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商船三井が描く"異常な好決算"の真相:「喜望峰回航」で収益3倍、地政学リスクが変えた世界の物流

企業概要

商船三井 (9104)

創業1884年。2024年9月末時点で244隻の船舶を運航する総合海運会社。

ドライバルク船、エネルギー輸送船、製品輸送船など多様な船種で事業を展開。

近年は脱炭素化に向けた環境事業やオフショア事業も強化。

時価総額:約1.3兆円(2024年10月時点)

ONE (オーシャンネットワークエクスプレス)

2017年に日本の海運3社(商船三井、日本郵船、川崎汽船)のコンテナ船事業を統合して設立。

世界有数のコンテナ船社。商船三井の持分:31%

【用語解説】

・TEU:Twenty-foot Equivalent Unit(20フィートコンテナ換算個数)

・消席率:船舶の積載可能容量に対する実際の貨物量の比率

・EBITDA:利払い・税引き・償却前利益。事業の収益力を示す指標

・スポット運賃:その時々の市況で決まる運賃(長期契約と対照的)

・FPSO:浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備

・IMO規制:国際海事機関による環境規制

・トンマイル:貨物輸送量(トン)と輸送距離(マイル)の積

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日本マリタイムバンク

業績サマリー(前年同期比)

・売上高:9,006億円 (+14.0%)

・経常利益:2,490億円 (+61.2%)

・純利益:2,466億円 (+63.6%)

事業別の状況:

1. ドライバルク事業

- ケープサイズ市況:西豪州・ブラジルの鉄鉱石出荷、西アフリカのボーキサイト出荷が底堅く推移

- パナマックス市況:南米からの穀物出荷最盛期が7月に終わり、船腹需給緩和により下落

- スープラマックス以下の市況:ミネラル、木材製品、鋼材等の荷動きが堅調

2. エネルギー事業

- タンカー:長期契約の利益貢献に加え、地政学情勢によるトンマイル伸長で高水準

- FPSO事業:三井海洋開発の持分法適用化に伴う持分法投資利益を計上

- LNG船:長期貸船契約と新造船竣工により安定利益を積上げ

- ケミカル船:Fairfield Chemical Carriers社の株式取得も利益に貢献

3. 製品輸送事業

- 自動車船:中東での滞船や荒天影響による遅延があるも、輸送需要は堅調

- 物流事業:航空・海上貨物輸送の仕入運賃高騰により計画を下回る

ONE

・売上高:10,075億円 (+37.7%)

・EBITDA:3,603億円 (+198.8%)

・純利益:2,778億円 (+297.0%)

運航指標:

- 北米往航消席率100%(前年同期89%)

- 欧州往航消席率98%(前年同期93%)

- 総取扱量:6,433K TEU(前年同期比+9%)

- 運賃指数:北米向け167、欧州向け248(2018年度1Q=100)

市場環境の構造変化

輸送環境の変化

- パナマ運河:水位回復により通航はほぼ平常化

- 紅海/スエズ運河:地政学的情勢不安定により喜望峰ルート利用継続

- 各地で港湾混雑が継続(天候不順、ストライキ、内陸鉄道輸送の混雑等)

- 米国東海岸・ガルフ港湾ストライキ懸念で一部貨物が西岸港にシフト

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今後の見通しと重要課題

市場環境見通し

1. 荷動き

- 北米向け:米国内の消費が依然として旺盛

- 欧州向け:インフレ緩和で個人消費持ち直すも、9月以降は鈍化傾向

- 中国:経済減速による輸入減の影響を注視

2. 船腹需給

- 2024年度下期は大規模な新造コンテナ船竣工が継続

- 年明け以降の需給バランスは現時点で予測困難

- 地政学リスクによる航路変更の影響継続

3. 運賃動向

- スポット運賃市況は新造船の大量竣工を背景にピークアウト

- 年度末にかけてコロナ前の水準への調整を想定

各社の対応戦略

商船三井:

1. 収益基盤強化

- 長期契約の着実な積み上げ

- 事業ポートフォリオの多角化推進

- 環境関連事業の拡大

2. オペレーション効率化

- 機動的な配船調整

- コンテナフローの最適化

- 港湾混雑への柔軟な対応

3. 株主還元強化

- 中間配当:180円(前年比+80円)

- 期末配当予想:120円(前回予想から+20円)

- 自己株式取得:上限1,000億円を決議

ONE:

1. 運航体制

- 需要に応じた臨時船投入

- 寄港地・サービスの機動的な見直し

- 空コンテナの効率的配置

2. リスク対応

- 紅海/アデン湾情勢への機動的対応

- 米国東海岸・ガルフ港湾問題への対処

- 空コンテナ不足への対応強化

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通期業績見通し

商船三井

・売上高:17,900億円

・経常利益:3,650億円(前回予想から+150億円)

・純利益:3,500億円(前回予想から+150億円)

ONE

・通期純利益:3,095百万米ドル(前回予想から+350百万米ドル)

総合評価

商船三井 (9104): ★★★★★

<評価理由>

・長期契約比率上昇による収益安定化

・環境事業など新規分野への戦略的投資進展

・株主還元の大幅強化

・事業ポートフォリオの分散化

・三井海洋開発の持分法適用化など戦略的施策の実行

ONE: ★★★★

<評価理由>

・需給逼迫を活かした収益力の発揮

・効率的な船隊運営の実現

・堅調な貨物需要の取り込み

・運賃上昇の効果を最大化

(今後の需給緩和への対応が課題)

【リスク要因】

・中国経済の減速影響

・地政学的リスクの長期化

・新造船竣工による需給悪化

・環境規制対応コストの増加

2024年度第2四半期 商船三井の決算を読み解く:「純利益2,466億円」は一過性か構造変化か、海運最大手が語る真相

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