSMBC、SMBC日興証券など7つの主要なグループ会社を持っています。
2024年第3四半期累計の主要グループ会社別の純利益はこちらの表のとおりです。
三井住友FGの主要グループ会社別の純利益を見ると、SMBCが最大の貢献をしており、5,549億円の純利益を記録しています。
これに続いてSMFLが1,199億円で、大きな利益を記録しています。
SMFL(三井住友ファイナンス&リース株式会社)は、三井住友銀行グループに属しており、様々なファイナンスおよびリースサービスを提供している金融機関です。
三井住友FGは、SMFLの株式(自己株式を除く)の50%を保有しています。
他のグループ会社では、SMBC日興が332億円、SMBCCFが249億円の純利益をそれぞれ生み出しています。
SMBCの大きな貢献により、グループ全体の純利益が大きくなっており、各会社がグループの収益に異なる程度で寄与していることがわかります。
また、三井住友FGは、リテール、ホールセール、グローバル、市場の4つの事業部門を持っています。
こちらが24年3月期第3四半期累計の事業部門別の業務純益です。
三井住友FGの部門別業務純益を見ると、グローバル部門が最も高い業務純益を記録しており、4,773億円に達しています。ホールセール部門も4,372億円で高い収益を上げており、市場部門は3,011億円の純益を達成しています。
一方、リテール部門は1,502億円と他の部門に比べて低い業務純益です。これらの数値は、特にグローバルとホールセール部門が三井住友FGの収益に大きく寄与していることを示しています。
貸出金残高
貸出金残高とは、三井住友FGが個人や他の機関に貸し出した金銭の総額です。
三井住友FGの貸出金残高は、2021年3月から2023年12月にかけて国内店で56.9兆円から62.7兆円へ、海外店では25兆円から34.9兆円へと増加しています。
特に海外店の貸出金残高の増加が顕著で、三井住友FGの貸出業務が国内外で拡大していることを示しています。
不良債権比率とは
不良債権比率は、銀行や金融機関が管理する債権の中で、回収が困難または不可能と見られる債権(不良債権)の割合を示す指標です。
不良債権比率が高い場合、債権の中で回収が困難な債権が多く、金融機関が高い信用リスクに直面していることを意味します。
一方、低い不良債権比率は、債権の中で回収が困難な債権が少なく、健全な信用ポートフォリオと効果的なリスク管理を行っていることを反映しています。
また、不良債権の残高は、金融機関の損失リスクを直接的に反映しており、経営の安定性に影響を与える重要な要素です。
三井住友FGの不良債権比率は、2021年3月の0.98%から2022年3月に1.08%に上昇した後、2023年には減少し、同年3月に0.80%、12月に0.81%となっています。
不良債権残高も同様に2022年に増加した後、2023年に減少しています。これは、三井住友FGが不良債権の管理において一定の成果を上げており、特に2023年にはその改善が顕著であることを示しています。
最新の損益計算書(PL)
損益計算書を見ると、企業がどれくらい売上を上げたのか、どれくらい費用をかけたのか、その結果どれだけ利益が残ったのかが把握できます。
まず、経常収益が約6.7兆円となっており、経常収益の約67%が資金運用収益約4.5兆円から成り立っています。
また、資金運用収益の59%が貸出金利息2.7兆円であり、これは銀行としての基本的な業務である貸出による収益が大きいことを示しています。
また、経常収益の約82%は、経常費用5.5兆円で、これは三井住友FGの通常の業務運営に関連する総費用です。
経常利益とは?
経常利益は、本業における利益だけでなく、企業の持つ株の運用利益など、事業を行って得た利益です。
経常利益は、売上高と営業外収益を足した値から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費、営業外費用を除くと求めることができます。
経常利益の推移
三井住友FGの経常利益と前年同期比の成長率を分析すると、2023年は大半の四半期で成長が見られましたが、2023年第4四半期と2024年第2四半期には減少しました。
しかし、2024年第3四半期には前年同期比で59.0%の大幅な成長を達成しました。
経常利益率とは?
経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示したものです。
この割合が高いほど、本業以外の収益や費用を含めた会社全体の収益力が強いと判断できます。
経常利益率
2023年第4四半期から2024年第2四半期の利益率は、前年同期の利益率を下回っていますが、2024年第3四半期では、利益率が前年同期の20.95%から22.07%に改善しています。
個人的な所感
三井住友フィナンシャルグループの最新の財務状況を詳細に分析した結果、いくつかの重要なポイントが浮かび上がってきます。
まず、予想PERの推移を見ると、市場は同社に対して肯定的な見方をしており、将来の利益成長に期待を寄せているようです。
これは、経済環境の変化や競合他社との比較においても、同社が安定した経営を続けているという信頼の表れと考えられます。
一方で、PBRが1倍未満であることは、市場が三井住友FGの資産価値を現在の株価で十分に評価していないことを示唆しています。
これは、我々投資家にとっては潜在的な投資機会を意味するかもしれませんが、市場が見落としているリスク要因が存在する可能性もあります。
年間配当の増加と配当利回りの低下は、株価の上昇を反映していると考えられますが、投資家にとっての魅力はやや減少しているかもしれません。
最新の決算における経常利益の増加は特筆すべき点です。これは、同社が効率的な運営と強力な収益源を持っていることの証明であり、今後の成長の礎となるでしょう。
特に、グローバル部門の業務純益が高いことは、国際市場における同社の強みを示しており、今後の国際的な展開に大きな期待が持てます。
しかし、不良債権比率の推移や地政学的リスクなど、一定の懸念点も存在します。これらの要因は、今後の業績に影響を及ぼす可能性があり、継続的な監視が必要です。
総じて、三井住友FGは堅実な経営を続けており、投資家にとっては魅力的な投資対象の一つと言えるでしょう。
ただし、投資は常にリスクを伴いますので、実際の投資にあたっては、より総合的な判断を行うことが重要です。