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Q4決算発表、人気米国株、TSLA 最新の決算&財務諸表を解説 2024年1月

人気米国株、TSLA

今回は、人気の米国株で、2024年1月24日に決算を発表したTSLA(テスラ)の最新の決算と財務諸表を分析します。

テスラはアメリカの電気自動車(EV)とエネルギー貯蔵システムの製造メーカーです。
同社はModel YなどのEVを製造し、太陽光パネルとエネルギー生産・貯蔵システムの設計、開発、製造などを行っています。

また、テスラは、自動運転技術の開発にも注力しています。

基本情報は、こちらの表のとおりです。

この記事を読めば、テスラの株を買うにあたって、最低限知っておくべきテスラの業績や財務状況を把握することができます。

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株価のパフォーマンス

テスラの株価のパフォーマンスは、こちらの表のとおりです。

テスラの株価トレンドは、短期的には高いボラティリティが見られますが、長期的には顕著な成長を示しています。

短期間では下落があるものの、年間のパフォーマンスはプラス成長を示し、特に過去5年間と全期間では非常に高い成長率を記録しています。

過去5年間の株価のチャートは、こちらのとおりです。株価は、2021年11月頃に414ドルを記録した後に下落し、現在は2021年5月頃の株価と同じ水準となっていることが確認できます。

最新の決算

テスラは、2024年1月24日に2023年第4四半期決算を発表しています。

EPSと売上高のアナリスト予想とその結果については、こちらの表のとおりです。

2023年第4四半期のEPSと売上高については、その両方がアナリスト予想を下回る結果となりました。

通期の売上高については、前期比18.8%増の967億ドルとなりました。営業利益は前期比34.9%減の88億9100万ドルとなり、営業利益率は16.8%から9.2%へ低下しました。

特に自動車収益の伸びが鈍化しており、これは昨年の下半期に世界中で販売する自動車価格の大幅な価格引き下げを行い、平均販売価格が下がったことが一因と言われています。

同社は、テキサス州での「次世代自動車」の発売に向けて取り組んでいるため、2024年の自動車販売台数の伸びは昨年の伸び率よりも「著しく低くなる可能性がある」と述べています。

また、1株利益(EPS・希薄化後)については、4.30ドル(前期3.62ドル)となりました。

テスラは、自動車部門、エネルギー生成・貯蔵部門、サービスその他部門という3つの事業部門を持っています。

2023年通期の部門別の売上高はこちらの表のとおりです。

このデータから、テスラの売上の約85%が自動車部門からのものであることが分かります。

エネルギー生成・貯蔵部門およびサービスその他部門も売上に貢献していますが、自動車部門に比べるとその規模は小規模です。

全体の売上高は約968億ドルに上ります。

2023年通期の部門別の売上高と前年同期比の成長率はこちらの表のとおりです。

これらのデータから、テスラの各部門は健全な成長を遂げており、特にエネルギー生成・貯蔵部門の成長率が目立っています。

また、自動車部門も安定した成長を続けていることが分かります。

最新の損益計算書(PL)

損益計算書を見ると、企業がどれくらい売上を上げたのか、どれくらい費用をかけたのか、その結果どれだけ利益が残ったのかが把握できます。

まず、2023年第4四半期の売上高は約252億ドルに達しており、これはテスラが極めて大規模な売上を達成していることを示しています。

他方、商品のコストである売上原価も約207億ドルと大きく、これは売上高の約82%を占めています。

また、営業利益は約21億ドルとなっており、これは売上高の約8%を占めています。

テスラの損益計算書を見ると、特に法人所得税の面で興味深い状況が見て取れます。通常、法人所得税は会社の利益に対して課される税金ですが、テスラの場合、法人所得税からの利益が約58億ドルと営業利益約21億ドルを上回っています。

これは、テスラが税額控除や政府からの補助金などの特別な税制上の利点を享受していることを示しています。

なお、前期は、約2億ドルの法人所得税の支払いが発生しており、これらは一時的な収入であることが分かります。

最新の貸借対照表(BS)

貸借対照表を見ると、企業がどのような資産、負債、および純資産を、どれくらい持っているかなど、企業の財務状態が分かります。

テスラの貸借対照表から読み取れる主要な点は、同社が強固な資産基盤を持っていることです。

特に注目すべきは、「Cash, cash equivalents and investments(現金、現金同等物、および投資)」の項目で、約291億ドルとなっており、これは流動資産全体、約496億ドルの約59%を占めています。

この高い比率は、テスラが非常に健全な流動性を保有しており、短期的な負債や投資機会に迅速に対応できる能力を持っていることを示しています。

また、テスラの総資産に占める流動資産の割合は約47%です。

さらに、固定資産の大きな部分は、約297億ドルの「Property, plant and equipment(不動産、工場および設備)」であり、これはテスラの総資産約1066億ドルの約28%を占めています。

この数字は、テスラがその長期的な事業運営と成長に必要な物理的資産に重要な投資をしていることを示しており、製造業としてのその基盤の強さを反映しています。

また、流動負債が約287億ドルであり、負債全体の約67%を占めています。これは、テスラの負債の大部分が短期負債で構成されていることを示しており、短期的な資金管理が事業継続のために重要であることが分かります。

一方で、純資産合計が約626億ドルとなっており、総資産の約59%を占めていることは、テスラの全資産のうち、約半分以上が純資産であることを示しており、純資産の額が負債の総額を上回っています。

営業利益とは?

営業利益は、企業が本業で稼いだ利益です。

営業利益は売上高から、販売した商品の原価である売上原価と、販売のためのコストである販管費を除くと求めることができます。

営業利益の推移

2021年第1四半期から2022年第4四半期までは、順調に営業利益が成長していたことが確認できます。

しかし、2023年第1四半期からは営業利益の成長率がマイナスに転じ、同年第4四半期には-47.1%の減少を記録しました。

営業利益率とは?

営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合を示したものです。

この割合が高いほど、企業の本業の稼ぐ力が強いと判断できます。

営業利益率

テスラの営業利益率は、2022年から2023年にかけて前年同期比で一貫して減少しています。

2022年の各四半期に比べ、2023年の同じ四半期の利益率が低下しており、これはテスラの収益性が減少していることを示しています。

特に、2022年第1四半期の19.21%から2023年第1四半期には11.42%に低下するなど、収益性の顕著な減退が見られます。

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「利益」は意見、「キャッシュ」は現実

損益計算書(PL)に記載される売上高などの「利益」は、本来であれば来期に立つ売上を、今期の売上として計上することや架空の売上を立てることで、意図的に「利益」を過大に見せること、いわゆる粉飾が可能であり、明らかな粉飾でない限り、このような粉飾を見抜くことは難しいと言われています。

他方、キャッシュフロー計算書(CF)に記載される営業キャッシュフローなどの「キャッシュ」は、実際にどれだけの現金が出入りしたのかを表し、意図的な調整をする余地がありません。

そのため、会計の世界では、『「利益」は意見、「キャッシュ」は現実』、または『キャッシュフローは嘘をつかない』とされています。

また、損益計算書では黒字にも関わらず、倒産してしまう「黒字倒産」の原因は、売上が発生しても、その入金、現金収入が大幅に遅れ、企業が現金不足に陥ることで起こるとされています。

そのため、企業の「利益」だけでなく、企業の「キャッシュ」を確認することが重要です。

営業キャッシュフローマージンとは?

営業キャッシュフローマージンは、売上高に占める営業キャッシュフローの割合を示したものです。

営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

この割合が高いほど、企業が売上から多くの現金収入を得ていることを意味し、現金を稼ぐ能力が高いと判断できます。

営業キャッシュフローマージン

テスラの営業キャッシュフローマージンは、2023年に入って前年同期比で全体的に低下しています。

2022年第1四半期と第3四半期の高いマージンに比べ、2023年には顕著な低下が見られます。

他方、2023年第4四半期は、前年同期の13.48%から改善し、17.36%に増加しています。この数値は、企業の現金生成能力の回復を示唆しています。

アクルアールとは?

アクルアールは、企業が現金収入を伴った質の高い利益をあげているかを判断する指標です。

アクルアールは純利益から営業キャッシュフローを引いた値で計算されます。

アクルアール=純利益(特別損益を除く)ー営業キャッシュフロー

純利益は、全ての収入から全ての支出を除いた利益であり、いわゆる会計上の利益です。

他方、営業キャッシュフローは、企業の営業活動で得られた現金収入です。

例えばA社のように、アクルアールがマイナスの場合、企業が多くの現金を営業活動から生み出し、現金収入が会計上の利益を上回っていることを意味します。これはA社が現金収入を伴う質の高い利益を生み出していることを示します。

逆に、B社のようにアクルアールがプラスの場合は、現金収入が会計上の利益を下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出している状況を示しています。

アクルアール

2022年第4四半期には約4.1億ドルのプラスでしたが、2023年第1四半期にはゼロ、第2四半期には約-3.6億ドルのマイナスに転じ、第3四半期にはさらに-約15億ドルのマイナスになりました。

しかし、2023年第4四半期には約36億ドルの大幅なプラスに転じています。

これは、テスラの営業活動による現金収入が会計上の利益を大きく下回り、現金収入を伴わない質の低い利益を生み出していることが分かります。

自己株式調整済み負債比率とは?

自己株式調整済み負債比率は、企業の抱える純資産(自己株式を除く)に対して、負債がどれだけの割合を占めているのかを表す指標です。

自己株式調整済み負債比率は、以下の式で求めることができます。
自己株式調整済み負債比率=負債÷(純資産ー自己株式)

純資産は自社株買いによって比較的容易に増やすことが可能であるため、その影響を排除するために純資産から自己株式を除いています。

この比率が低ければ、純資産に対して負債が少なく、財務が健全であると見なされます。

「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」によると、自己株式調整済み負債比率が0.80を下回ることが望ましいとアメリカの著名な投資家である、ウォーレン・バフェットは言います。

自己株式調整済み負債比率

テスラの自己株式調整済み負債比率は2022年第4四半期の0.80から2023年第4四半期にかけて徐々に低下し、0.68まで改善しています。

この低下は、テスラの財務健全性が向上していることを示し、ウォーレン・バフェットが望ましいとする0.80の基準を下回っています。

固定長期適合率とは?

固定長期適合率は、企業の固定資産が、純資産と固定負債といった安定した資金で賄えているかどうかを示す指標です。

固定長期適合率は、以下の式で求めることができます。
固定長期適合率=固定資産÷(純資産+固定負債)

一般的に、この比率が100%以下であると、企業の固定資産が安定した資金でまかなえており、会社の財務状況が安定していると判断できます。

固定長期適合率

テスラの固定長期適合率は2022年第4四半期から2023年第4四半期にかけて一貫して100%以下で、主に72%から75%の範囲にあります。

これは、固定資産が安定した資金源で賄われ、企業の財務状態が安定していることを示しています。

総合評価

テスラの成長性については、同社が2024年の自動車販売台数の伸びは昨年の伸び率よりも「著しく低くなる可能性がある」と述べていること、テスラの直近8四半期における営業利益の平均成長率は約75%であることから、5点中2.5点とします。

効率性については、直近4四半期、全ての営業利益率が前年同期の利益率を下回ったことから、5点中1点とします。

現金の生成能力については、直近4四半期のうち、1四半期の営業キャッシュフローマージンが前年同期のマージンを上回ったことや、過去5期間のうち、2期間のアクルアールがマイナスとなっていることから、5点中2.25点とします。

財務の安定性については、直近の自己株式調整済み負債比率が0.68であることや、直近の固定長期適合率が73.43%であることから、5点中4点としています。

割安性については、PERの推移が、こちらの表のとおりであり、最新のPERが全ての期間の平均値を下回っていることや、直近のPERが44.4倍であり、比較的高いことから、5点中3点とします。

従って、2024年1月29日時点の総合評価としては、25点中12.75点、Bランクとしました。

テスラの評価について、成長性は2.5点となっており、これは企業がある程度の成長を遂げているものの、業界平均と比べると突出した成長は見られないことを示しています。

効率性に関しては1点と低く評価されており、これは運営の効率性や収益性に関して改善の余地があることを示しています。

現金の生成能力は2.25点で、これはテスラが一定の現金を生成しているものの、より強い現金収入の流れが望まれる状況を示しています。

財務の安定性は比較的高い4点で評価されており、企業の財務基盤が安定していることを示唆しています。

最後に、割安性については3点と評価されており、株価がその実質価値に対して適切に評価されているか、やや高い評価を受けていることを示しています。

なお、この評価は、あくまでも簡易的に評価したものであり、実際の投資判断にあたっては、より総合的な評価を行うことをお勧めします。

また、配当利回りなどの要素は考慮していないことにご留意ください。

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